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重度身体障害者がひとり暮らしをするためにやったこと

こんにちは、杉本大地です。

2021年6月1日、ついに約23年過ごした実家を出て、ひとり暮らしをはじめました!

23歳がひとり暮らし、世間的にはなんの驚きもないことだと思います。
ただ、生まれつき身体障害を持ち電動車椅子で生活している僕にとって、それはもう大ニュースです。

引っ越したばかりでまだまだ落ち着かない今日このごろですが、せっかくの一大イベントなので、こうしてnoteに記録に残したいと思います。

この記事では、重度身体障害者である僕が親から自立してひとり暮らしするために、いままでやってきたことを紹介します。
状況は人によって様々だと思いますが、
似たような境遇の方にとって少しでも参考になることがあれば嬉しいです。

4つの自立

まず、自立にはいくつか段階があると思っています。
特に僕のような身体障害者である場合、これらをしっかり認識しているとより良いです。

・気持ちの自立
・お金の自立
・生活の自立
・家の自立

順番はその人それぞれの状況によって変わるかもしれませんが、完全な自立をするためには、これら一つ一つを確実に達成していく必要があります。

それではこの4つの自立に沿って、僕が具体的に何をしてきたのか、ひとつずつ解説していきます。

・気持ちの自立

気持ちの自立は、比較的簡単です。
ひとり暮らししたい、そう思った時点でこれはもう半分達成されたようなものです。

しかしそれだけではまだ具体的とはいえません。
ひとり暮らしがどんなものか、明確にイメージできないと後々困ってしまいます。

そこで必要なのが、イメージを具体的にする作業です。
その最も手っ取り早く確実な方法が、ずばり先輩に聴くことです。

たとえあなたがどんな状況であっても、少なからず似たような状況でひとり暮らししている障害者の先輩はいるはずです。
そういう人を見つけたら、いろいろ聴いてみてください。どうやってひとり暮らししているか、日常生活の細かい部分までクリアにして、具体的にイメージすることが大切です。

僕の場合は、社会福祉協議会(いわゆる社協)の方に協力していただいたり、SNSで自分から直接メッセージを送ったりして、自分と似たような電動車椅子ユーザーの方のお話を伺いに行きました。
なるべく多角的な見方をしたかったので、5人の先輩に話を聴きました。
(そのうち3人は実際にお家を見学させていただきました。)
それがあったおかげで、いざ住むならどんな家か、ヘルパーさんにはどういうことをしてもらうか、炊事洗濯どうするか、など自分事として明確にイメージすることができました。

そしてこの作業、自分がイメージするためにも大切ですが、周りを説得させるためにも重要だったりします。

両親などあなたの周りの大人は、ひとり暮らしについて、100%賛同してくれるわけではないかもしれません。もちろんそれはあなた自身のことを思ってのことでしょうが、そんな時に実際にひとり暮らしできている先輩の事例を紹介できれば、その人の心配・不安を少しでも解消できると思います。

僕の親は、幸いひとり暮らしには割と賛成してくれていました。
それでも最後の最後、家を決める段階では、心配からだと思いますが、意見のぶつかり合いでちょっとした口論になりました。そんな時に親の不安を解消できる具体的な事例を示せたおかげで、お互い折り合いをつけて話をすることができました。

自分の信念を曲げないためにも、理論武装は大事です。

・お金の自立

次はお金の自立です。

僕たち重度障害者は、国や住んでいる地域の行政から、年金・手当を貰うことが出来ます。
また仕事をして給与を得ることもあると思います。
それを自分自身で管理し、日々の生活費をやりくりする必要があります。

僕は大学生になったとき、自分の口座をつくり、そこで年金・手当を受給していました。
入ってくるお金と出ていくお金を自分の目で確認し、デジタルで帳簿をつけ始めました。

といっても大学生の間はずっと実家ぐらしなので、自分の口座の中から、家賃として親の口座に振り込んでいました。
(家賃+水道光熱費+食費にしては、破格の安さでしたが笑)

