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カケラ/湊かなえ

私は湊かなえさんの文章が好きで
新刊が出ると、毎回タイトルや背表紙のあらすじを確認している。

 
私は文庫が好きなので
文庫化を待って本を買うことが多い。

この本もそんな一冊だった。

 
あらすじはこう書かれている。

美容外科医の橘久乃は幼馴染みの志保から「痩せたい」という相談を受ける。
カウンセリング中に出てきたのは、太っていた同級生・横網八重子の思い出と、その娘の有羽が自殺したという情報だった。

少女の死をめぐり、食い違う人びとの証言と、見え隠れする自己正当化の声。
有羽を追いつめたものは果たしていったいー。

周囲の目と自意識によって作られる評価の恐ろしさを描くミステリー長編。

湊かなえさんらしく、今回の作品は各章違う登場人物からの目線、発言が描かれ
それによってストーリーは進む。
 
 
主人公の久乃さんは完全に聞き手で、発言や考えはプロローグとエピローグ以外では本人からは発せられない。

 
各章で登場人物達が久乃さんの表情を読み取ったり、発言に答える形で
久乃さんと登場人物の会話や関わりが読み取れる。

 
この作品には、とても美しい久乃さんと、肥満体型の登場人物何人かが登場する。 

ルッキズムを取り扱った作品といってもいい。

 
プロローグ~第一章は
個人的には読むのがやや時間がかかったが
第三章から一気に読むスピードが加速した。

三日間かけて読んだが
第三章からは毎日先を読むのがより楽しみになり
家だけでなく、移動時や外出先でも読んだ。

 
肥満体型の方は周りからからかわれたり、見下される場合がある。
ある、というより、体型について何かしら言われる回数は圧倒的に多いだろう。

 
子ども時代で培われた苦い経験は大人になっても影響は大きい。

容姿に恵まれているといって幸せとは決めつけられないが
「かわいい。」「きれい。」「かっこいい。」と言われる回数が多いかどうかは
性格形成を左右するだろう。
自信にも繋がる。

 
そんな中、138kgもありながら幸せに生きていた有羽やその自殺理由を知ると
なんとも切ないし、やるせない。

有羽がドーナツの中で自殺したのは
もうドーナツが食べられなくなったからかもしれない。

 
人にはそれぞれ正義があり
価値観によるものの見方や時間の流れにより
同じ場所にいて同じ時を過ごしても
記憶が食い違うことはあるだろう。

 
登場人物達の話は繋がってもいるし、かけ違うこともあり
読んでいると何が正しいかが分からなくなる。

主人公の久乃さんもだからこそ
有羽の自殺した理由や真実をハッキリさせようと
色々な人に話を聞くのだろう。

 
 
この物語には手作りドーナツがキーポイントとなっている。

ドーナツは大切な人を想う象徴のようだ。

私も今度ドーナツを食べるなら
口にする前に穴を覗いて想いを馳せるだろう。

 
作中、何回も何回も出てくる美味しそうな描写にヨダレが込み上げるのは
きっと私だけではないはずだ。

横網さんのドーナツが今すぐに食べたい。

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