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コーチングが簡単になるフレームワーク②

コーチングに過去の話は不要か?

1つ前の記事で見たようにGROWもWOOPも過去の話は扱わないんですよね。とてもコーチングらしいなと思います。

アドラー心理学でも

「これからどこに行きたいか」と「いまどこにいるか」は大切だが、「どうやってここまで来たか」は扱わなくても良い

と考えます。

良い意味で過去はどうでも良いんですよね。

いつでも人は新しい選択をすることが出来るのだから、望む未来に向けて、いまここで新しい選択すれば良い。

その限りにおいて過去は関係ないんです。

コーチングやカウンセリングで、気をつけた方が良いのは、

クライアントは時に経緯を語りたがるってことです。

経緯=ここまでに何があったか

本当はコーチングには必要ないんです。経緯。

でもクライアントは経緯を語りたがる。コーチに分かってもらうためには必要だと思ってるのかな。で、コーチがそこを聴きすぎると、延々経緯やら背景が語られることになったりします。

正直もったいないです。だからクライアントが話すのを最低限聴くのは構わないと思いますが、コーチからもっと話してもらうような関わりは、何か特別な理由がない限りはしなくて良いと思います。

なんなら現在の問題(だとクライアントが思ってること)も語ってもらわなくても良いくらいです。大切なのは「未来どうなっていたいか」であり、「そのために何が出来るか」ですから。

だってね、こう考えてみてください。

昔の自分が「問題だ」と思い込んでいたことが、現在の自分から見たら何の問題でもないとか良くあることです

20年ちょっと前、コーチングに出会う前の僕は「中小企業診断士試験の勉強時間が思ったより取れない」「このままでは合格できない」とか悩んでました

だけど今の僕からしたら、ほんとそんなの何も問題でないし、むしろ受験をやめた方が楽に自分の人生生きられるよ!

って思うわけですよ。

だからね

今の自分が悩んでる問題も、未来の自分から見たら何も問題ない可能性があるわけです。

なので、問題だと思うものはいったん傍に置いて、未来の自分を想像してみる。そして望む未来に向かって動いてみるってのがオススメなわけです。

理想の未来から見ても、やっぱり問題なら、理想の状態に進むような形で解決すればいいのです。

コーチングで過去を扱う場合

とは言え、コーチングで過去を扱う場合もいくつかあります。簡単なものを紹介しましょう

過去を扱う場合①◆自分の好き/幸せに気づく
過去の楽しかった出来事を思い出すとクライアントは、自分はどんなことが好きなのか理解を深めることができます。

クライアントが、自分は何が好きなのか、何を良いと思っているのかを理解していない。そのような場合はいったん過去のエピソードの棚卸しをして、自分はどんな人間で、何をしているときに楽しいのか、幸せなのか、に気づくことができます

過去を扱う場合②◆うまくいくやり方に気づく
何があると自分はいい状態になれるのか?何があると自分はうまくやれるのか?
自分が良い状態になる条件をクライアントが知らない場合は、過去に自分がうまくやれたエピソードを思い出すことで、自分のスイッチが入る条件を知ることができます

過去を扱う場合③◆現場で何が起こっているのか理解する
僕たちは現場検証と呼んだりしていますが、問題の出来事を検証するつもりで様々な角度から見てみると、新しい見え方に気づくことがあります

ちょっと専門的な内容になりますがこれなどは現場検証で変化が起こったケースです

隣家の女性から連日クレームを入れられていた男性が、クールに対応していた裏にあった本当の気持ちに気づいたり、相手の状況に気づいたりして、二人の関係性が変わっていったケースです。

他に簡単なケースだと、こんなものはどうでしょう。

CL「転職したいので相談したいです」
CO「何があったからそう思ったの?」(背景)
CL「今の職場で馴染めなくて」
CO「どういうこと」(確認の質問 具体化)
CL「上司とコミュニケーションが取りづらくて」
CO「なるほど。他にもある?」(確認の質問 網羅)
CL「いや。。。それくらいかな。仕事はきらいじゃないし。。。」
CO「じゃあコミュニケーションが取れるようになったら?」
CL「もしそれが可能なら今のところで良いのですけど。。。」

ちょっと極端ですが、こういったケースを想定してみると、

クライアントの「転職したい」を真に受けて、転職に向けてゴール設定をするので、本当に良いのかと疑問が生じますね。

だから問題の現場を検証してみることで、コーチングのテーマが変わってしまうこともあるのです。

コーチングで過去を扱うことのメリットは他にもあるのですが、まずは簡単なものを3つ見てみました。

さて、いよいよ、これらの過去も扱えるコーチングフレームのご紹介です。


目線切り替えMAPの8エリア


目線切り替えMAP

上の8マスのフレームワークが目線切り替えMAPです。ぼくが開発したものですが、とても多くのコーチが使ってくれていて、何冊かのコーチング本でも紹介されています。

ざっと説明すると、上が未来で、下が過去です。

過去から見ていくと

過去−というエリアと過去+というエリアに分かれています。

過去−は、過去の問題エピソードを検討するエリアです。上で説明した現場検証などに使います。

過去+は、過去の楽しかったことから自分の好きに気づいたり、過去うまくやれたことから自分のうまくやれるパターンに気づいたりできるエリアです。これまでのリソース探しのエリアですね

