お茶会に不向きな人
私の職場は適当だ。
退職者にお金をいくら渡すかは規定で決まっていなく
その都度退職者が出たら話し合って決める。
決まっているのは、色紙に利用者と同僚でメッセージを書いて最終勤務日お別れ会の時に渡すことくらいだ。
また、その時に利用者が個人で用意したプレゼントや手紙を渡したい人は渡す。
前の職場は退職者に職場・保護者会・自治会(利用者)がいくら渡すか、いくらの花束を渡すかは決まっていたので気が楽だった。
最終勤務日何時に渡すかも決まっていたし、渡した後に写真撮影をするのも恒例だった。
私はリーダーにお世話になっていたので
個人的に何かプレゼントと手紙を渡したかった。
といってもリーダーは物欲がなく、食べ物の好き嫌いも多く、渡すものは限られていた。
リーダーはきっと何かをもらいたくはないだろうが
最後なので私も多少やりたいようにさせていただく。
話し合いの末、渡す金額が決まり
色紙にちょっとずつメッセージを書き出した。
リーダーに見つからないように書くのは難しく
リーダーがいない隙に書いていても、リーダーは全面に気を配っている人なので
ふとした弾みで見られてしまい、「俺、あっちに行っていますね。」と気を遣わせた。
新施設長と前施設長から、リーダー最終勤務日はお茶会をしようと提案された。
通常は何か退職者とレクレーションをやるのだが、その日は誕生会なので、リーダーを中心とした催しでは誕生者がかすんでしまう。
早めに誕生会を終わりにして、その後お茶会をしながら、リーダーと利用者で最後の思い出を作ろうと言われた。
ある日、私とリーダーと新施設長が部屋にいた。
新「真咲さん、リーダーの耳は聞こえていないと思って話しましょう。お茶会の件です。」
私「リーダー、聞こえないフリしてくださいね?」
リーダー「………。」
私「大丈夫みたいです。はい、お茶会の件。」
新「真咲さんがお茶会のお菓子類を用意して司会進行でいいですか?」
私「!?あれ、施設長らが司会進行して用意かと。」
新「真咲さんが誕生会を司会した流れで進行でいいんじゃないですか?」
私「いやいや、私は誕生会で手一杯でして。大事なお茶会ですし、施設長にお任せでいいですか?」
新「前施設長がやりたいでしょうし、任せましょう。ではリーダー、好きなお菓子はなんですか?」
私「(リーダーに直接聞き出したー!!)」
リーダーは言った。
お菓子類は基本食べないし、あれは嫌い、あれも食べないと言い
最終的に「出されたものはまぁ無理して食べますよ。」と言い出した。
なんとお茶会に不向きな方なのか。
リーダーが帰った後、私は新施設長と「…お茶会のお菓子準備、難しいですね。」と言い合った。
正直、新施設長メインのお茶会なら容易い。
新施設長は甘党で好きなお菓子がいくつもある。
私が準備するプレゼントも、気に入ってもらえるかは極めて謎というか、本気の自己満かもしれない。
だがいいのだ。
リーダーだって分かっている。
最後はみんな何かをやりたがるものだ。
退職者はそれを受け取るものだ。
プレゼントなんて所詮は自己満だ。
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