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止まった時計/松本麗華

当時、松本麗華さんが後輩として私が通って大学に入学すると知った時、私はマスコミから入ってくる情報を信じ、正直あまりいい気持ちはしなかった。
この平和で穏やかな学生生活が事件に巻き込まれたらどうしようかと心配だった。
でも、同じ授業を受けたという後輩がこう言っていた。

 
「話してみたら別に普通でしたよ。教団に関わっているっていうのもマスコミが伝えているだけみたいですよ。」

その後輩を信じていた私は、素直にその言葉を信じた。
私はマスコミを信じ過ぎていたのかもしれないなと思った。

 
本屋でこの本を見かけた時にすぐに購入を決意したのは、そのような経緯が関係している。
いざ読んでみると、衝撃的な内容の数々で、想像以上に読み終わるまでに時間がかかってしまった。
とても深い内容だった。

 
世間的には大犯罪を犯した父親でも、娘にとっては優しい尊敬できる父親で
世間的にはカルト集団であったオウム真理教は
当時の彼女にとっては世界そのものだったことが痛いくらいに伝わってきた。

 
その日常が崩れて、大切な人達が次々と逮捕され、様々なものが日に日に失われ…

もしも私が彼女の立場だったらとてもじゃないけど耐えられないと思った。

 
私が信じていたアーチャリーは、マスコミや周りの大人が作った偶像でしかなくて
松本麗華さんはただの一人の女性だった。

 
もしもこの話が本当なら、正義やその類いの名の下に非道い大人はたくさんいて
例え辛い思いをしようとも尽くし優しく接してくれる大人もたくさんいる。

何が真実で何が正しくて何が答えかなんて、容易く分かりはしないけど
今を生きることが容易くないことはとてもよく伝わった。

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