スピーチ台本 超記憶術
覚えたはずの台本を発表直前ですっかり忘れて頭が真っ白に…
こんな経験はありませんか?
誰でも人生で一度くらいは朝礼やスピーチ、プレゼンで台本を用意したことがあるはず。
台本を一字一句まで覚えて何度も復唱して暗記したことがあるかもしれません。むしろ、あがり症の人ほど、失敗を避けるために台本をしっかり作り込んで準備したりします。
そんなに頑張って覚えた台本なのに、いざ本番になると思い出せず頭が真っ白…となってしまうことほど苦い経験ってありませんよね。
じつは多くの人が台本の考え方や覚え方を間違えています。
そりゃあ頭も真っ白になるよ、という話です。
でも仕方ないんです。だって誰もこれまで教えてくれませんでしたから。
僕はインスタグラムで動画撮影をしていますが、以前はプロンプター(台本を写す機材)に台本を映して話していました。
ですが、ある方法を使うようになってから、プロンプター無しで話せるようになっています。
動画撮影の場合、セミナーやライブと違って、スラスラ話せないと不自然になって見ている人に不快感を与えて見てもらえないんですよね。
なので、台本を用意して話すというのが必要だったんですが、この方法を使うようになってから台本を覚える労力がグッと減りました。
というわけで、今回からシリーズで、脳科学をベースにしたスピーチであがらないための効率的な台本記憶術をお伝えして行きます。
読むべき人
以下のような悩みを持つに人には役立つはずです。
台本やカンペがないと話せない
考えを分かりやすく伝えることが苦手
話にもっと説得力を持たせたい
台本をもっと楽に短時間で覚えたい
台本を見ずにスラスラ話せるようになりたい
いつも人前で話す時に緊張してしまう
第一回の記事は全文無料で読めます。これらの悩みに当てはまるものがあれば、この先を読み進めてみてください。
なぜ人前であがってしまうのか?
まず、人前であがってしまう原因から考えてみましょう。考えられる原因として
そもそも人前に立つこと自体が苦手
過去に人前での失敗がトラウマになっている
話す内容をちゃんと理解していない
話す内容をちゃんと記憶していない
話す内容を記憶したがうまく思い出せない
話す内容を思い出せるがうまく言葉にできない
ざっと書き出してみてもこれだけあります。
この中で1と2は「あがり症」の根本的な悩みと言っていいでしょう。根本的な悩みは、ヒプノセラピーを使ったセルフイメージの改善で対応できます。
ただ、1と2を解消しただけでは十分じゃありません。実際に「伝える」という行為自体にもあがってしまう原因があります。
なので、純粋に人前に立つこと自体に不安がある状態を解消しただけでは「あがり」は無くならない、というなんとも世知辛い話なんですね。
そもそも人に何かを伝えること自体めちゃめちゃ複雑
なんですよ。
「話す」という行為を分解してみると、
という要素があります。普段何気なくやっている「話す」という行為も分解してみると、これだけ多くのものが含まれているわけですね。
これらの要素が1つでも上手くいかなくなると、話す内容が支離滅裂になって自分で何を言っているのか分からない「あがり」の状態ができあがるわけです。
では、各要素について1つずつ見て行きましょう。
1:話す内容をしっかりと理解する
自分でしっかりと理解していないと覚えることもできませんし、それを伝えることもできません。なので、これから話そうとする内容をしっかりと理解していることが前提になります。
普段あがり症で悩んでいない人でも、自分が知らない分野の話をしようと思ったら緊張するはずなんですよね。
たとえば、テレビで活躍しているアイドルタレントだって、急に「世界経済の展望について3分で語ってください」と無茶振りされたら慌てると思うんですよ。
逆にあがり症の人でも「今朝食べた朝ご飯について教えてください」だったらあまり考えずに話せるはずです。自分がよく理解していることだからですね。
2:話す内容をしっかりと記憶する
理解したことを記憶するのが次のステップ。
心理学的には人の記憶には以下の3つのステップがあると言われています。
記銘は、情報を頭に記憶として取り入れる最初のステップです。この段階では短い期間だけ覚えておく記憶(短期記憶)として、海馬という脳の場所で記憶が作られます。
次のステップが保持。一言でいうと覚えたことを頭に定着させるステップです。数十秒から年単位の長い記憶(長期記憶)として記憶を保管するのがこのステップ。
3:話す内容を的確な単語に変換し文章として組み立てる
記憶した内容を文章にして組み立てて行くのがステップ3です。
この時に、必要な内容を必要な時に思い出す「想起」が必要になります。
せっかく覚えても、肝心な時に思い出せなければ意味がありませんからね。
また、思い出したことを適切な単語に変換して、それを文章として組み立ててるというプロセスも必要になります。
ここまででも、かなり複雑な処理をしていますよね。
余談:聞く時と話す時は脳の違う場所が働いている
余談ですが、脳的には音声を聞く部位と発話(言葉にする)時に働く脳の場所は異なるんですよ。
耳で聞いた言葉を理解するのは、ウェルニッケ野と呼ばれる脳の後ろ側(側頭葉と頭頂葉の境)が担当しています。
言葉を話す時は、前頭葉にあるブローカ野と呼ばれる場所が働いています。
なので、「話す」という行為は、相手や自分の話を耳で聞いて、内容を考えながら話すという、けっこう高度なことを脳の中ではやっているんですね。
人が記憶しやすいこと、そうでないこと
ここで台本の話に戻ります。
台本の文章を一言一句記憶するのが難しい理由は、脳は文章の記憶が苦手だからです。
中学生の頃の英単語の勉強を思い出してもらいたいんですが、英単語をなかなか覚えられなかった、という経験はありませんでしたか?
