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タワマンだけではない!すべてのマンション評価が改正―具体的事例を検証―

1.はじめに

「居住用の一室の区分所有財産」評価の改正について、前号で概要をお知らせしました。わかりづらい算式なので、今号では具体的な事例を基に評価額を計算してみます。
ここではタワーマンションではなく、都内の路線価170万円の道路に面した、築20年、地上12階建てのマンションを想定しました。専有部分の所在階は5階、敷地面積は全体が200㎡、持分で按分すると5㎡、専有床面積は23㎡とします。相続税評価額は敷地が760万円、建物が280万円、合計1,040万円です。

2.具体的計算

パブリック・コメントで公表された評価方法は下記の通りです。
(敷地利用権の価額)
 評価乖離率の計算
 ①築年数(1年未満は1年)×△0.033 (古い方が乖離が少ない)
  20年×△0.033=△0.66
 ②総階数指数(総階数÷33階 33階以上は1)×0.239 (高層の方が乖離が多い)
  {(12階÷33階)(小数点以下第4位切捨)×0.239}(小数点以下第4位切捨)=0.086
 ③専有部分の所在階×0.018 (上階の方が乖離が多い)
  5階×0.018=0.09
 ④敷地持分狭小度(敷地利用権の面積÷専有床面積)(敷地面積が大きいと乖離が少ない)
  {(5㎡÷23㎡)(小数点以下第4位切上)×△1.195}(小数点以下第4位切上)=△0.261
 ⑤評価乖離率 ①+②+③+④+3.220=2.475 
 評価水準 1を評価乖離率⑤で除した値
  1÷2.475=0.4040404…
 補正率 評価水準が0.6未満の場合 評価乖離率⑤×0.6
  2.475×0.6=1.485 … ⑥
 敷地利用権の価額 自用地としての価額に補正率を乗じる
  7,600,000円×1.485=11,286,000円 … ⑦
(区分所有権の価額)自用家屋としての価額(固定資産税評価額)に上記補正率を乗じる
  2,800,000円×1.485=4,158,000円 … ⑧
 (マンション全体の価額) ⑦+⑧=15,444,000円

具体的に計算すると、相続税評価額が10,400,000円だったマンションの評価額は令和6年から15,444,000円です。市場価格の60%水準だとすると、このマンションは25,740,000円で売却できるということになります。数字はデフォルメしていますが、実存するマンションをモデルにしており、2,500万円近くで売買が成立しているので、算式は妥当といえそうです。

3.今後の課題

1棟全部を所有しているケースについて改正がなかったからといって、通達評価通りで認められるわけではありません。今まで同様、通達6項が適用される可能性は残ります。また、築年数は古いけれど価値のあるヴィンテージマンションや、景観による制限があるため高層マンションの建築はできないが、高級感のある京都のマンションなど、改正後も適正な時価で評価する必要があります。

【執筆者プロフィール】
税理士 永井智子(ながい ともこ)
(社)ファルクラム租税法研究会研究員。
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント』シリーズ(共著/第一法規)ほか、論文・寄稿多数。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2023年10月号より

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