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税理士の先生が知っておきたい雇用をめぐる最近の法律問題 #14 2024年問題とは?(2)

 働き方改革といった言葉で表された一連の労働法規制の改正が行われてから数年、雇用関係を巡っては続々と変化が現れてきています。
 この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、最近の雇用を巡る問題をご紹介していきたいと思います。
 今回は、前回に引き続き「2024年問題」について解説していきます。前回、2024年問題というのは、労働時間の上限規制に関連する問題です、ということをご紹介しました。今回はその規制の具体的中身をご紹介します。


1 労働時間に関する上限規制とは?

 労働基準法は労働者を保護する目的で制定されている法律ですが、以前は労働時間について直接規制する規程はありませんでした。原則として一日8時間、一週間に40時間労働させた場合には、割増賃金を支払うこととされ、この割増賃金の支払義務があることで間接的に長時間労働を抑止しようとしていたことになります。
 ただ、働き方改革に関する法改正の中で、労働時間数に関して、直接規制が加えられることになりました。具体的には、時間外労働は原則として年間720時間以内とされ、違反した場合には6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課されることになったのです。
 なお、自動車運転の業務に従事する労働者については、時間外労働の上限は960時間に緩和されています。

2 改正法の施行

 この改正法は、大企業については2019年4月から、中小企業についても2020年4月から適用されています。ただ、運送の業務に従事する人や建設の業務に従事する人などに関しては、今年の3月まで改正法の適用が猶予されていました。
 今回、いよいよ改正法が適用されることとなり、対応が迫られることになりました。ただ、昨今の人手不足の状況もあり、対応に苦慮しているケースも少なくありません。物流業界などは生活に直接影響する可能性もあるため、問題視されているところです。

3 月60時間を超える時間外労働の割増賃金も引き上げられています。

 前回と今回で2024年問題についてご紹介しましたが、残業代に関しては以前ご紹介したとおり、月60時間を超える時間外労働が発生した場合の割増賃金について、割増率が50%以上に引き上げられています。
 2月、3月は確定申告時期で多忙を極める時期かと思いますので、従業員の方の労働時間数も増えることが予想されます。法律に則った形できちんと計算されているか、ぜひあらためてご確認いただければと思います。

【執筆者プロフィール】
弁護士 高井 重憲(たかい しげのり)
ホライズンパートナーズ法律事務所
平成16年 弁護士登録。
『税理士のための会社法務マニュアル』『裁判員制度と企業対応』『知らなかったでは済まされない!税理士事務所の集客・営業活動をめぐる法的トラブルQ&A』(すべて第一法規) 等、数々の執筆・講演を行い精力的に活躍中。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2024年2月号より

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