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金融リテレシークイズ(11)投資を学ぼう(回答編)

こんにちは。日米の証券アナリスト資格を持つだいだいです。今回は株式投資を例にとって投資の「大原則」を復習する問題としてみました。回答を紹介します。

問16 あなたは自動車業界に勤めています。 さて、NISAで株式ファンドか株式に投資しようと思いますが、以下のどれを選びますか? 理由も考えてみてください。

A. 自動車業界の個別銘柄(株式)
B. 自動車業界の株式に投資する投資信託
C. AIやITなど成長性があると言われる業界の個別銘柄(株式)
D. その時ニュースで話題になっている個別銘柄(株式)
E. 日本株に広く分散投資する投資信託(例:日本株式インデックスファンド)
F. 世界の株式に広く分散投資する投資信託(例:世界株式インデックスファンド)

正解はF.です。なぜでしょう?
一般人が株式投資を始める時「自分のよく知っている業界の株の方が知識があるので儲けられる」と思いがちです。
ある特定の業界に投資する場合、集中投資による追加的なリスクをとることになりますので、リターン(収益)が市場全体(この場合はEかFの日本株または世界株のインデックス)よりも上回らないと意味がありません。
NISAで投資する場合、税を繰り延べるために5年以上の長期にわたって投資するわけですが、投資を始めた時から投資を終えるまでの5年以上の期間に、市場全体に対して上回るリターンとなるかは不透明です。
投資家のその業界に対する知識と、業界の株式のリターンの間には何ら相関はありません。株価を動かしている要因はさまざなであり、業績に関するニュースなどは一瞬で株価に反映されますので、よく知っていたとしても市場との差を出すことは不可能なのです。
特定の業界の動きや日本経済の動きからの影響が比較的少ない、世界株式に分散投資するFの方が、リスク分散の意味で長期投資に適しているのです。

問17 あなたは日本で暮らす日本人です。確定拠出年金でどれか一つに投資するとしたら、どれに投資しますか?理由も考えてみましょう。(複数正解があるかも?)

A. 元本保証型商品
B. 日本株式ファンド
C. 世界株式ファンド
D. 債券と株式のバランス型ファンド
E. ライフサイクルファンド

正解はC、DまたはEです。C、D、Eのどれを選ぶかはあなたのリスク許容度(リターンの「ブレ」をどの程度許容できるか)によって異なります。
Bを選ばない理由は問16と同じです。日本で働き、暮らしているだけで日本経済の影響を受けている(つまり、日本経済のリスクを「とっている」ことになります)ので、日本株に集中投資してそのリスクを増やすのは賢くありません。株式に100%投資したいならCを選びましょう。
Aを選ばない理由は、確定拠出年金という資金の性格からです。数年以外に使う予定がある資金については、いつでも換金でき、換金時に元本が減っていないことがより確実な預貯金等を選べばいいでしょう。しかし数年、時には数十年という投資期間のある資金については、より高いリターンが得られる(つまりよりリスクのある)金融商品に投資してじっくり増やすのが効果的です。
Cが「怖い」と思う、踏ん切りがつかないという人は、DやEでリスク分散をすればいいでしょう。しかし投資期間が10年以上の長期になれば、Cとのリターンの差が出てくることには注意が必要です。

問18 以下の文章は正しいと思いますか?理由も考えてみましょう。

「私は日本人なので、外国人より日本の経済がよくわかっている。日本円が他の通貨に比べて将来どうなるかも、日本の株や国債が他の国の同じ資産と比してどうなるかも、日本人だからよくわかっている。だから日本に投資する」

A. 正しい
B. 間違っている
C. どちらとも言えない

正解はBです。「日本人だから日本株に投資する」というのは「ホームカントリーバイアス」といい、個人投資家においてよく見られるバイアス(偏見、合理的な投資の邪魔になる非合理的な思い込み)です。日本は少子高齢化で長期的な経済成長が望めないうえ、問17で見たように、日本で暮らしているだけですでに「日本のリスク」をとっているのですから、追加的なリスクを投資で増やすことはあまり賢いとは言えません。リスク分散の観点から日本以外の世界に(も)広く分散投資することが大事です。(一切日本に投資してはいけないわけではないので、念のため)

問19 株式への長期投資を行ううえで大事なことは次のうちどれですか?(複数回答も可)

A. 経済や企業の決算などのニュースをこまめにチェックして、投資する銘柄を頻繁に売買する
B. 経済や企業の決算などのニュースで売買を行うのではなく、自分の投資期間を通じて幅広い銘柄に分散投資を続ける
C. 市場の底で買って上がったら売る
D. 市場の上下に関わりなく少額ずつの積み立てを行う
E. 自分のよく知っている業界や国の株式に投資する
F. いま経済成長率が最も高い国の株式に投資する

正解は、BとDです
Aが全く無意味であることは、前回の「金融リテレシークイズ(その10)」で学びましたね。ニュースに振り回されて頻繁に売買することで長期投資が阻害されるのでかえって有害です。
C.は、そのタイミングが正確にわかれば素晴らしいですが、超能力でもない限り正確に当てることは不可能です。一度当たったからといっても、次回もそうなるとは限りません。むしろ、自分が仕事を引退するまでの期間など、「自分自身の投資期間」に合わせた投資を行う方が合理的です。
E.は、問16から17で見てきたとおり間違いです。
F.も間違い。株価は将来を織り込むものですから、足元の経済成長率どころか、数年先の予想まですでに株価に織り込まれていると言っていいでしょう。

問20 次の文章は正しいですか?理由も考えてみてください。

「株式は毎日市場で価格が変動するのでリスクが大きいが、実物不動産は価格が安定している。まとまった資金ができたら株式を売却してマンションなどの不動産投資に全額切り替えた方が、将来的な成長と安定的な収益を確保することができる」

A. 正しい
B. 間違っている
C. どちらともいえない

正解はBです。現物不動産投資をしたいと考える人の多くが「不動産は価格が安定している」と思い込んでいます。しかし株価が毎日動くのは「上場」しており、そこで毎日のように売買が成立するからです。上場株式はいつでも売買できる「流動性」のある資産と言えます。
一方の現物不動産は、一つ一つスペックが違って規格化されていないため、いざ売りたいとなった時にすぐに売れるわけではありません。買いたい時も自分の条件に合う物件を複数見つけ、比べて選べるわけでもありません。そのため個別の不動産は毎日の「値がついていない」だけ。それは価格の安定とは違うのです。「決して値下がりしない」ということではありません。また、不動産自体には成長性はないので、もし現物不動産を買ったら、賃貸に出すなど「運用」しないとリターンは上がりません。この「運用」は一人ではできず、管理会社などにコストを払う必要がありますし、持っているだけで固定資産税もかかります。
一般的なサラリーマンが現物不動産に手を出すのは、莫大な遺産でも相続しない限り、止めておくのが無難でしょう。(この項終わり)

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