見出し画像

「消費減税」は何のため?

今回の参議院選挙でも、野党のプロバガンダが花盛りである。特にれいわと共産党による「消費税廃止」は突出しており、維新や国民民主までが「消費減税」を訴える。一見、弱者に寄り添っているかに見える提案だが、むしろ経済を悪化させることは間違いない。

財務省の資料によればOECD31国の中で日本は政府の租税収入のGDPに占める割合は28位で4番目に低い。令和四年度の予算では公債金が歳入の三分の一を占め、税金では歳出を賄えていない。原因は増大する社会保障費だ。本来は受益者の保険料で賄うべき社会保障を税金で穴埋めしているのが毎年積み重なる財政赤字の最大の理由である。

議員候補は皆この点を無視し、減税のおとぎ話を語る。しかし、この状態で歳入の二割を占める消費税を廃止するなど、日本の信用力つまり国債の返済能力を著しく損なう行為であり財政の「自殺」だといえる。

日本の長期債務格付けはシングルAプラス。先進国でもトップクラスの財政赤字を累積しつつも投資適格以上にとどまっているのは消費税の引き上げ余力があるとみなされているからだ。消費減税論者が引き合いに出す英国の消費税率(注)は20%である。

野党の消費税廃止や減税案は選挙で票を集めたいがための詭弁であり、国益を考えていない。消費減税は歳入減らすため政府を減らす。たとえ個人消費が増えてもGDP消費を増やす効果が期待できない。2引く1(消費減税による歳出減少)足す1(消費減税による個人消費増加)は2であり、3にはならない。これは小学生でもわかる単純な算数の話である。一方で、仮に消費税を廃止すれば、決定がなされた段階で日本の長期債務格付けは格付け機関によって二段階ほど引き下げられる可能性がある。

信用格付が下がれば国債には売り圧力が加わり長期金利が上昇する。これを抑えるために日銀が金融緩和を続ける可能性はあるが、現状でも長期国債の半分は日銀が買い入れている異常事態だ。長期金利の上昇を抑えられないと、歳出に占める国債費の割合(現状でも2割を超える)は跳ね上がり、国債費以外の政府支出を圧迫する。かえって経済にはマイナスになるのだ。

日本の信用力が落ちれば円安要因にもなる。円安による輸入インフレが脅威となっている現状で、さらに円安を加速させかねない愚かな提案にどれだけの国民が票を投じるのだろうか。(終わり)

(参考)財務省資料

https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/related_data/202110_01.pdf

(注)英国は飲食・レジャーなどのコロナで打撃を受けた分野に限って半年間だけ5%に減税している。「廃止」でも「恒久的な減税」でもない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?