多くの場合、お金の自立は障害者健常者問わず実際に家を出るタイミングで達成すると思うので、僕は割と早い段階だったと思います。

家を出る前にお金の管理ができるようになると、生活費はどれくらいかかるか、家賃としてどれくらい出せるかなど、具体的に考えられるようになります。
家計簿アプリなどの便利なツールを活用して、お金の管理に早めに慣れておくのがいいと思います。

・生活の自立

生活の自立、ここが障害者ならではの部分です。
というのもトイレ・着替え・入浴など、日常生活の動作全て自分でできる人は、子どもから大人へ成長していく過程で、自然と親の手を離れるものです。

しかし僕ら身体障害者は、何をするにも自分一人で出来ないことがほとんどなので、多くの場合は中高生になっても両親等に手伝ってもらって生活しています。

親が若いうちはそれでいいですが、当然時間が経てば、歳を取って体力がなくなります。
親も大変になるし、その介助を受ける本人にも負担になります。

僕の場合、お風呂の介助は夜 仕事から帰ってきた父親にやってもらっていました。疲れている父の介助の手は荒っぽく、本来リフレッシュできるはずのお風呂タイムが僕には負担になっていました。

また、僕は寝ている間一人で寝返りができないので、父親に隣で寝てもらっていました。
寝返りをしたいときは声をかけるのですが、疲れている父は起きないこともしばしば。
つらい体勢のまま、長時間過ごすこともありました。

そんなことではお互いに疲れるだけでなく、健全な親子関係を築くことさえ難しくなります。

そんな悩みを抱えてる頃、ちょうど18歳になったぐらいのタイミングで、先に記した社協の方が相談に乗ってくれるようになりました。
そしてその悩みを伝えたところ、お風呂介助・睡眠中の見守りを中心とした夜間介助で毎日ヘルパーさんに入ってもらえるように、一緒に動いてもらうことになりました。

それまでは週一でヘルパーさんによるお風呂介助を利用していたので、そのヘルパー事業所にかけあったり、ヘルパー利用時間を増やせるよう、地域の行政に申請したりしました。
そして段階的ではありましたが、1年半ほどで毎日夜間ヘルパーさんに入ってもらえるようになりました。

夜の10時に来てもらって、お風呂に入り、パジャマに着替え、睡眠中は呼吸器をつけているので、横で見守ってもらう介助です。朝の準備まで手伝ってくれるので、実家にいながら、ほぼ親の手を借りずに生活することが出来ました。
炊事洗濯は親ですが、それは実家ぐらしの大学生であればそういう人が多いと思うので、やっと周りと同じスタートラインに立てた気がしました。

これが障害者ならではの生活の自立です。
この先の炊事洗濯などの自立については、僕も勉強しながらヘルパーさんをうまく活用してやっていくつもりです。

(僕の場合、実家と住みたい街が隣町だったので、引っ越した後もいままで利用しているヘルパー事業所さんを継続できることになりました。)

・家の自立

あらかたひとり暮らしの見通しがついてきたら、やっと家探しを始めます。

先に書いたとおり、この時点で僕はもうほぼひとり暮らしのイメージがついていたので、あまり深く考えず近所の不動産屋さんに飛び越みました。(もちろんこの時の外出にはヘルパーさんを活用)

時期としては、大学卒業後の2020年11月ごろ。ほんとは春か夏ぐらいに動きたかったのですが、パンデミックが始まってしまって、行動かなり遅れました…

最初はバリアフリーで入れる不動産屋さんを選んで、実際に対面でお部屋探しの相談をしていました。

ただ実際、車椅子でも入居できるという物件はなかなか少なく、行ったそのお店で決められるということは、まずありませんでした。

さらに不動産屋さん次第で対応が大きく異なり、さすがに門前払いはなかったものの、その日は「後ほど連絡します」とだけ言われ、結局うやむやにされたお店もありました。
そしてその日は、3軒回ったうちアパマンショップさんだけ、後からメールで実際に物件をご紹介いただけました。(残念ながら条件が少し合わなかったのでお断りしましたが…)

そのやりとりがあったおかげで、お部屋探しのどういう部分を気にすればいいかなんとなくイメージがついたので、その後は SUUMOやスマイティなどのサイトをつかって、オンラインで探すようになりました。
ちょっとでもいいと思った物件はお問い合わせフォームからメールを送り、手当たり次第に相談しました。

そしてここで実際僕が定型文として仲介の不動産屋さんに送っていた相談事項の一部を共有します。人によって気にする部分はは様々だと思いますので、あくまで参考として読んでいただけると幸いです。

こちらの物件について、以下の点をご相談したいのですが、いかがでしょうか?

