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讒文芝居

●最近の此のバンド弩豪い(バンドでは無いものも含むけれど便宜的に)

①Dnald Fagen【Steely Dan】
(ドナルド・フェイゲン【スティーリー・ダン】)

②Geoge Winston(ジョージ・ウィンストン)

強くなければ生きていけない。 優しくなければ生きていく資格がない
(レイモンド・チャンドラー「プレイバック」)

以前私を喜ばせたどんな美しい音楽も、どんな美しい詩の一節も辛抱が
ならなくなった。蓄音器を聴かせてもらいにわざわざ出かけて行っても、
最初の二三小節で不意に立ち上がってしまいたくなる。何かが私を
居堪らずさせるのだ。それで始終私は街から街を浮浪し続けていた。
(梶井基次郎「檸檬」)


若くて、経験の浅い時分は「完璧なモノ」が心底厭だった。

厭と謂うの乎、淋しかったのだ。
完璧に為れば為る程、物事は御洒落にも為り、御洒落(スタイリッシュ)
てのは、突き放して居る様にも感じて忌避して居た。
鬱や穢い物、冗長蛇足に付き合って呉れ無い冷徹に感じたからだ。
もう、無駄(青春)を然せて呉れる自由は無いの?
失敗は赦され無いの?見苦しさは悪なの?

暗中模索の裡に、滅多矢鱈に永い時間や強烈で極端さで、
中毒に然せ、浸らせ、依存症に陥らせる、厄障屋さんの手口みたいな
音楽の在り方に若い頃は、其んな心持で出遭い虜に為るだろう。


然し、然う謂う「時間等の無駄遣い」が赦されるのは若い裡だけなのだ。


中年を過ぎ、初老を迎えたら一年は一秒の如し。死を実に喫緊に感じる。
詰まり、「無駄に費やすにはもう本当に時間が無い」のだ。済崩しに。
加えて、滅茶苦茶無駄遣って、下手が恰好良い。
無駄に巧過ぎて、冗長で蛇足で恰好良い。
其んな安易に解り易い「凄さ」には今度は心底何も感じ無く為る。

もう、音楽を愉しむ感受性は枯渇して裏切られた一生を送る他
無いのだろう乎。もう、殆ど世界中の音楽は聴き漁ったのに。

扨、其んな御同輩の為に余りの然り気の無さ、無駄の無さの為に
20年経っても、誰も追いつけず、研究本が出され足り
丸で学校の放課後の様な雰囲気だのに、学生では絶対に弾けない
永遠の音楽が在る。
生半には気が附け無いから見損なって来たのだ。


実は何処乎のスーパー・マーケットやCMのBGMで生活の邪魔に為らぬ
音数や囁き声で、ずっと当たり前の様に歌っ居た。


擦れっ涸らしで心が燃え尽き凍て附いた大人達をずっと、
真冬の温泉や懐炉の様に温めて来た、
解り易い凄さの欠片も無いからこそ怖くは無いが、
真に優しく「勁い(つよい)」でも、決して押し附けがましく無い
音楽が在る。ずっと在った。

此れ等は完璧なんだろう乎。完璧に近い、だが堅苦しくも冷度くも無い。


Donald Fagen「I.G.Y.」

Steely Dan「Aja」

George Winston「Longing / Love (September)」


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