英単語を何度も書いて音読までして覚えたのに、いざ当日のテストではスペルを忘れてしまった…という経験が僕にはあります。
それに対して、家から学校までの通学路は今でも覚えています。
たとえば、家から出た後にポストがあり、角を曲がるとタバコ屋があってその次の坂を登ると雑種の犬を飼っている赤い屋根の一軒家があって…といった形です。
これは、単語や文章よりもイメージの方が脳は記憶しやすいからなんですよね。
さらに、その通学路の途中で初恋の思い出があったり、友達と遊んだ楽しい思い出があればさらに記憶に残りやすくなります。これは感情を伴っているためです。
話し手が覚えやすいものは聞き手もイメージしやすい
イメージで覚えることは話し手にとってメリットがあるだけでなく、聞き手にとってもうれしいことがたくさんあります。
たとえば、以下のような表現だったら右側の方がイメージしやすいはずです。
ぼろいTシャツ → 擦り切れて穴の空いた黄ばんだTシャツ
若い青年 → 日焼けして浅黒い青年
天気が良い → 雲一つない青い空
美味そうなフライドポテト → 外はパリパリ、中はホクホクのフライドポテト
また次の文章を読み比べてみてください。
もう一つはこちら。
情景がイメージしやすいのは後者だと思います。
これはイメージがしやすいからですね。情景が浮かぶということは、話し手もイメージしながら話しやすいし、聞き手もイメージが浮かぶので理解しやすい、覚えやすいということになります。
一つ目の文章は、簡潔ですが抽象すぎてまったく情景のイメージが伝わってきません。また、感情も分からないので何が言いたいのかも、いまいちピンと来ませんよね。
神話や宗教の教えが口コミで広がったワケ
キリスト教ではずっと口伝えで教えが後の世代へ受け継がれていました。聖書の中身は、全部ストーリーになっていて内容がイメージできるようになっているんですね。
あんなに長い文章を伝えるのは、話す方も聞く方もかなりの量を覚えないといけません。それでもあれだけキリスト教が世界中に広がったのはストーリーを使っていたからです。
ストーリーだったらイメージが湧くし、そこには人間ドラマもあるので感情が伴います。なので、あれだけの内容を覚えていられるんですね。
昔見たドラマやアニメ、漫画の内容を今でも細かく覚えているという人も少なくありません。それもストーリーの持つ力ですね。
イメージを呼び起こす表現とは?
イメージしやすい表現をする時にはポイントがあります。
たとえば
見たまま伝える
聞いたことをそのまま伝える(台詞など)
五感を刺激する表現を使う
オノマトペ(擬声語)を使う
感情を入れる
これらを上手く取り入れると、聞き手がイメージしやすい文章になります。
イメージを使って話せると良いことばかり
ここまでの内容で察しがついたかもしれませんが、台本を効率的に覚えたり、人に分かりやすく伝えるコツは、「イメージ」の持つ力を使うことです。
それは、イメージを使うと内容を自分が覚えやすい、思い出しやすいということ。また、それを相手に伝えた時に、相手にも話が伝わりやすいからです。
内容を覚えやすいのは、先ほどの学校までの道順のたとえを思い返してもらったら分かると思います。内容を覚えやすいということは、聞き手にとってもイメージしやすく理解しやすいということでもあるんですね。
なので、スピーチのための台本記憶術とは、イメージを使って自分の脳にしまいやすい形に置き換えて、それを相手にも伝えるための方法ということになります。
ここまで読んで、
あ、フォトリーディングのことでしょ?
と思ったかもしれませんが、全然違います。
ちなみに、フォトリーディングは脳科学的には否定的な見方が多いというのが僕の実感です。
今回のスピーチ台本 超記憶術は、高速でペラペラと台本をめくって覚えていくというものではありません。
イメージを使って効率的に内容を記憶していく方法になっています。
というわけで
第二回からは具体的な台本作成法に入って行きます
今回は台本を記憶するための前提となるポイントをお伝えしました。
今回のポイントを踏まえて、次回からは台本をつくるための具体的な方法、その台本を覚えるための暗記術という核心部分に迫って行きます。
この台本作成法と暗記術をマスターすれば、効果的な自己紹介やスピーチ、プレゼンにも応用できるようになります。ぜひ楽しみにしていてください。
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