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#23 読書録「コンセプトの教科書」

今回の読書録は「コンセプトの教科書

私はAmazonの本コーナー(?)を回遊するのが好きで、そのときにたまたま目に入った1冊。
ちなみにリアル書店で同様に徘徊するのも大好き。


弊社ではWebサイト制作のプロジェクトを進めるとき、デザイン制作のフェーズでデザイナーさんが「デザインコンセプトシート」を作成している。

私のようなディレクターからデザイナーさんへクライアントの事業やプロジェクトの目的、ペルソナやワイヤーフレームなどの説明をさせていただく。その上で、デザイナーさんはそのサイトに相応しい指針としてコンセプトを考える。

だが、そもそもコンセプトとは何か?コンセプトはなぜ必要なのか?どうやって作るのか?
私自身、全体的によく理解できていない。なんとなくの意味しかわからず、なんとなく使っている。

というわけで、コンセプトについてこの本で学んでみようと思った。


コンセプトとは

一般的にコンセプトとは「全体を貫く新しい観点」である。
うーん…少し難しい。

一貫性」といったほうがイメージが湧きやすいかもしれない。
もう少し具体的に書くと、最初から最後まで同じ方針・方向性で貫き通すことである。

これは書籍の中で例として挙げられていた、音楽の「コンセプトアルバム」で考えるとわかりやすい。

いわゆる通常の"アルバム"は、シングル曲やB面の曲+αといったものが多い。言ってしまえば無関係の曲の寄せ集めであり、そこに一貫性はない。

一方で"コンセプトアルバム"とは、一つの物語や設定が前提としてあり、そこに関係する曲たちが並んでいる。

ロック史上初のコンセプトアルバムと言われているビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の構成は架空のミリタリーバンド結成20周年をお祝いするショーを開催するという設定である。

収録されている曲たちは、この設定の上で表現されている。
つまり一貫している。


ではビジネスの現場でコンセプトはどう使われているのか。

例えばスターバックスのコンセプトは「第3の場所(サードプレイス)」である。

スタバのあらゆる特徴はすべて一貫して「第3の場所」を実現することに通じている。

例えば、接客。スタバの店員さんはフレンドリーな方が多い印象はないだろうか。これはお客様にとっての第3の場所として、いつでも安心して来店してもらえるようにするためである。

例えば、価格。スタバの商品は決して安くない。これはスタバは価格で勝負せず、お客様にとっての第3の場所としての空間と商品の価値を最大化することで勝負するためだ。

他にも立地やインテリア、香りや音など、あらゆるスタバを構成する要素はすべからく「第3の場所(サードプレイス)」に関係している。

こう考えると、コンセプトとはその会社が「なんのために存在するか(Why)」を示すものとも言える。


コンセプトにも"ブランドコンセプト"や"プロダクトコンセプト"、"コミュニケーションコンセプト"とさまざまな種類がある。上記は"ブランドコンセプト"に該当する。私の仕事の領域ではそこまで考えることはほぼない。

ただ、冒頭書いた「デザインコンセプト」を考える上では、Webサイトのデザイン要素すべてにつながる言葉は1つ掲げてもいいのかもしれないと思った。

フォントもカラーも画像もインフォグラフィックも見出しもボタンもなんでも、すべては"この言葉"と重なっている、矛盾がないという状態を作る。

そこをクライアントと共通認識として持てると、関係者全員がデザインの良し悪しや方向性で迷うことは減るかもしれない。

いいコンセプトの条件

いいコンセプトには以下の条件があるそう。

  1. 「顧客目線」で書けているか

  2. 「ならでは」の発想はあるか

  3. 「スケール」は見込めるか

  4. 「シンプル」な言葉になっているか

それぞれ深掘りすると長くなるので省略するが、今後コンセプトを考える際に意識していきたい。

コンセプトはキャッチコピーではない

コンセプトというと「かっこいい言葉で書かなければならない」というイメージはないだろうか?
上記の条件にあるように「シンプル」さは必要だが、決して耳障りのいい言葉を作る必要はない。

キャッチコピーは「実体を魅力的に伝える言葉」であるが、コンセプトは「実体をつくる言葉」である。

コンセプトがそのままキャッチコピーとして使われることもあるが、考える際はかっこつける必要はない。

ミッション・ビジョンとの違い

「ミッション」や「ビジョン」を掲げる会社は多い。そして昨今はその重要性がさまざまな場所で問われている。

ただ、これらの言葉の意味を正しく理解している人は多くない気がする。というより、いろいろな定義めいたものがあり扱い方が難しい。

この本で紹介されていたミッション・ビジョン、そしてコンセプトの構造がわかりやすかったので少し紹介したいと思う。

構造は以下のように示されている。

創業→現在→未来

ミッション→コンセプト→ビジョン

ミッションは、創業=「なんのために生まれたか?
コンセプトは、現在=「いま、なにをつくるのか?
ビジョンは、未来=「なにを目指すのか?
である。

このように時系列で理解して運用すると使いやすそうだ。

コンセプトの質に語彙力はいらない

上記に記載したように、コンセプトは最終的にシンプルな言葉に落とし込まれる。

シンプルな言葉に落とし込むためには、たくさんの言葉を知っている上でそこから取捨選択し、相応しい一言を厳選するイメージがあった。

しかし、書籍では語彙力よりも大切なことがあるという。
それはどれだけ言葉を知っているか、よりも、どれだけ言葉の先入観を捨てられるか、どれだけはみ出た言葉を選べるか。だそう。


例えばアサヒスーパードライの商品コンセプトは「辛口」。
この言葉は日本酒の味言葉で、それまでビールで使われたことはなかった。外から持ち込まれた概念である「辛口」こそが、スーパードライの独自性を創り上げた。

「辛口」という言葉自体は決して難しい言葉ではない。誰もが知っている言葉だが、ビールと結びつけるためには知っているだけ(語彙力があるだけ)では不十分。

ここでは検索エンジンの予測変換ではたどり着けない、予測外変換を起こす力が必要になる。

では、どのようにその力を身につけるのか?
具体的には連想法や偶然法、類語法といった手法がある。
詳しくは書籍を読んでほしい。



以上、コンセプトの教科書の読書録でした。

この本は帯にある通り「発想法から表現法まで「超具体的」に解説」されている。

上記に書いたのはほんの上澄みで、書籍の中ではより実践的な話が体系的にたくさん述べられている。むしろ、そちらがメインディッシュだ。

上澄みを読んで気になった方は、ぜひともお買い求めてみてほしい。そして私と一緒に実践していこうではありませんか。



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