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うるう年のあの日

4年ぶりの2月29日。うるう年。

4年前のあの日は、忘れもしない前の職場の最終勤務日だった。

 
人生でもTOP10に入るくらい大きな出来事だった。
間違いなく、30代で一番の試練が、長年務めた職場を不本意な形で立ち去ることになったことだ。

 
転職先も次にどうしたいのかも何も決まらないまま
未練たらたらで泣いて泣いて泣いたあの日。

あの日から、四年。

 
 
四年、か。

仕事に行く時にふと思った。
あれから四年の月日が流れた。

 
あの日の私は
四年後の同じ日に別の福祉施設で働いているなんて思わなかった。

 
 
あの日の私は
四年後の私を知らない。

 
朝、施設長から優しくされた。 

今日は給食がカレーでおいしかった。

利用者と初めての作業を苦労しながら頑張った。なんとか形になった。納品に間に合った。

利用者がかわいくて、抱きついてきてあたたかかった。
たくさん笑った。たくさん話した。一緒に歌ったり、踊ったりした。

送迎で保護者と談笑した。

行事の打ち合わせをした。新商品の話でも盛り上がった。

帰り道、同僚と雑談をした。
「悩み事はためすぎないでいつでも話すんだよ。」と心配された。ありがたかった。
分かち合える仲間がいる。

 
相変わらず結婚はできていないし、恋愛は上手くいかないままだけど
家に帰れば両親がいて、一緒に過ごせる。

趣味はたくさんある。
好きなものはたくさんある。

 
この四年間で出会った中で一番好きで一番信頼している人とはもうすぐさよならになるけど
それでも笑える今日がある。

 
 
いい一日だった。
心からそう言える今日がある。

 
 
「四年ぶりのうるう年だね。前のうるう年の時、何をしていたか覚えてる?」

私は利用者に聞いてみた。
みんな覚えていなかった。
覚えていないということはきっと悪い日ではなかったのだろう。

 
「明日から3月だね。」

利用者が言う。
明日も利用者と過ごせる。なんて素敵なのだろう。

四年前の私は3月になってほしくなかった。
もうみんなと会えなくなるから。

 
四年もあれば、出会いと別れがある。 
途切れない繋がりもある。

今を大切にしていきたい。
 
次のうるう年、私はどこで誰と何をしているだろう。
笑って過ごせていたらいいな。






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