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【実例】GROWの次は現場検証モデル(前編)

 こんにちは!だいじゅです。昨日プロコーチ養成スクールの授業の様子をLive中継しました。※ビデオはこちらからどうぞ↓

とても面白い内容でしたので、まとめたものをnoteでも紹介しておきます。

『環境』と『習慣』の呪縛

 僕はコーチングの基本モデルであるGROWモデルの世界観は素晴らしいと思っています。現状にとらわれずに自由にゴールを描き、その「理想の未来」の視点から現在を眺めてみるわけです。バックキャスティングと言いますね。

 そうやって現在にどんなリソースがあるかを明らかにしたら、あとは理想の未来にダイレクトにつながる行動によってガンガン未来を変えていく。これがうまくいくと短い時間のなかで効率的に人生が変わっていきます。

 たったこれだけのことですが、世界中で多くの人の人生を変えてきましたし、たくさんのビジネスを成長させてきたわけです。

 だからそれでうまくいくならやればいいんですけど、もちろん、うまくいかない場合もあるのです。その1つが「わかっちゃいるけどやめられない」現象です!

 コーチングを受けて、ゴールも描けた!次のアクションもわかっている!!だけど、家に帰ると(会社に戻ると)

 ・気持ちが下がる
 ・やっぱり難しいなと思ってしまう
 ・結局同じ行動を繰り返してる

 だから状況が変わらない。。。なんでなの?

 答えは

 僕らが『環境』と『習慣』の呪縛に縛られる生き物だからです。

 同じ環境や人間関係の中にいると同じ反応をしてしまう。長年続けている行動を無意識で続けてしまうし、そのことに気づいてもいない。それが私たちなのです。

 私たちは同じ環境にいると自動運転で動き続けてしまう生き物なので、結局これまでと同じ動きをして、同じ結末に辿り着きがちなのです。

 そんなわけで、コーチングでゴールを思い描いたり、アクションを考えても、その通りには動けないで、「なんで家に帰ると、気持ちがもとにもどちゃうんだろう」「気がついたら、いつもと同じことしてた」「やっぱり自分には無理なのかな」ってなってしまうことがあるのです。

システムの綻びを探す

 でも安心してください。人生は変わります。私たちは自動運転をとめて、手動運転に切り替えることで、いつもと違う動きをすることもできます。あたらしい運転法を確立して、それを自動運転プログラムにすることもできるのです。

 環境はあなたに影響を与えますし、あなたの無意識はこれまでやってきたことを繰り返そうとしますが、それでもそれは完璧なシステムではありません。システムの綻びをついて、いつものルートから離脱することができるのです。

 僕たちが「現場検証」と読んでいるプロセスは、簡単なワークシートに記入していくだけで、いまあなたがどんな風に自動運転をしているのか、そのメカニズムを明らかにしてくれます。

 そしてあなたの自動運転プログラムの中には、変えにくい部分もあれば、変えやすい部分もあるのです。その変えやすい部分に変化を加える(そこだけ手動運転に切り替える)ことで、あなたはいつものループから離脱することができるのです。

実家から帰るときに揉める

 クライアントをしてくれた恵子さん。ありがとう。とても興味深く楽しいセッションでした。

テーマ
 独居の母の介護のために週に1回実家を訪問しているが、帰り際に母に帰らないでとすがられて、罪悪感や嫌悪感を感じることを繰り返している

母との関係

 では、現場検証モデル(アドレリアンカウンセリング)という形式で、このテーマをコーチングしてみます

CO具体的にどんなことが起こっているか聞きたいんだけど
CL 先週の出来事なんですけど、水曜日に実家に泊まったんですが、翌日の木曜昼に「そろそろ帰ろるね」というと母が「もっといてよ」と言い始めて、いつものことだし、説明してもわかってもらえないので、私もイラッとしてしまい、また嫌な気持ちで帰りました。
COなるほど!嫌な気持ちで帰宅した。ちなみに、帰るねと言ってから何分間くらいの出来事ですか?
CL30分
COわかりました。ではその30分間に何が起こっているか、一つずつみていきましょうね

 現場検証と呼ばれているように、1つの具体的な出来事の現場にいって、何が起こっているのかを丁寧に検証するようなプロセスです。

 なので、似たようなことが毎回起こっているとは思うのですが、そこから1つの事例を選んで、そのときを扱っていくのです。

COでは、何をきっかけに30分で帰るからねと言ったのかしら。何かを見たとか、聞いたとかが引き金になっていると思うんだけど(五感)
CL時計を見ました。バスの時間の30分前だったので
COなるほど、時計を見て、どう思いました?(思考)
CLそろそろ「帰る」と言わないとな。。。でも言いづらい。。。
COそっか。その時どんな気持ち、感情になりましたか?(感情)
CL うーん。物悲しい。。。悲しいというか。。物悲しい
COなんだかちょっと寂しい感じ
CL そうです
COで、あなたはどんな行動をしました(行動)
CLあと30分で帰るからね、と言いました
CO 物悲しい雰囲気で?
CL まぁ、そうですね

