見出し画像

20年後も忘れない思い出〜旅の記録4〜

割り込み、順番抜かし、サッカー試合のゴール前並みのフィジカルコンタクト。
切符を買うにも一苦労だ。でもこんな事でイライラしてては身が持たないし楽しくもない。
僕も負けじとインドスタイルで切符を手に入れた。
だってココはインドなのだから。

街中に牛がいるのは当たり前。
駅の待合室にも牛の親子が誰よりも大きな態度で座っていた。

ニューデリー駅での切符売り場。
ニューデリーからの列車に乗り、次の目的地は "バラナシ" に行くことにした。
列車はインドの通常通り5時間遅れで到着。

旅人の聖地。聖なる河、ガンジス河のある街バラナシ。
インド旅に於いて欠かせない街であると旅人は言う。
それはどーいう意味なのか、それ程の魅力は何なのかと確かめるために向かうことにした。

列車での移動時間は約1日。20時間だ。

2段ベッド席の寝台列車。横にはインドのおっちゃんの足があり、下の席では仲良しで笑顔の素敵なインド人親子。斜め下の席ではブドウをずうっと食べてるインドのおじさんがいた。

周りはインド人しかいなかった。
もちろんだ。ここはインドなのだから。

そしたら、日本人が珍しいのかブドウのおっちゃんが話しかけて来た。

グ「Do you wanna some grapes ?」
自「Oh really? Of course I wanna, Thanks!」
グ「Where are you from?」
自「From Japan」
グ「Nice! Where are you going? How long are u gonna stay in India?」
自「I’m gonna go to the Varanasi. I’m gonna stay for 2weeks」

当時は全く英語が話せなかったけど、多分こんな感じで話したであろう会話。

今の状況で行くのとでは、難易度も楽しみ方も全然違ってくると思う。
あの時は英語も分からず、ジェスチャーと数少ないボキャブラリーで、何をするにも莫大なエネルギーが必要で、とにかく必死だった。

今は少しは英語を話せるようになって、一つ一つの行動にかかるエネルギーは少ないと思う。難易度だってそんなに高くないだろうし、余裕もあれば、大した不安もない。
でも、あの年齢で、ほぼ丸裸のサバイヴスキル。
そんな時に行って本当に良かったと思う。

もちろん今の自分でも、またインドに行ってみたい。

2人で話していると、他の人達も会話に入ってきた。
異国での初めての列車。
自分はいまどこに居るのか分からない不安の中、話しかけてくれたことに感謝と嬉しさがこみ上げてきた。
グレープおじさんのブドウをつまみつつ、列車からの永遠と広がる大地の車窓を楽しみつつ。

どこからかインドの若者もやって来て、「バラナシに着いたら俺が教えてやるよ」とすごく信用できそうな顔で言ってくれた。
全力の「ありがとう」で返した。

外も暗くなり、周りはゾロゾロと寝る支度を始めているようだ。
まだまだ列車の旅は長い。僕も眠ることにした。

列車の窓から流れてくる、夜のインドの心地良い風を受けながら。ウォークマンから流れる "Caravan" の「Trippin' Life」を聞きながら、驚くほど直ぐに深い眠りに落ちた。


〜続く〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?