・横幅約75cmの車椅子が通れる幅
・車いす利用者の独居、本人名義での契約が可能か
・夜間ヘルパーが毎日泊りがけで入っているのと、日中1~2回ヘルパーが出入りあり
・室内外の非バリアフリ設備を一部復帰可能な形で改修したい(玄関に簡易スロープを置く、フローリングシートを敷く等)

よろしくお願いいたします。

残念ながらほとんどの物件は、「難しいです」という返事が返ってきますが、大体1~2割ぐらいの確率で「ご相談可能です」というお返事がありました。
僕はその時点で内見の相談をするようにしました。

昨年11月~今年4月まで、「数撃ちゃ当たる」の精神で何十件か問い合わせ、5軒内見に行きました。
たくさん考える中で、自分にとって譲れない条件や、あるいは工夫でどうにかできそうな部分が少しずつわかってきたので
その度に探し方を変えたり、問い合わせる内容を変えたりして、あの手この手で探しました。

そして幸運なことに、二軒目の内見を仲介していただいたハウスコムという不動産屋さんがとても親身に対応してくださり、最終的にそちらの紹介の物件に決めました。

ここでちょっと裏話というか、注意点です。
決めた物件、実はハウスコムさんにご紹介いただく前、お部屋探しサイトで見つけて「いいかも」と思い、メールで問い合わせていました。
その時の仲介の不動産屋さんはハウスコムさんとは別の会社だったんですが「車椅子はご紹介が難しい」というお返事をもらい、そこは諦めていたんです。
しかしハウスコムさんにご紹介頂き、驚いた上でそのことを伝えると、物件としてはバリアフリーだし、管理会社は「車椅子という理由で断る事はない」というお返事をいただいたのです。

最初に問い合わせたときは、物件の管理会社さんに断られたと思ったんですが、そうではなく、仲介の不動産屋さんに断られていたわけです…

僕も気づくのが遅かったですが、一つの物件に対して、数社不動産屋さんが仲介していることがあるので、
本当にいいと思った物件は、何社か問い合わせた方がいい
そんなお話でした。

結果、家探しがやっぱり一番大変でしたが
物件さえ見つかってしまえば、後はこっちのもんです。
社協、ヘルパー事業所、引っ越し先の地域の行政等、関わってくださる方に連絡して、一つ一つ手続きを進めていきます。

注意点としては、それら手続きに時間がかかるので、
物件が決まった後実際に入居するまで、ある程度ブランクを設けておく必要があることです。
特に僕たち身体障害者は、ある程度環境がそろってないと命に関わることもあるので、具体的な生活をイメージした上で、備品やヘルパーさんのシフトなどを入念に考えておきます。

まとめ

このようにして、僕は無事部屋を決めることができました。

ひとり暮らしを意識して動き始めたのが19歳のときとかなので、約4年かかってます…

ただ、ここまで読んでいただいたら分かる通り、これは両親はもちろん、社協やヘルパーさんをはじめとした、多くの方の協力があって成し得たことです。

幸運にもいまの時代、色々な制度を使えば重度身体障害者でも一人暮らしできます
(僕はまだ始まったばかりですが、実際一人暮らしされているいる方たくさんいらっしゃいます。)

周りの人をうまく巻き込んで、 是非自分の生きたいように生きましょう!
僕も頑張ります!


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長い内容、ここまで読んでいただきありがとうございました。
なかなかコンスタントに投稿はできませんが、また気が向いたらブログ的に書きたいと思います!

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