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お茶にはまる

 この前、たまたま「日本茶を美味しく淹れる動画」というのを見て、ちょっとやってみたくなって日本茶を買いに行った。
 自分は中学高校の頃から基本飲み物はコーヒーで、家で日本茶を淹れたことはほとんどない。知識もないので、とりあえずは近くのスーパーに売っているものを買おうと思い、お茶売り場に行くと、日本茶と、それとは別に抹茶が目についた。
 そういえば、自分は抹茶もほとんど飲んだことがない。これも一緒に試してみようと思い、その足でスーパーの食器を売っているコーナーに行き、適当な茶筅を買って帰った。


 まず普通に日本茶を淹れてみる。「おいしい淹れ方」も何も、80度くらいに冷ましてお湯を注ぎ、1分ほど待ってから淹れるというだけのことである。
 しかし、ありふれたスーパーのお茶でもこんな一手間だけで非常においしい。外で飲む水っぽいお茶とは全然違う。味がしっかりと濃いし、広がる旨味がすごい。
 また、急須にお湯を注ぐと葉がどんどん開いていく様子も、実に美しい。

 食後によし、作業しながらもよし、冷めてもよし、歯を磨いた後でもよしとまさに万能である。なぜに今まで日本茶のこの魅力に気づかなかったのか。
 なにしろ、これでいて、緑茶に関しては完全に身体にも環境にもいいことしかないのだ。
 こうなってくると、淹れる過程自体もむしろ楽しくなってくる。今まで面倒でしかなかった「お湯を沸かす」という一手間でさえ、何だか楽しみな待ち時間になるし、だんだん形から入りたくなって鉄瓶とか欲しくなってきてしまっている自分がいる。


 そして、抹茶である。
 これに関しては、「茶道」というものまであるわけなので、素人が手を出してうまくいくもんなのかとは思いつつ、YouTubeの動画を見ながら見よう見まねでやってみた。
 と言っても、お湯を80度くらいにして(できれば器を一度お湯で温めて)、茶筅でシャカシャカするだけである。茶筅の動かし方も、初めは少しコツがいるが、2〜3回もやっていればすぐに慣れる。
 そして淹れてみての一服。驚いた。うまい。めちゃめちゃうまい。
 そう、超初心者でも動画見るだけで充分それっぽくおいしい抹茶を点てることができるのである。なんで逆に今まで一度もやってみようと思わなかったのか不思議なくらいだ。なんならむしろコーヒーメーカーでコーヒー淹れるより簡単なくらいである。
 何事も試してみるものだとつくづく思う。「ちょっとやってみた」ことがきっかけで、こんなにも新しい楽しみが増えるとは。
 家で、デザートの後なんかに抹茶を点てて一服なんて、なんとも贅沢な感じじゃないですか。

 抹茶はご存知のように茶葉を石臼で粉砕したものなので、緑茶のような抽出液ではないから、基本的に固形分が液体の中に攪拌されているものである。
 だから通常だったら粉っぽくなったり、葉の渋みが強く出そうなものだが、そこは抹茶用の茶葉の育て方にも工夫がされていて、この状態で大変に美味しくなるようにできている。
 特に甘いものの後に合うのは、この固形の茶葉からの強い味とマッチするからである。それでいて、粉っぽすぎず、また後味もさっぱりしている。
 本当によくできた飲み物である。


 結局、この日以来緑茶も抹茶もほぼ毎日のように飲んでいる。
 そんな話を周囲にしていると、どこからともなくお茶用の器なんかもそこかしこから集まってきて(意外と使っていないお茶道具なんて実家方面にあったりするものである)、楽しいお茶ライフを送っている。 


 着物もそうだったが、「意味もなく難しそうと思い込んでいる」類のものって意外と多いような気がする。
 抹茶も自分にとってはそうだった。なにしろ、本当にわかっていなくて、「お茶を習う」というのは「料理教室に通う」というのをほぼ同義語だと認識していたのだ。それくらい、楽しむそもそもの手順が難しいものだと思い込んでいた。
 でも、やってみれば着物も抹茶もなんということはない、ある程度自己流でもとりあえずやってみれば充分楽しむことはできるのだ。だって、コーヒーの淹れ方なんてみんな自己流だものね。

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