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残飯を食べた後に感じたこと

午後の作業中
利用者Aさんが席を立った。
いつものことだ。

Aさんはしょっちゅうトイレに行く。
トイレがマメというのもあれば
集中力がもたないのもある。

だからその日も特に気にかけていなかったのだが
キッチンで残食をあさっていると他の同僚に聞き
私は新施設長らに報告した。

前の職場や今の職場で残飯をあさる利用者はいるが
Aさんがそんなことをするのは初めてだった。

だが確かに
今日はやたらとお腹が鳴っていた。
食後なのに鳴っていた。

量が少なかったのかもしれない。
もしくは、調子が悪かったのかもしれない。

 
私はリーダーに連絡帳に書いた方がいいかを尋ねた。
すると
「お腹を壊しちゃうかもしれないし、自宅でも様子を見てもらえるように書いた方がいいですね。」
と言われた。

なるほど、と思い
私はその通りにした。

 
それから一時間後

「あの件は連絡帳に書いたんですか?」

と、新施設長に尋ねられた。
だから書いたと言った。

 
「ありのまま書いたら親御さん、ショック受けませんか?」

「残飯を食べられる位置に置いたのは施設側の落ち度ですし。」

 
そう言われたので私は
連絡帳を確認して手直ししてくださいと言った。
新施設長は連絡帳を見たが
訂正はしなかった。

その日は新施設長がAさん送りだから
保護者に対し、“私にはできなかった”正しい対応をするのだろう。

 
私は内心モヤモヤした。
これだから私は
リーダーを頼ってしまうのだと思った。

 
 
夕方、リーダーが全体に
明日から残飯はこんな風にしよう、と
具体的に提案してくれた。

リーダーの言い方や提案ならば、特に不満に思わなかった。
むしろ、さすがだなぁと思った。

 

 
帰り道
同僚が新施設長の別件に対する対応について不満をもらし
それに便乗して他の同僚も
更に別の件について不満を言い出した。

私はそれにホッとして
今日言われたことを話した。

 
「施設の落ち度って言われたら何も言えなくない?」

「Aさんの保護者は隠されるより、言ってもらえた方がスッキリするタイプだけど。」

私はそう言われて
心が軽くなった。

 
よかった。
不満に思っているのは
私だけじゃなかったんだ。よかった。

 
 
その日は寒かったけど
帰り道、車の前で気持ちを伝え合えて 
私は嬉しかった。

 
ねぇ、新施設長。
あなたはいつだって正しいよ。
ただ
正しさだけでは信頼関係を築けない。

心に寄り添ったり、共感してくれないと
ほうれんそうがしにくくなるばかりだよ。

今日だって私、「言わなきゃよかった。」「そこにいなきゃよかった。」って言われて思ってしまったもの。

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