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30分の優しさ

最近、多動の某利用者と二人で作業や活動をすることが多い。

指示を出すのはリーダーだ。
私はリーダーに命じられて
それに従う。

 
大抵はその多動で不穏になりやすく、トラブルメーカーな利用者を私が引きつける役目で
個室でその人と二人で過ごすか
外出してその人と二人で過ごす。

トラブルが起きないように
他者と遠ざける。

それが私の役目で、仕事だ。

 
私は福祉歴12年以上だが
なかなかに大変だ。

 
多動な上、好奇心旺盛で物欲やこだわりが強く
思い通りにならないと、他害が非常に多い。

ギャアギャア泣くし、喚くしで
周りから見たら私が苛めているように見えるだろう。

 
途方に暮れることも多い。

 
 
その日も出発から大変だった。

「行きたくない!嫌だ!」

と、ワァワァし
無理矢理車に乗せてもワァワァし
店内でもワァワァし
私は確かに苛立ちを感じた。

 
周りの視線が痛い。
私は利用者に促してばかりだし
周りには謝ってばかりいた。

 
ようやく施設に戻ってもホッと息つく暇もなく
私はその利用者を個室で見ているように言われて
正直疲れた。

 
なんで私ばかり。

そう思ってしまう。

 
リーダーは多分無意識だろうし
仕事が偏ったら言うように言っているし
さすがにもう言ってもいいんじゃないかと密かに思う。

だけど言えない。

 
そんな中、新人さんが別の仕事で私たちの個室に入ってきた。

「真咲さん、最近その人の支援ばかりで大変ですよね。私、見ていますよ。」

 
女神に見えた。
気づいてもらえて嬉しかった。

 
ほんの30分見てもらえただけでも
私はだいぶ気が楽になった。
その30分、他の利用者とも関われて
嬉しかった。

 
気持ちを切り替えて、午後の仕事に挑めた。

 
 
新人さんがいてよかった、と思う。

新人さんはよく気が利いてよく動く。
こうしてよく、私の大変さに気づいて手伝ってくれた。ありがたかった。

私は私で
彼女が年下で一番下っ端でパートだからこそ
言いやすく、頼みやすいことは多々ある。

 
先輩方やリーダー、施設長には言いにくいこともある。
遠慮するなと言われても、だ。

 
新人さんとは施設のやり方やなんかで
気持ちや苦労を分かち合えることも多かった。

 
分かってくれる人がいる。

それだけで
あぁそれだけで
こんなにも、楽なんて。

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