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私と骨折⑨【半日出勤を一週間】

一ヶ月ぶりに仕事復帰して三日目。

骨折前は平気で一万歩歩けていたが
どうにも千歩くらい歩くと疲れがくる。

 
ほのかな痛みもある。
痛む箇所は時間や日によって異なるが
特に今は骨折した方の足の足首が痛みやすい。

 
数日前から歩くごとにポキッポキッと骨折箇所が鳴るようになった。
少し引っ張られるような、こすれるような感覚もある。

 
職場の看護師さんに相談すると、骨折により足を動かさなかったことで周りの筋力なども衰えた影響だろうという。
そう心配しなくていいらしい。

看護師さんも昔骨折したらしい。骨折仲間を見つけると嬉しくなる。

 
復帰した週は半日出勤になったが
それにしてももどかしい。

 
電話や呼び鈴が鳴ってもパッパッと動けない。
利用者が危うい動きになっても止められないし、追いつけない。

 
本当に今の私はたくさんの人に助けてもらわないとどうしようもない。

 
ある利用者の隣に座った。

しばらくするとその利用者がひょいと立ち上がり
私の左足太股に座った。

 
私以上に周りの職員が慌てて、急いで止めた。
そう、その左足は私の骨折した側の足だった。

私は痛みはなかった。
座っている状態や平らな場所ならば、ある程度重いものが持てるようになっていたから。

 
「治るまで座っちゃダメだよ。」

職員がその利用者に言うと
うんうん、と頷いていた。

 
骨折前はたまにこうして私の太股に急に座り、甘えていた。
それがたまらなくかわいかった。

久々に出勤したから甘えたくなったのだろう。
まだ本調子ではなくてごめんね。

 
新施設長が言う。

「来週の販売は行けそうですか?」

「二週間後の納品は真咲さんが行くでしょうし、今回の納品に同行して打ち合わせしますか?」

来週の私、さ来週の私が分からない。
私は今より歩けているのだろうか。

 
いっそ、販売に来てと、納品に同行してと言ってほしい。

 
職員一人での販売を躊躇った発言や同行を遠慮した発言は正しかったのか
私はウダウダと悩んでしまう。

 
販売に行くなら、納品に行くなら
大量の荷物を運ばなければならない。
私が名乗り出ると、一緒に行く人に負担がかかる、もしくは私に負担がかかる。

そう考えて発言したのは正しかったか分からない。

 
誠意を見せて挑戦するだけした方がよかったのだろうか。
いやでも、転職先は意見を言った方が好まれるアメリカ的な価値観だから、無理なら無理で言った方がいい気がする。

そんな自問自答だ。

 
逆に前施設長は私の姿を見るや否や、「松葉杖を使わなくて大丈夫?私、杖車に乗っているから持ってくるよ。」と連呼された。

「松葉杖なら車に乗っているから大丈夫です(※自宅や職場は松葉杖を使わずに過ごし、たくさん歩く場合は松葉杖使用)。」と答えた。

 
前施設長と新施設長で真逆なのが面白かった。

 
つまり、骨折とはこういうことなのだ。

見た目では分かりにくい。
歩き方でしか分からない。

 
新施設長は癒着したらすぐ足は治ると思っているのかもしれない。
私が今、一歩歩くごとに足が痛いとか、一日を終える時にあちこち痛いとかは伝わらないのかもしれない。

 
逆に前施設長は足が不調な体験をしているから
見た目では分からないけれど足が不調だとどんなに大変か
よく分かっているのかもしれない。

 
人は経験しないと、あくまで想像でしか推しはかれない。

寄り添うことはできても
理解は難しいのかもしれない。

 
一週間、半日出勤をした。

毎日仕事後に歩いた。
それなら一日仕事をしてもいいかもしれないが
利用者が不穏時に足をやられそうになったし
うちの職場は一万歩歩けて安全運転ができないなら仕事がろくにない。足手まといなのだ。

 
包帯が外れて二週間が経った。

半日出勤の一週間、私は平均三千歩歩けるようになった。
最大で四千歩だ。

 
二週間後に県外に行く予定がある。

あと二週間で一万歩歩けるようになるだろうか。
階段を今よりすたすた歩けるようになるだろうか。

 
 
とりあえず、一週間お疲れ様、自分。

戦いはまだ続く。

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