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基礎のきそ:金融リテレシークイズ(10)投資の基礎を学ぼう

こんにちは。日米の証券アナリスト資格をもつだいだいです。これまで3回に分けて「投資の基礎」を学んできましたが、どうでしたか?今回はクイズをお休みして、投資の基礎を復習してみましょう。

投資と投機の違い

個人投資家がリスク資産に興味を持つ時は株式などの短期の値上がり益を狙った「投機」に走りがちです。「投資」と「投機」は明らかに違います。

投資」は、10-20年という時の力を借りてお金を育てる方法。種を蒔いてじっくり収穫を待つようなものです。世界株式インデックスファンドへの投資がこの典型です。
時間の力を借りる分、お金を出した投資家、出してもらった発行体(多くの場合は企業)、そしてその発行体が調達した資金で生み出したサービスを買う顧客といったすべての関係者がWin-winの関係になることが可能です。単独の証券に投資せず、十分な分散投資をすれば「債券」「株式」という「資産クラス」には長期のリターンを生み出す力があるため「当てに行く」ことは不要です。

一方の「投機」は、短期の売買で利ザヤを稼ごうとするもの。FX証拠金取引がこの典型です。「これから上がるのか?下がるのか?」という予測を投資家が立て、それが「当たるか、外れるか」により、売買した一方が儲ければもう一方は損をするゼロサムゲームです。また、株式投資をしているつもりでも、チャートなどを見て数日、数週間で売買をすれば「投機」になります。時間の力を借りて資産を育てることを自ら放棄する愚策と言えます。

投機と違って投資は数年にわたる「我慢」が必要ですが、その「我慢」に報いるのが長期のリターン(儲け)というわけです。しかしその長期投資を行ううえでは、大切な前提条件があります。

分散投資

私の幼馴染は、証券会社が勧めたA社を気に入り、当時のほぼ全財産に近い600万円近くをA社の普通株式に投資したそうです。投資した当時は「将来性のある会社」と説明を受け、良かれと思って10年程度「寝かせて」おきました。つまり10年間A株への投資額を増やすことも減らすこともしなかったわけです。

この「むやみに売買をしない」姿勢自体は株式投資の基本である「長期投資の原則」であり、間違いではありません。しかし彼女は10年後、すべてを失ってしまいました。A社が経営破綻し、株式が無価値になったからです。この失敗はA社の株に全てを投じるという「集中投資」から来ています

長期投資は10年単位の期間を必要とするので、当然その間、個別の企業の業績は大きく変わります。最初に買った時に絶好調だった企業も、数年後はどうなっているかわかりません。個人投資家は「いつも株価やニュースをチェックして頻繁に売買すればいい」と思いがちですが、ニュースは一瞬で株価に織り込まれます(市場の効率性)ので、意味はありません。事実、企業の業績悪化や破綻のタイミングは、公表されるまでわからず、公表された時には時すでに遅しなのです。

このジレンマを解消できるのは幅広い「分散投資」しかありません。しかも株式市場全体に限りなく近い程度に分散しなければ、株式の長期の成長と、企業の業績悪化から来るリスクの低減にはつながらないのです。個人投資家が数銘柄、あるいは10銘柄程度を適当に買い持ちしても、それは十分な分散投資とは言えません。

2023年3月、米国の地方銀行であるシリコンバレーバンク(SVB)が破綻しました。株式はすべて無価値になったものの、米国の地銀のみに投資するインデックスファンドにおいても、最大2.34%の割合でしかありません。より広範な金融株に投資するファンドでは1%未満であり、米国株市場全体に投資するファンドではさらにそれより低い比率となります。

SVBの破綻に影響されて他の金融株も下落しましたが、時が経てば破綻リスクの低い金融業者の株価は反転するでしょう。また、金融に限らず幅広い業種全体に分散投資していれば影響は最小限にとどめられます。

仮に株式市場全体の暴落があったとしても、すべての企業が破綻するわけでないため、時が経てばまた市場は反転し、長期で成長をするのです。その回復力を利用するには、幅広い銘柄に「分散投資」し「長期投資」するしかありません。

分散投資と長期投資は「セット」

このように、分散投資と「セット」にしなければ、長期の株式投資はギャンブルと同じになります。また、たとえ分散投資をしたとしても、インデックスファンドを1週間単位で売買していては、長期の成長から得られるリターンを享受できません。つまり、分散投資と長期投資のどちらが欠けても「投資」にはならず「投機」になってしまうのです。

個人投資家が犯しがちな間違いがまさにこれで、「当てよう」とするあまり個別株を短期で売買したり、せっかくインデックスファンドで分散投資しても、相場の上下動に影響されて怖くなって資金を引き揚げてしまい、上げ局面を逃したり、ということが起こりがちです。

「投機」にしかならない資産もある

これまでは株式投資を例に「投機」と「投資」の違いを見てきましたが、その性質から言って「投機」にしかならない資産もあります。日本の個人投資家は、FX証拠金取引や仮想通貨を売買することを「投資」だと勘違いしていますが、これらはれっきとした「投機」なのです。

投機はギャンブルと性質上違わないので、それを長期で持とうが、分散投資しようが、長期で資産を成長する期待は持てません。たまたま運よく当て続けた人の成功例をもって「自分も」と思う人もいるでしょうが、ギャンブルはそもそも一定の「負け」が想定されているもの。自分が「負け」に入らない必勝法などないのです。こうした資産の特徴は、また別の機会に述べていきます。(続く)


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