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第77号 精密精神医学(Precision psychiatry)とは何か、最近衝撃を受けたAIを教えてください

// 2023年4月15日 第77号
// 1. 今週のトピック:精密精神医学(Precision psychiatry)とは何か
// 2. 質問コーナー:最近衝撃を受けたAIを教えてください

こんにちは、東京大学の池谷裕二研究室と松尾豊研究室で脳や人工知能の研究をしている紺野大地です。

新年度に入り、仕事を色々と断捨離しました。
こちらについては改めてアナウンスしたいと考えていますが、だいぶ身軽な生活になりました。
心機一転、頑張っていきたいと思います!

では、今回も始めていきましょう。

1. 今週の注目ニュース:精密精神医学(Precision psychiatry)とは何か

今号では、「精神疾患のパーソナライズド治療」に関するレビュー論文を取り上げ、「精密精神医学(Precision psychiatry)」とは何か、この先どのような未来が待っているかをまとめたいと思います。

この論文では、脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation, DBS)を始め、近年の急速な進歩が包括的にまとめられており、この分野に興味がある人は必読と言えそうです。
現時点での、2023年個人的ベストレビュー論文でした。

BrainTech Reviewではこれまでも「精神疾患のパーソナライズド治療」についての研究を数多く扱ってきましたが、精神疾患を客観的データに基づいて診断・治療するという「精密精神医学(Precision psychiatry)」の方向性はこの先間違いなく広がっていくと確信しています。

以下で、この論文の具体的な内容を見ていきましょう。

1. 精神医学の現状と精密精神医学(Precision psychitary)
2. 精密精神医学を活用した診断・治療
3. 新しい薬物療法
4. まとめと今後の展望

1. 精神医学の現状と精密精神医学(Precision psychitary)

現在、世界中に精神疾患患者は10億人近くいると言われており、その60%もがどんな薬物にも反応しない治療抵抗性であると言われています。
さらに、精神疾患患者は増加の一途をたどっており、今後も増加し続けることが予想されています。

このように精神疾患は現代医学における最大の課題の1つであるにも関わらず、その他の身体疾患に比べて診断・治療が遅れています。
例えば高血圧や糖尿病は、血圧や血糖値を測ることで客観的な診断が可能です。
一方で多くの精神疾患には、血圧や血糖値のような客観的なバイオマーカーが不足しているため、医師によって診断や治療にばらつきが出てしまうのが現状です。
さらに、脳は個人差が大きいため、同じ疾患であったとしても個々人に応じた治療を行う必要があります。

そこで今求められているのが、精密精神医学(Precision psychitary)です。
精密精神医学とは、

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