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来年度の予定

毎年3月に来年度の業務分担を決める。
書類作成だったり、行事の担当だったり、毎月の業務を誰がやるかを決める。
30項目分だ。

一人に偏り過ぎないように決める。

 
来年度はリーダーがいなくなり
同僚Aさんが人事異動により現場から離れる時間帯が増え
同僚Bさんはパートから正職員に変わる。

リーダーの変わりの人は決まっていない。

 
 
「みんな心にゆとりがないし、新しい人も決まっていないし、来年度は業務は継続がよいのではないでしょうか?」

数日前に新施設長に個人的に言ったが
それについて考えてくれたらしい。


業務は誰かに負担がいきすぎないよう
例年は大抵の業務が一年交替なのだが
今回は例年と同じ業務を継続してやることが多かった。

 
私は例年の担当業務に加え
行事分担がグッと増えた。

リーダーがやっていた分だ。

「誰かに偏り過ぎないように平等に。」なんて言いながら
結局は私の仕事がグッと増える結果になった。

 
だけど仕方ないのだ。
新しい人が決まらない以上、私が踏ん張るしかない。
AさんもBさんも新しく覚えることだらけで不安だろうし、負担も大きい。

AさんもBさんも私より先に働き出した先輩だけど
来年度からは転職して四年目の私が
なんやかんやで現場正職員としては一番の先輩となってしまったのだから。

 
私は物作りは苦手だ。
だけど、行事や書類作成は嫌いではない。
そっちの負担が増える分には悪くない。
 
やるしかない。

 
今朝、研修に行くように話があった。
内容的にはリーダーが行くような内容だが
リーダーがいなくなる以上は私がその役割を担うしかない。

やってやる。

 
 
帰り道はリーダーと一緒だった。
リーダーの最終勤務日が迫っている。
二人で帰るのは今日が最後かもしれない。

 
リーダーは言った。
今までで辞めた人の中で一番長く務めている人は自分だった、と。

 
だからこそ、みんな不安なんだ。
リーダーが、現場で一番施設を把握している人で一番動ける人だから。

前施設長やパートさんはリーダーより長く務めているけれど
前施設長は産休で一年以上抜けたし、今は時短勤務だし
パートさんは毎日は来てはいない。

 
今残っている人で一番施設を分かっている人はリーダーだった。

 
 
私は前の職場で退職の件を、利用者にはギリギリまで言わなかったと言った。
その関係で相談員さんら関係者にも別れを言えなかった。どこからも情報をもらしたくなかった。

別れたくなかった。
別れを受け入れていなかった。
まだ働きたかったから言いたくなかった。

  
 
リーダーはその話を聞きながら
俺は逆だな、と言った。

利用者には別れの準備期間を与えたい、と。

前もって利用者には退職を伝えて
さよならの手紙を書くなりプレゼントを書くなり悔いが残らないように過ごさせてあげたい、と。
そうすると、退職後もみんな案外サラッとしている、と。

 
確かに今の職場はみんな、別れの時は泣くけど淡泊だ。切り替えが早い。
というより、私から言わせてもらえば普段から関係性がドライだ。利用者も職員も。

 
確かに今の職場ならば、別れの準備期間がある方がいいのだろう。
実際私は、リーダーの退職を知った日よりも今の方が落ち着いている。

 
 
ただ、前の職場は利用者と職員の関係は密だった。もっと近くて、親しみ深かった。

私の時だけではなく、職員が退職する時はみんなおいおい泣いて悲しい寂しい時間だった。
そんな姿をみんな見てきたから、職員は別れをギリギリまで利用者に告げなかったり、最終勤務日後に利用者に伝える人も多かった。

施設のカラーの差とも言える。

 
リーダーは知らない。
私はあの職場のあの別れがあったから、この職場を選んだ。
別れがあの時よりはマシであろうここを選んだ。

天職ではない仕事。
職員とも利用者とも仲はいいが、公私混同しない程度の仲。
それは転職活動中に求めていたものだ。

手放す時に傷つきすぎない道を選んだ。

 
 
まさかリーダーが先にいなくなるとは思わなかった。

リーダーは知らないだろうが
いなくなるのは私が先だとずっと思っていた。

 
 
独身のまま40歳になろうとしている私は
リーダーの退職を機に毎日考えている。

今後の生き方を。自分がどうしたいかを。

 
来年度の業務を頑張ろうとしている自分に嘘はないけれど
この生き方や働き方でいいのかと自分に問い続けている今にも嘘はない。

 
「ずっと夢は心の中にあって、タイミングをうかがっていた。」

以前リーダーにこう言われた時
私は内心、同じだよ、と思った。

私も結局はタイミングをうかがっている。
前の職場で退職届を出してからもなお、私は揺れ続けている。

 
今の職場は転職者が集まっている。
以前は一年経たずに退職する人が多かったという。

それは今の職場が、「このままでいいのか?」と考えさせる職場だからかもしれない。
みんながみんな、言わないだけで「タイミングをうかがっている」のかもしれない。

私だけではないかもしれない。
私より先にいいタイミングがきて辞める人がいるのかもしれない。

 
 
端から見たら今日の私はやる気に満ちあふれていて頼もしかったかもしれない。
来年度にやりたいことが溢れているように見えただろう。

退職を発表する前のリーダーだってそうだった。
退職するようになんて見えないくらい
来年度の話を積極的にしていた。

 
人の心なんて誰にも分からない。

 
 
このままどこまで走れるかな。


 
 






 













  

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