現在は、今この瞬間。未来に向かっていまから何ができるのか、考える場所です。

未来−は、このまま行ったらどうなるかを予測したり、最悪の未来をイメージするためのエリアです。

望ましい未来をなかなか描けないクライアントの場合には「このまま行ったら1年後どうなってそう?」などと、未来−をイメージしてもらってから「そうでなくて、どうなったらいいの?」と未来+(望ましい未来)に移行していくこともできます

WOOPモデルのObstacle(障害)を考えるためにも使えますし、以下のケースのような使い方もできます

未来+はコーチングでいうゴールですね。GROWモデルのGoalや、WOOPモデルのOutcomeのイメージです。

未来++は制約から自由なビジョンを描くエリアです。

実はクライアントに「ゴールは何?」「目標は何?」と質問しても、基本的には現在の延長線上で考えているのです。制約から抜け出すことは、なかなか難しいのです。だから簡易的にはゴールを2段階で設定してみてほしいのです。WOOPモデルでいうWishとOutcomeですね。未来++はWishエリアです。

ここはコンフォートゾーンの外側のエリアでもあります。普段は考えていないような世界。

この本の288ページから紹介されている。脊椎損傷の患者さんが夢を描くケースがあります。ここで語られる夢「孫のことをこの手で抱きしめたい」などは未来++ですね。医学的な常識では、首から下が動かない状態なので、制約の外側の世界、コンフォートゾーンの外側の世界なわけです。このケースを読んでない人は、驚きの結末にぜひ触れてください

そして目線切り替えMAPの左側には俯瞰というエリアがついています。

俯瞰は文字通り、それまでのコーチング全体を俯瞰するエリアです。ここまでの流れを振り返ったり、これから何を話すのがよいか検討するのに使います。

そして右側にはIFというエリアがあります。これはちょっと難しいのですが、文字通り「もし〜だったら」を検討するためのエリアです。

一番簡単なのは、モデリングに使ってみることです。モデリングとは他人から学んでみることです。以下のような質問をしてみればよいのです。

もしあなたが◯◯さんだったら、何をゴールにしますか?
もしあなたが◯◯さんだったら、どんなリソースを活用しますか?
もしあなたが◯◯さんだったら、どんな行動をしますか?

◯◯には、クライアントの憧れの人や、ハイパフォーマーの人を入れてみると良いでしょう。

他にIFの使い方としては、

もしあなたが何でもできるとしたら
もしみんなが協力してくれるとしたら

などの前提で考えてもらうと、制約を外した未来を描けたり、普段とは違う行動が出てくる可能性が高まります。GROWでいうところのGやOの質が上がるのです


目線切り替えMAPの使い方

自由に使ってください!この順番で使えとか、この質問をしろなどとは言いません(笑)

コーチングが目指すもの
・クライアントの状態が良くなること
・望ましい未来の方向性が見えること
・取ってみたい行動が見つかること

なわけです。それが起こるならなんでも良しです。

相手の関心に関心を向けよとアドラー心理学では言います。

だから、相手が「このままだと不安です」などと未来−に関心を向けていたら、そこから話をきいてあげて、「そうなる代わりにどうなったらいい?(未来+)」さらに「その先で本当に望んでいることは?(未来++)」

などと展開させてみてもいいですね。

相手の関心からスタートして、コーチングが目指すものが得られるように展開させていくのです。

先ほどの例の続きだと

「では、まずは何を目指すのが良さそう?(未来+)」「気持ちよく取り組めていたときはいつ?そのときはなにが良かった?(過去+)」などから「何から始めると良さそう?(現在)」などと展開させてもいいし、

WOOPモデルの障害対策のように

「改めて、避けたい未来は何?(未来−)」「そのためにできることは何?(現在 障害対策)」とかも良いかも知れません。

ぜひセルフコーチングや、練習相手とのコーチングで、いろいろな実験をしてみてください。

そうすることで相手の状況やテーマに応じた臨機応変なコーチングが身につくと思います。

頭の中に目線切り替えMAPを置いてセッションしてもいいですし、見ながらセッションしても良いのです。

僕のクラスでは、床にテープを貼って、そのエリア内を移動しながらコーチングする練習をしています。このMAPが脳に刻み込まれますし、移動することでクライアントの気持ちも変化しやすいなどメリットも多いです。

また、相手の話を聴いているときも、「いまは未来+の話だな」「過去−に移った!」「これは未来++から」とか、どのエリアの話をしているか聴き分けるのも、基礎練習としておすすめです。

次回は、具体的なケースを使って、このMAPを使ったコーチング法の理解を深めてもらいます。

面白い使い方を紹介しますのでお楽しみに

続く

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