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私の手を味見する

待てない利用者がいる。
自宅でも多分そうなのだろう。

 
コロナ対策で各部屋で昼食を食べていた頃
お昼の時間に食べることができず
用意されたお昼を勝手に食べることが相次いだ。

 
早く食べ終わると、時間を持て余し、今から食べる人達の周りをうろうろした。

マスクをつけずにうろうろし、構ってほしくて周りに絡み、周りとトラブルになることがよくあった。

 
移転を機に食事は同じ部屋でみんなで食べることになった。
コロナが落ち着きつつあるのもある。

 
待てないその利用者は何度も早く食べたがったが
みんなで食べることを何度も伝えた。
環境が変わる今こそチャンスだ。

 
そんな中、私が隣で食べる予定だった日
いつものように空腹と戦っていた。

 
待つように伝えると
私の手を箸でつまもうとし
私の手をむしゃむしゃ甘噛みした。

「私の手は食べ物じゃなーい!」

予想外の反応だ。
それからもお昼の時間まで
何度も私の手を噛もうとした。
味見か。

 
空腹に耐える工夫をする意欲は素晴らしいが
私の手は食べないでほしい。

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