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必殺仕掛人

1972年のドラマ『必殺仕掛人』の一話をユーネクストで観ました。

原作・池波正太郎、脚本・池上金男、監督・深作欣二
主演・林与一、緒方拳、山村聡

江戸の町を舞台に、極悪人を成敗する殺し屋たちを描いた群像劇。
ドラマの中に描かれる江戸の町人たちの生活感も楽しみの一つです。

オーディブルで『仕掛人・藤枝梅安』を通しで最後まで聴いてしまい、ラストが未完の池波さんの絶筆であったことを知りました。
藤枝梅安が、どうなったのかを知りたくて、漫画版まで読みました。
しかし梅安ロスって、感じになり、このテレビドラマ版にたどりついたというわけです。

放送当時は中学生でした。
いろいろ面白いものが多すぎて、このドラマを熱心に観るような子供ではありませんでしたが、ときどきは観ていた記憶があります。
いまこうしてドラマを観ると、やはりキャラクターの造形が素晴らしいと感じます。
脚本、演出の力もありますが、俳優たちの人物造形と演技がいいですね。

このころのテレビドラマは、ビデオで撮影したせいで保存ができていないものも多いなか、このような映画会社が制作したものはフィルムで撮影されていて、保存できていたので、僕たちはむしろ当時よりもいい映像で観られるわけです。
残してくれたスタッフのみなさんにも感謝しかないです。

ウィキペディアによると、当時フジテレビの『木枯らし紋次郎』が大ヒットしていて、それに対抗して企画されたのが、この作品だったとのことです。
原作小説の『仕掛人・藤枝梅安』の連載も1972年からで、このドラマ版は短編の『殺しの掟』が元になっています。今でいうところのメディアミックス企画だったわけですね。

僕は池波さんの小説のファンで、小説でしか味わうことのできないものがしっかりとあるのが好きなのですが、このテレビドラマ版も、原作の面白さを見事に抽出しつつ、映像作品としてのスピーディな展開やアクションで引きつけられました。

一話の監督が、深作さんだったのにも驚かされました。さすが深作って感じで、切れがあります。
梅安役の緒方拳さんの演技には、ユーモアと気迫が混在していて素晴らしく、さまざまな俳優が梅安を演じていますが、僕にとっての梅安さんは、やはり緒方さんのイメージが強いです。

この仕掛人のシリーズは、大ヒットして後継作品群も産み出しました。
そういう意味では、この一話は一つの時代を作り出したといっても過言ではないでしょう。

悪人を抹殺するとはいえ、殺し屋稼業をしている者たちが主人公というのは、斬新だったと思います。
まぁ、時代劇はもともとチャンバラがメインなわけで、殺し合いがあるのは当然だったわけですけれど。

池波先生は、1990年に亡くなるまで、足かけ19年にもわたってこの梅安を描き続けたわけで、鬼平犯科帳などと共に、ライフワークともいうべきものだったのだなと思います。

それにしても池波正太郎先生の膨大な作品群には驚かされるばかりです。
小説だけでなく、舞台の脚本や演出などもなさっており、そのエネルギーはどれほど膨大だったのでしょう。
そんな池波さんのエネルギーが感じられる作品群を、いまこうして味わえることを幸せに思います。

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