農家さんの本質的な課題とは?~Agri-Mission 8~
一人でも多くの農家さんの自立を促進するために、西アフリカのベナンで野菜配達ビジネスをしている綿貫大地です。
前回の記事では、スタートアップがすべきこととして、『顧客の課題にフォーカスせよ』と『MVP(必要最小限の機能を有する製品)を投入して、何度も改善を繰り返す』が重要であるという話をしました。
Agri-Missionがターゲットとしたい農家さんとは?
そこで私たちが一番最初にやったことが、私たちの顧客(となりうると思っていた)である農家さんの課題に向き合うということでした。
私は2017年から2年間、JICA海外協力隊に参加をして、農家さんと一緒に活動をしていました。
なので、なんとなく彼らが経済的に苦しんでいることや市場重視の農業ができていないということはわかっていましたが、今一度彼らの本質的な課題を探ってみることにしました。
しかし、その前にやらなければいけないことがあります。
ターゲットを明確にすること
私たちはベナン農業チーム(詳細は下記記事)としてプロジェクトを進めていたので、私自身が思い描く農家さんと他のメンバーが思い描く農家さん像をできるだけ近づける必要がありました。
そうしないとそのズレがどんどん広がっていってしまうので。
ベナンで活動した経験から、私の中には、「こういった人のための会社にしたい」と思い描く人物が何人かいました。
彼らの特徴や状況を整理して、抽象度を高め、私がどういった人のためにAgri-Missionを設立したいのか、以下のように言語化してみました。
私が出会った野菜農家さんはみんな一生懸命農業に向き合っていました。モチベーションも高く、私のような外の人間を受け入れ、現状を少しでも良くするために新しいやり方も受け入れる。
それでも、貧しい。
「なんでこんな状況の中、歯を食いしばってがんばっているのに、経済的に苦しいままなんだ!!!」
”彼ら”と活動を共にして感じた憤り。その”彼ら”がAgri-Missionのターゲットだと再確認できました。
農家さんの課題を探ってみる
そして、彼ら農家さんの本質的な課題を探っていきます。
そのためにいろいろなツールを使いました。
チーム内では、Empathy mapや、
カスタマージャニーをやってみたり、
ベナン現地の農家さんへのアンケート調査を実施しました。
しかし、やはり一番参考になったのは後の副代表となるRomainのインタビューでした。
電波の状況があまりよくないので、テレビ電話ではなく、チャットのやりとりでしたが、私とチームメンバーの質問全てに丁寧に答えてくれました。
これらすべての情報をKJ法を使って、整理しました。
見えてきた本質的な課題とは?
そうして、見えてきた主な農家さんの本質的な課題が以下の4つです。
農業資材の調達が困難
日本では農業専門のスーパーマーケットや品揃え豊富なホームセンター、さらにはEコマースも大変充実しています。
しかしながら、ベナンではほとんどの農業資材が輸入品になるので、まず購入できる場所が少ないです。
農業資材を扱っているお店があるにはありますが、副業的にやっている形なので、品揃えもよくないです。
また、在庫があればいいですが、ない場合は海外から取り寄せるため届くまで大変時間がかかるというのが現状です。
輸送のハードルが高い
これはベナン特有というよりもアフリカによくある問題の一つですが、モノの輸送にはさまざまなハードルがあります。
日本のように公共交通機関が存在しないので、ベナンでの輸送は車かバイクです。
もちろん、輸送業者である彼らは商売としてやっていますので、輸送費は高額になりがちです。
さらに、農村部からの野菜が多く売られる都市部までの輸送手段は、タクシーに限られます。(地方都市と都市部であればバスもある)
よほどの過疎地域でない限り、1日に数便はタクシーが都市部と農村部を往復していますので、お金を払って輸送することはそこまで難しくないです。
しかし、運転手や乗客からの盗難を避けるため&配達先や配達スペースについて融通を利いてもらえて、なおかつ信頼できる運転者を見つけるのは、農家さん個人でやるとなるとそう簡単にはいきません。
農家さんの経営力不足
日本とベナンの農業界で決定的に異なること。
ベナンにはJAが存在しない
誤解を生まないように丁寧に説明すると、もちろん農業の公的機関は存在していて、現に私はJICA海外協力隊時にその地方支部に配属されていました。
しかし、その機関の主な業務は、外国政府や援助期間からの物資の配布や農業の栽培に関するアドバイスだけです。
農業資材の販売、農産物の買取、農家さん向け金融サービスなどはやっていません。
よって、彼らはある意味、日本の農家さんよりも、農業をビジネスととして捉え、個人事業主として農業ビジネスを経営しなければなりません。
しかし、彼らの中で、そういった意識を持った人は少なく、そういった教育を学ぶ機会が圧倒的に少ないので経営に関する知識が不足しています。
実際、私が協力隊時代に活動していた農家さんの中で、収支計算や最終販売から逆算した栽培計画を立てられている人はほとんどいませんでした。
もっと言うとやらなければいけないという意識すらないのです。
輸送が難しい、経営力不足という2つの課題から、さらに深堀りすると、さらなる課題が見えてきました。
・農村部で収穫された野菜はその周辺でしか販売されていない
都市部の方が野菜の消費量は多いです。よって、彼らの利益を増やすためには都市部に輸送して野菜を販売する方がいい。
しかし、厳密な原価計算ができていない農家さんが多いので、彼らが住んでいる農村部の市場で、ほぼ言い値で販売しているのが現状でした。
ベナンでも、農家と市場を仲介する卸業者がもちろん存在していますが、輸送の困難性もあり、その流通を牛耳るほどの大規模な卸は存在しません。
よって、野菜の流通に関しては、農村部と都市部が分断されている状況であるということがわかってきました。
まとめ
最後にもう一度まとめると、私たちが認識した農家さんの本質的な課題は、
輸入に頼っているために農業資材の調達が困難である
輸送手段が限られているために輸送のハードルが高い
農家さんの農業経営に関する知識やスキルさらに意識が不足している
野菜流通に関しては農村部と都市部が分断されている
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回記事では「ツーサイデッドマーケット」についてお話しします。
それでは。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?