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思わず引き込まれた話のまとめ

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ついつい語り口に引き込まれて最後まで読んで感服した話のまとめ。
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2021年12月の記事一覧

例の、インド発の謎の美容ジェルの話 【面倒くさがり女のコスメ遍歴】

ヤサグレ会再始動の記事で、予想外にリクエストの多かったインドから取り寄せた美容ジェルの話。 書くか書くまいか悩んでいた。 まだ迷っているが、期間限定にして書いちゃうことにした。 →前置きだけ無料にし、後半のジェルについては有料にしました。前置きに2500文字あるので、どうぞ無料で読んでください。 なぜ悩んでいたかというと、限りなくグレーな話のような気がしたため。 だけど、世の中にあるグレーな物事こそ魅惑的なもんで、私はグレーなラインをまたいだわけです。 私のスキンケア

有料
300

英国クリスマス豆知識でブリジットジョーンズをあと4センチほど深く知る。

クリスマスアグリージャンパーに関しては、私が昔書いたこっちのブログでの記事もご覧になってね。 上のブログ記事でも書いたように、今やこのアグリーなジャンパーはクリスマスパーティーのドレスコードになるほど。学校でも「今日はクリスマス(アグリー)ジャンパーを着て来る日」なんてものがあったりするので、このダサいセーターを人々はあえて買い求めるのである。 ただ気をつけたいのは、『ブリジットジョーンズの日記』時点では、このアグリージャンパー現在ほど市民権を得ていないということです。だ

しらさぎ

冬になって、空が白い。 いちめんまっしろの、雪のふりそうな空を見ていると、いつも思い出すのが父を見舞った日のこと。 父がすこし大きな手術をしたあと、お見舞いに行った。 行っても大丈夫、と母に聞くと、大丈夫だよ、おいで、と言われたので、電車に乗って向かった。ふるさとの辺鄙な駅に降りたったとき、息がしろくなって、底冷えするほど寒かった。 父は弱っていた。 手術自体はうまくいって術後の経過もよかったけれど、気持ちが弱っていた。ゆっくり娘と会話する余裕などなくて、点滴その他たくさ

短編小説 「花束とチョコレート」

それは駅によくある、うす汚れた銀色のゴミ箱に捨てられていた。仕事の行き帰りにいつも通っている駅前広場の一角を、そんなふうに立ち止まって眺めたことはこれまで一度もなかった。 花束だった。バラ、ガーベラ、かすみ草、そのほかにも、名前の知らない鮮やかな花々がそこに入りきらず、あふれるように咲いていた。冬の朝の空気が、そこだけいっそう磨かれたように澄んでいた。 「ねえ、どうしておはな、すててあるの?」 赤いベレー帽を被った少女が通りすがりに言う。信号を渡ってすぐのところに幼稚園

深夜、電話にスキマスイッチが出た

10月の終わりのことだ。 「もしもし」 電話に出たら、スキマスイッチに繋がった。 令和のおとぎ話である。 将来、孫に言ってもたぶん信じてもらえない。実際のところ家族には信じてもらえなかった。 夜中に、スマホの着信音が鳴った。 画面を見る。 Oさんだった。 凄まじい審美眼を持ち、漫画や映像作品のプロデュースをしている人だ。 「Vガンダムは全然ヴィクトリーしてないのではないか」などの話で盛り上がったことは何度もあるが、ともに仕事をしたことはない。 「Oさん、ど

タイタニックの夏

私にとって、1998年の夏といえば、アメリカへの短期留学をした中学2年の時のことで、 3歳から続けていたピアノをやめ、いまいち打ち解けられない同級生との溝を感じはじめ、初めて異性へ告白した年のことだ。 そして、映画「タイタニック」があった。 きっと私の映画への愛はここからはじまった。 タイタニックが公開されたのは前の年の冬1997年12月だ。すでにレオナルドディカプリオの熱烈なファンだった13歳の私は、当時仲の良かった友人2人を引き連れて公開直後に劇場へ足を運んだ。友

Fragrant Olive

甘い、甘ったるい、優しい匂い。金平糖を小さく砕いたような、いたいけな橙色の小さな花。私の中の秋。 自分には郷愁などと言う感情は無く、母親によく言われていたように『執着がないと言えば聞こえはいいが、思い入れを持って物事や人に接していない。要はどうでもいいんだ。だからどんなに大事なものでもホイホイ他人にやってしまうし、それを悲しいとは思わない。人としての何かが欠けている』そんな人間なのだとずっと思っていた。 だから、あぁ、これが郷愁というやつなのか、と思った瞬間、心底、驚いた