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美術教育を取り巻く現状【前編】

こんにちは。

先日、イラストレーターの友人から「美術教育の現状とか課題を教えてくれない?」と言われたので、調べてみたら面白かったので記事にしてみました。

結論からいうと、日本は美術に関心の薄い国であるということ。そして、美術を学ぶ大学生にとっては『まだまだ将来が描きずらい世の中』ということもわかってきました。

ちなみに、「美大芸大就活ナビ(2020年6月)」によると、今回のコロナウイルスの影響を受け、1社以上から内定を得ている美大生は、わずか10%にとどまり、約9割の美大生が内定を獲得できてない現状のようです。

他方、『13歳のアート思考』の著者である末永氏は、「アート思考こそ現代において最も必要な能力である」と著書で述べており、アートとビジネスの融合性を説いています。

また、意識だけでなく

日本は、国の産業振興を支えるクリエィティブ人材として、アートとビジネスを掛け合わせた「ハイブリット人材」の育成も急務としているようです。

そんな現状を早速、見ていきましょう。

美術教育を取り巻く現状と課題

2015年にベネッセ総合教育研究所が行った学習基本調査では、小学・図工の「好き」が 86.5%、中学・美術の「好き」が56.3%となっているようです。

なお、2005年の同調査では高校・美術の選択が36.8%といった結果から、美術・芸術への関心が剥落するタイミングは中学生であるといわれています。

この状況は、学習指導要領によって「心を豊かにするということに比重を置くようになったこと」と「小学校で図工工作を担当する教師が学生時代に教職課程で美術の実技を履修しないで免許が取得可能になったこと」が原因として考えられています。

すなわち、美術に興味の薄い教師が増えたこと、小中学校における美術や図工といった類の科目は、学習指導要領上で『情操教育』のみに位置づけられ、心を育むだけの教育とされ続けた結果、多くの日本人がアート(美術・芸術)に関心が薄いといったことが考えられます。

美術系大学の学生数と就職状況

美術系の大学は、美術分野の教育を行うことを目的とした大学であり、略して「美大」と呼称され、大きくわけて、美術系、平面デザイン系、立体デザイン系、映像系、プロデュース系などの系統を学修することができます。

美術系大学の定義は、学校基本調査の学科系統分類表によれば、大分類では芸術、中分類では美術関係・デザイン関係・音楽関係・その他の4つに分類されており、音楽関係を除いた分野となります。

少し前ですが、2018年時点では、美術系の分野を設置している大学は、コース制といった教育内容を含めれば約200校程度が設置されているようです。

美大生ラボ」によると2014年度における美術系学部の入学者数は13,206人で、少子化で学生数が減っている中でも増加傾向にあるようです。しかし、日経新聞(2015)によると志願者数は19,000人となっており、これは5年前と比べて16%減少しているとのことです。

下図からも分かるように、80年代~90年代の美大生は男性のほうが多かったのですが、2000年を境に女性の割合が増加し、今や男女比は女性7割・男性3割といった状況で美術系大学は女性に根強い人気を誇っています。

これは女性の社会進出によって、業界も大きく変化したことが関わっていると考えられます。(出典:美大生ラボ)。

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また、卒後の進路については、20〜30年程前は「フリーランス・アーティスト・教員」が約5割を占めていいたようですが、近年は「デザイナーなどの専門職希望者」が4割~5割、「企画職や総合職などの一般職」が4割、残りの1~2割がフリーランスや教員志望となっているようです。

美大生も堅実思考になっていることが分かりますが、これは大学側も就職支援を強化した結果、ともいえるでしょう。つまるところ、有名デザイン事務所への入社自体が大学側にとってそれが『ブランド(質保証)』となっており、それが保護者への安心材料になっているのかもしれないですね。

まとめと「子どものアート思考力」

前編では、初等中等教育における美術教育、そして美大における現状について触れてきました。

後編では、アートとビジネスの融合を進める国と美大の背景についても触れていきたいと思います。

最後に

私も小学校までは、図工や美術って結構好きだったんですけど、中学校あたりから「上手くないといけない」という思いが先行してしまって、しだいに嫌いになっていったなぁ…なんてことを思い出しました。

でも、それが日本の初等教育で受けてきた結果である、ということであれば、何となくですが勝手にすっきりしました(笑)

ちなみに、私には甥っ子が2人いて、二人とも絵が好きで一緒になって絵を描くことがあります。先日も、一緒に絵を描こうとしたところ、お兄ちゃんの方がパタッと絵を描かなくなっていたんです。

「何で描かないの?」って聞いてみたら、近所の方から「弟くんの方が絵が上手いのね~」と言われたようです。

そして、弟くんと比較されるのが気になってしまい、絵を描くことが本当は嫌いじゃないのに、「上手い下手で」比較され、描くことが怖くなっているように思えました。

近所の方も何でそんなこと言うのかな。

って思いましたけど、我々が受けてきた美術の『教育は心を育む』だけで、技術的なことはほぼ学ばす、絵の見方も『いかにリアルに寄せて描けているかどうかか』という基準で判断をするようにインプットとされています。

かくいう私も、絵の判断基準はリアルかどうかで見てしまっていました。そのため、近所の方の発言は致し方ないといえば、しかたがないのかもしれません…。

なので『13歳のアート思考』の本を読んでからは、双方の絵の”あじ”について「私にはこう見える」といった解釈から面白さを見つけ、それを子どもに言語化して伝えることを心掛けるようになりました。

ちなみに、アート思考を鍛えるにはまずは「興味のタネ」を育てることが大事なようです。アート思考とは、単純に絵の見方だけではなく、すなわち「何でこれはそうなっているのか?」と疑問に思うこと。それに加えて私は、「自分にはこう見える」と自信を持って伝えることも大事なのかなと思いました。

13歳になる前、まだ純粋に美術・芸術が楽しかった頃に一度立ち戻る良いきっかけになりました😌

最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
Twitterもやっています。@tsubuman8

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