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日本では教えてくれない幸せな家庭の作り方


子育てとフルタイムの両立は人間をやめないと無理?

 私は3歳の息子と妻の3人家族です。実家はお互いに遠方にあるので応援は見込めません。さらに夫婦がそれぞれ週に1回程度、泊り出張を繰り返すという日々を送っています。X(twitter)で流れてきたのは、「子育てとフルタイムの両立は人間をやめないと無理!」という声でした。首がもげるほど同意です。

男女平等の影で失われたもの

 専業主婦が中心だった昭和、パートタイムに女性が進出した平成を経て、令和では夫婦ともにフルタイムの勤務が前提となりつつあります。足元では、結婚や子育てで女性が職を離れ、30代の就業率が下がる「M字カーブ現象」はほぼ解消したという向きもあります。*1「パワーカップル」なる言葉も誕生し、いよいよ時代は変わってきたと思えるかもしれません。
 変化の中で、フルタイム共働き世帯が直面しているのは仕事と家庭の両立です。欧米では、家庭と経済性を両立させるために「仕事に特化する夫」と「家庭に特化する妻」のスタイルが主流になってきています。これは夫婦ともフルタイム勤務をしますが夫が昇進を狙って残業や出張を辞さずに働き、妻はそれを避けることで家庭へのリソースを確保する、というものです。「女性は家庭を守るべき」という考え方は薄れましたが、男性がキャリアで優遇される傾向は依然として残っています。*2
 せっかく男女平等の社会を目指してきたのに、なんだかさみしい話ですね。さらに思うのは、全体として家族の時間は減っていないのか?ということ。専業主婦の良し悪しはさておき、そこにあったお母さんと子供の時間は失われてしまったように思います。


*1 働き手「予備軍」、20年前から半減 昨年411万人に 女性・高齢者の就業進む 人手不足、事業再編迫る
2024/04/07 日本経済新聞
*2 クラウディア・ゴールディン 著ほか. なぜ男女の賃金に格差があるのか : 女性の生き方の経済学, 慶應義塾大学出版会, 2023.4.

「こうあるべき」より、「こうあっても良い」家族を目指したい

 ここで少し時間を巻き戻しましょう。人類の歴史の中では、男性が必ずしも家族の権威者ではなかった社会がありました。男女の役割分担が始まったのは狩猟採集時代にさかのぼります。野生の植物を収穫して、食料や衣服へ活用するのは主に女性の役割でした。女性たちの知識が農業革命と呼ばれる、人為的な自然のコントロールを可能にしたのです。そこでは、知識を持つ女性が世帯で権威的にふるまう社会も生まれていたことも想像に難くないでしょう。*3
 夫婦という関係自体も、家族のあり方としては絶対ではないものでした。例えば、ケニアのナンディ族では、女性が「夫」として女性の「妻」をめとり、産まれた子どもの「父」となることができます。台湾には、未婚のまま死んだ娘のために「夫」を探して結婚させる、「冥婚」という習慣があります。*4
 現代の家族像も、日本以外の国へ目を向ければ様々なバリエーションがあります。オランダでは1週の勤務時間を36時間として、9時間×4日の勤務体系を選ぶことができます。その中で男性は週に1日、「父の日」を実施します。「父の日」に子どもは保育園や小学校に行かず、お父さんとゆっくりと過ごすのだそう。*5
 現代日本のフルタイム勤務夫婦のあり方は、とても狭いバリエーションの中に押し込まれています。それには、働き方の選択肢が少なかったり、一時的にキャリアを離れた人がカムバックしにくかったりなど、様々な要因があります。それでも、「家族はこうあるべき」という観念にとらわれないことで、より良い家族のあり方を見つけられるかもしれません。 

大切な人といられるのは限られた時間だけ

 一説によると、父親が子供と一緒にいられる時間は生涯で3年4か月だそうです。さらに、自分自身の両親と過ごせる時間は1年で1日。あと何年ご両親が生きられるかによりますが、想像以上に短いと思いませんか。
 そんな貴重な時間を犠牲にしてまで、仕事を重視しなければならいない理由があるのか。社会のべき論に流されて、大切なものをないがしろにしていないか。今一度考えなおしてみたいと、思いませんか。


*3 デヴィッド・グレーバー, デヴィッド・ウェングロウ 著, 酒井隆史 訳光文社2023.9
*4 綾部恒雄, 田中真砂子 編三五館1995.12
*5 中谷文美 著世界思想社2015.1


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