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私とバセドウ病①【円形脱毛症】

「円形脱毛あるよ!」

その日、お風呂上がりでくつろぐ私に
母が頭上から大声を出した。

 
それはなるべくなら一生聞きたくない衝撃的な言葉だった。

「嘘!?まさか!?」

動揺した私にくつろぎは奪われた。
急いで頭部をチェックし、写真を撮るようにスマホを渡した。

パシャッ。

写すされた写真には
確かに認めざるを得ない剥き出しの皮膚があった。
毛が生えていない部位だ。

 
落胆する私に「一円玉の真ん中の円くらいのサイズだよ、そんなに大きくないよ。」と母が慰めた。

 
写真では十円玉ハゲにしか見えないが
この際母にすがりたい。

一円玉ハゲかぁ……

私は落胆した。
サイフから一円玉を取り出しては
このくらいのハゲがあるのかと落胆した。

 
スマホで調べると、円形脱毛症は皮膚科が管轄らしい。
私はちょうど三日後に別件で行く予定だった為
その時についでに見てもらおうと思った。

 
通院の前日、どうせ一円玉ハゲがなくなるわけがないのに
私は一縷の望みをかけて
「明日通院するから、もう一度頭を見てくれない?」と頼んだ。

 
すると母は「あ!もう一つある!」と絶望的な一言を私に浴びせた。
私は狼狽えながら再びスマホを渡した。

パシャッ。

確かにそこには先日とは違う位置にハゲがあった。
こちらの方が大きい気がする。

 
「こっちは一円玉くらいね。ともか、ストレス何かあるの?」

と、母には当然ストレスを疑われた。

 
私は否定した。

むしろ最近が今まで生きてきた中で一番安定しているとさえ思っていたのだ。

 
私はスマホで「円形脱毛症 女性 30代」と検索をかけた。
思ったよりもたくさんの写真が引っ掛かり
私よりもひどそうな人が約一年で治りりつつあることを書いていた。

そういう記事やブログを読んでは
私だけじゃない、と希望をもらった。
いつか治る、と。

 
皮膚科に受診した際、今かかっている皮膚の状態がよくなっていることや
鼻声から花粉症の話になり
私は内心ソワソワした。

私は二円ハゲの行方が気になっているのだ。
もはや肌荒れも花粉症も最優先ではない。

 
私は話が一区切りついたところで
すかさず二円ハゲの話を切り出した。

 
先生は驚いて私の頭をガサガサした。
すると

「あ、これだね。あ、こっちにも。」

と、絶望の奥の話を始めた。
なんと私の頭部には一円玉ハゲが五つもあるという。

 
五円ハゲ………。

私は絶句した後、ニヤニヤした。
もはや笑えてきた。

 
先生の話によると、どれもできたてだと言う。
やはりまずストレスについて聞かれ、答えると
次に甲状腺やアレルギーが原因かもしれないと言われた。

 
甲状腺!

よく聞いたことがあるけれど
いまいちよくわからなかった。

 
血液検査についての話になった。
私は貧血症だからちょうど前日に血液検査をしたが
結果は一週間かかる上、甲状腺の検査はしていないだろうという話になった。

 
かかりつけの内科の検査結果を見てからまた通院するか
今から血液検査をするか問われ
私は今からお願いします、と答えた。

 
どうせ前日の血液検査は甲状腺について検査していないだろうし
それならば今した方がいいだろう。
二度手間になるし、私は早めに原因を知りたかった。

 
こうして私は二日間連続で血液検査をする羽目になってしまった。

 
皮膚科でもらった頭部に塗る薬は二種類で
一日二回らしい。

 
私は帰宅後、早速母に塗ってもらう。
こういうことがあると
私は結婚したくなる。

 
両親亡き後
こうして頭部や背中に薬を塗らなければならない時に
誰を頼ればいいというのだろうか。

 
血液検査結果は一週間かかるらしいが
数値に異常がある場合は病院から電話がかかるという。

 
病院から電話が鳴るまで私は動けないし
電話が鳴らないなら
しばらくはもらった薬を塗るしかない。

 
先生の話によると
円形脱毛が一箇所ならば自然治癒するらしいし
頭部の毛が半分以下になったら注射ができるらしいが
私の場合
とりあえず原因が分かるまで様子見だという。

 
まぁ結果を待つしかない。

 
私は言われた通り
その日は夜も薬を塗り
次の日も朝、薬を塗ってもらった。

 
 
次の日
私は仕事に行き、利用者の送迎に行った。
晴れ渡る空。きれいな梅が至る所に咲いている。

 
朝から爽やかな気分になる。

 
利用者を送迎車に乗せたところで
病院からの電話が鳴った。

 
一週間かかる予定の結果が
次の日に電話が鳴る。

 
もう電話をとる前から
話の内容は分かっていた。

甲状腺の数値が異常だという。

だからおそらく私の五円ハゲは甲状腺の影響なのだ。

 
私は送迎後、新施設長に事情を話し
早退することになった。

事務長からは「病院まで、気をつけて行ってきてね。」と優しく言われた。

 

その皮膚科では甲状腺の治療はできないので
他の病院に行かなければいけないらしい。
その病院には私はまだ行ったことがなかった。

 
私はまず皮膚科に行き、検査結果の書かれた紙をもらった。

確かに平均値に比べるとどれも異常でしかなかった。

一刻も早く病院に行くしかない。

 
その病院は大きく、室内には人がたくさんいた。
一時間は待つだろう。
ハァ、とため息を吐きながら私はnoteにこうして書くことにした。

 
予想通り一時間近く待たされた私は
ようやく名前を呼ばれ
診察室に入った。

そこで私は驚くべきことを言われたのだ。

 
「なんでこの病院に来たの?」

「?皮膚科でこの病院を言われたので…」

  
 
「ここは甲状腺の専門病院じゃないよ。」

 
ガーン、とした。
じゃあわざわざここに来て
待った時間は無駄だったのか。

 
「まぁ甲状腺機能亢進症で間違いないでしょうね。」

初めて聞いた名称だった。

 
「大学病院に紹介状出しときますから。」

再び、ガーンとなった。
大学病院にかかるレベルなのか。

 
「ちなみに大学病院って午後はやってます?」

「初診は午前のみだよ。月~金。」

三度目のガーンだ。
土日祝日にやっていないということは
私はまた近々有給をとらなければいけないのか。

 
紹介状をもらえたのだから無駄ではなかっただろうが
約2000円払い、ガクッとした。

 
ここに来ないで一気に大学病院に行けばよかった。
同僚がそう言っていたのに
私は病院の方を信じてしまった。バカだ。

 
大学病院に電話をしたら予約不可と言われたので
私は後日、大学病院に行こうと思った。

 

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