 さぁ、現場検証のスタートです。
 
 見たもの聞いたこと(五感刺激)→感情や思考(内的反応)→行動(外的反応)

 の順番で確認していますね。ざっくり言うと、どんな刺激に対してどんな反応をしているかを調べているのです。

自動運転 = 刺激  → 反応
       五感情報→感情や思考→行動

自動運転

 こうやって自動運転の様子を調べていくわけです

 そして下のような表に書き込んでいきます。今は①行目の情報を収集できました。そしてその次に何が起こったかをヒアリングして②行目を埋めていくわけです

恵子さんのケース

 続きを見てみましょう。

COそんな風に「あと30分で帰るからね」というと、おかあさんはどんな反応をしましたか(五感)
CL。。捨てられる子どもみたいに悲しそうに「えー、もっといてよ」と言いました
COそっか「もっといてよ」と言ったんですね。おかあさんの姿勢とか表情は?
CL俯き加減でした
COなるほど。それで捨てられる子どもみたいと思った、と(思考)
CLそうです。
COそのときどんな感情になりましたか?(感情)
CL悲しくなりました。
CO悲しくなって、どんなことを思いました(思考)
CLせっかくきてるのに、またこんなこと言われるんだ、と思いました
COなるほど!で、あなたはどうしました?(行動)
CLだって昨日から来てるじゃない!(少し大きな声で)
COあはは。ちょっと大きな声になったんですか?
CLそうですね(笑)ちょっと語気が強くなった

 これで②行目の情報収集ができましたね。

 刺激反応が連鎖しているのがわかりますか?

刺激→恵子さんの反応=母への刺激→母の反応=刺激→恵子さんの反応

刺激反応の連鎖

 恵子さんの最初の反応「あと30分で帰るからね」がお母さんへの刺激となって「えーもっといてよ」という反応をつくります。そしてそれが恵子さんへの刺激となり、悲しくなったり、「また言われるんだ」と思ったり、「だって昨日からきてるじゃない!」と反論させたりという反応を生み出しているのです。

 このようにしてヒアリングを進めて、エピソード(出来事)の終わりまでどんな風に刺激と反応が連鎖していくかを調べていくのです。

 ちなみにこの後の展開は

 「だって昨日から来てるじゃない」という恵子さんに対して、お母さんは「そうだったかしら?」と本当に物事が分からなくなったような表情で反応します。それに対して恵子さんは戸惑います。また忘れたふりをするのか!と思ったり、それとも本当にわかってないの?などと考えて、ムカっとしたり困惑したりするのです。

 そして「だから!!時間なの私も忙しいのよ!!」と先ほどよりも語気を強めて返してしまいます。お母さんは何を思うのか、椅子から立ち上がり、無言で家の中をウロウロし始めます。恵子さんはお母さんが立ち上がったことで「もうこれで帰ろう」と思い、少しホッとします。手早く帰り支度をして「かえるよ」と伝えます。

 お母さんは「そうなの〜」と玄関に出てきます。名残惜しそうな様子です。それをみて恵子さんはモヤモヤしたり、悲しい気持ちになります。「また来週来るから見送らなくてもいいのに」とか「お母さん、話し相手もいなくて可哀想。。。」とか思ってしまうのです。そして、玄関を出てからも、お互いの姿が見えなくなるまで、手を振り続けながら帰るのでした。

再掲

 ぜひ、ビデオで実際のコーチングのシーンを見てもらいたいのですが、コーチは陽気にキビキビと情報収集をしています。見方によっては結構ふざけているようにも見えるかもしれません。

 これはクライアントにあまり落ち込んだり、自分を責めたりせずに、ただ事実を語って欲しいからです。これは無意識が行なっている自動運転にすぎませんし、まずはそれがどんなものかをスピーディーに明らかにしていきたいのです。

 また、どうやって、クライアントの情報を整理しているかも参考になると思います。ビデオは全体で90分ありますので、長すぎる方は、解説は飛ばしてもらってセッションの様子だけでも見てみてください。

 さて、コーチングのプロセスとしてはここまでで半分以上終わっています。あとは、どこをどう変えたらいいかを一緒に考えていくプロセスに入っていきます。

 とはいえこの段階でコーチには、もうどこを変えたら良さそうかのアイディアがたくさん湧いてきています。

 最初に変えられると良いのは、①行目の「もの悲しさ」です。恵子さんが物悲しさを感じながら「そろそろ帰るね」と言うので、お母さんだって寂しくなるのではないでしょうか。ではどうしたら「物悲しい気分」にならずに済むのでしょう?そして「そろそろ帰るね」の代わりにどんなセリフで伝えたら、スムーズにことが進むのでしょう。クライアントにとって言いやすいセリフはどんなものでしょうか。

 次回の記事で続きの部分を紹介します。お楽しみに!!

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