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消えていく親友の記憶 卒業制作「Phantom」

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僕が制作した卒業制作について紹介します。

僕は卒業制作として、3年前に亡くなった親友の記憶をインスタレーションで表現しました。

まず、コンセプト文です。

3年前に親友を亡くした。私は卒業制作として消えていく親友の記憶をそのまま形にした。人間にとって記憶はとても脆く曖昧なもので、どんなに大切な記憶だとしてもいつかは触れられなくなってしまうのかもしれない。でも、それでいいと思った。私は消えていくこの記憶を愛そうと思う。

私は今から約3年前、大学1年生の冬に高校で出会って以来ずっと仲が良かった親友を亡くしました。彼女とはクラスや部活が一緒だったわけではないのですが、好きなアーティストが同じだったことから仲良くなり、ライブにいったり、遊びにいったり、大学が離れた後も、電話でお互いの悩みを話し合ったりする仲になりました。大学入学で広島から上京し、頼れる人が少なかった僕にとって彼女の存在はとても大きく、大切なものでした。そして、これからもずっと大切にしたいと思っていました。

僕が彼女の訃報を聞いたのは彼女が亡くなって1週間ほど経った時でした。

LINEの返信は、確かに1週間前で止まっていました。

お葬式に参列することができず、うまく彼女とお別れが出来なかったためか、僕はなかなか立ち直れず彼女のことを出来る限り思い出そうとしました。

しかし、ある種のショックか自己防衛だと思うのですが、彼女の顔、声、行った場所、交わした会話が全く思い出せない時期が約1ヶ月続きました。

とても、とても怖かったです。

親友の記憶が消えていくことに、こんなにも大切だった親友のことを忘れようとしている自分に恐怖を抱きました。

その後記憶は戻りましたが、時間が経つにつれて少しずつ後ろ姿や髪型、肌、声など細かい部分から徐々に記憶が薄らいでいきました。僕は親友が亡くなってから卒業制作に取り掛かるまで、ずっとこのことに苦しさを覚えていました。

そして、このままではいけないと思い「卒業制作を通して消えていく親友の記憶とどのように向き合うかを明らかにしたい」と思うようになり、この作品を作ることに決めました。

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僕が制作を通して出した答えは「消えていくことを恐れず、受け入れる」ということ。

記憶は消えていくかもしれないけど、一緒にライブに行ったこと、僕が彼女を大切に思っていたこと、心の頼りにしていたこと、そして彼女を想ってこの作品を作った事実は消えない。

それでいいのではないか?

そう思えるようになりました。

この作品に映る手は、こちらに何かを語りかけようとしているようにも見えるし、今まさにここから離れていっているようにも見えます。こちらがその手を掴もうと思えば掴めそうだけど、そこに実体は無い。悲しい事かもしれないけど、これが「記憶」であり、これこそが私たちの記憶を美しいものにしているのだと思います。

僕はこの、脆く、儚く、でもとびきりに美しい彼女の記憶を丸ごと愛したいと思うのです。






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