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第55号 ブレインテック企業Synchronの最新情報まとめ(2022年9月版)、臨床と研究をどのような比率で行っていますか?

// 2022年9月5日 第55号
// 1. 今週の注目ニュース:ブレインテック企業Synchronの最新情報まとめ(2022年9月版)
// 2. 質問コーナー:臨床と研究をどのような比率で行っていますか?

こんにちは、東京大学の池谷裕二研究室と松尾豊研究室で脳や人工知能の研究をしている紺野大地です。

ブレインテック・コンソーシアムによるBTCカンファレンス2022が10/25に開催されます!
Braintechピッチ2022や高橋政代先生の基調講演を始め、神経科学の産業応用に興味がある人は見逃せないイベントだと思います。

僕も現地参加する予定なので、皆さんぜひお会いしましょう!


では、今週も始めていきましょう!

1. 今週の注目ニュース:ブレインテック企業Synchronの最新情報まとめ(2022年9月版)

今号では、ステント型電極を作成するブレインテック企業Synchronのベースとなった2016年の論文を軽く紹介しながら、Synchronの現状や今後の可能性について改めて整理したいと思います。

Synchronとは

Synchronについてはこれまでも何度か取り上げてきましたが、2016年にアメリカで設立されたブレインテック企業で、ステント型電極(以下ステントロード)を用いたBrain Machine Interfaceという独自のポジションを取っていることが特徴です。

Synchronについて
出典:NeurotechJPのアナリティクスレポート

そもそも神経活動記録の大前提は、「非侵襲的手法は神経活動記録の精度が悪い、侵襲的手法は身体への負担やリスクが大きすぎる」というものです。

そんな中、血管内に留置するステントロードは、頭蓋骨を開ける必要がなく、かつ非侵襲型よりも良い精度で神経活動を記録できるということでSynchronはステントロードに的を絞ったと考えられます。

創業者かつCEOのThomas Oxleyはオーストラリア出身の神経内科医かつ研究者であり、2015年にメルボルン大学で神経科学の博士号を取得した後に2016年にSynchron社を立ち上げています。

Synchron社立ち上げのベースとなった2016年の論文

Synchron社立ち上げのベースとなった以下のステントロード論文は2016年に発表されており、逆に言うとこの技術の目処が立ったからこそSynchron社を立ち上げたとも言えるかもしれません。

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