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「スマホのバッテリー残量」というライフラインをどう担保するか。外国人相談会への無料Wi-Fi設置と充電ブースの実装。

コロナ禍で困窮される方々が増加しホームレス状態に陥った方々でもスマホを持っている姿が珍しくないこと。逆にそういった状況にあるからこそ円滑な通信手段の確保や正確な情報へアクセスする必要があること。
そういった状況を鑑み、支援するため
「支援団体が催す野外の配食(炊き出し)・相談現場に、相談に来られた方が使える無料Wi-Fiを飛ばす」
試みを10月からまず始めてみたことは、すでに述べた。

本エントリーはその進捗記録となる。

外国人に向けてのワン・ストップ相談会へWi-Fi提供

11月1日、川口市のキュポ・ラ広場にてクルド人の生存権を守る実行委員会主催「外国人のための大相談会」が開催。こちらの相談会に無料Wi-Fi設置をおこなわせて頂いた。

川口市でのイベントということもあり、来訪者はクルド人が多かった。来訪者はまず受付テントで自身の境遇を説明し、その内容によって各ブースに割り振られていた。

だが相談内容がどうあれ、相談者に共通しているのは「お金がない」ということだ。ある男性の財布には数百円しかなかった。相談表にも所持金が数千円、ゼロ、さらには借金30万円などの数字が記載されていた。家賃滞納1か月や3か月という人もざらで、大家やまた貸ししている知人から立ち退き要請を受けている人もいた。

会場には、120世帯の約300人が来場。なかにはお金がないため、何kmも歩いて来場した人もいた。多くの人が明日食べるものの心配をしていた。
(※前掲記事から引用)

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クルド語と英語で表示を出し、また開場アナウンスでも利用出来る旨を呼びかけて頂き、実際会場内で利用があった。
(ルーター二台体制で常時2〜3台の接続を確認。ただ、現在使っている機種では後でログをたどれず、フィードバックが弱い。これは改善してきたい)

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私自身は相談業務には関わらなかったが、相談ブースを横目で見ていて、その列は常に途切れない状況だった。
また、それらに比して通訳者が不足し、主催者から補助的に翻訳アプリ利用を呼びかけるなどご苦労されていた。

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基本的に翻訳アプリはネット接続必須であり、そういった意味で(支援者のみならず)ご相談者自身が必要な状況を(仮に電話料金滞納・停止などで止まっていたとしても)伝えるためにも、こうした場で相談支援インフラとしてWi-Fiは今後もあってよいだろうと思う。

今後も、日本に暮らす外国籍の方の支援ニーズは高まってくる(というか現に高まっている)と予想され、その意味でもこの分野に個人的に出来る範囲で力を尽くしていきたいと改めて。

池袋相談会ではWi-Fiに加えて「スマホ充電」提供も開始

NPO法人TENOHASIと認定NPO法人世界の医療団が主催されている定例相談会(毎月第二・第四土曜日開催)への無料Wi-Fi設置についても、引き続き11月もおこなわせていただいている。

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11月から、新たな試みとして。
月が改まった初回開催日の14日、この日から「スマホの無料充電」ブースを設置した。
希望された方はブースでの充電のほか、医療相談や生活相談を希望されている方には、相談を受けながら充電が出来るよう会場内で限定的にバッテリーを貸し出す仕組みにしてみた。
また、課題だった周知の弱さを解決するべく、並ばれている方々へWi-Fiと充電が利用出来る旨のチラシをお渡しした。

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正直どれくらいニーズがあるか半信半疑ではあったのだが、スタートの4時半直後から「充電したいのだが」とご相談され、結局相談会中3名の方へ充電の提供をおこなった。

緊急対応中「スマホの充電」が切れ連絡不能に

スマートフォンが様々な意味で社会生活に必須となっていく反面、それは一般的にかつてのガラケーと比べると圧倒的に電池が持たない。
にも関わらず、特にコロナ禍以降の都市においては「無料で充電できるスポット」が減っているのではないかという認識がある。

緊急事態宣言以降、深夜営業をしていたファーストフード店・ファミレスなどが11時前後に閉店するようになったこと。また、昼間営業されているところでも長居されることを嫌って、コンセントを使用不可能にするところが目立ったこと。

また、代わって有料のバッテリーを無人で貸し出すサービスが勃興し、あっという間に市民権を持ちつづある。
一度「充電ニーズはビジネスになる」となれば、今後さまざまな場面で「充電の有料化」が、たとえば「レジ袋有料化」のように「当たり前」になってしまうように思う。

緊急事態宣言以降、私の所属団体であるつくろい東京ファンドや反貧困ネットワーク・緊急コロナ災害アクション、都内の議員や支援者の方と協働し現在まで継続している、メールフォームによる緊急相談対応体制。
その相談フォームから送られるSOSメールの中でも、「やりとりしている最中で申し訳ないが、スマホの電池が切れそう」といった訴えをする方が非常に多い。

しばらく連絡が途切れたと思い心配していたら、
「なけなしの所持金で、コンビニで(高い)バッテリーを買いました」
と伝えられ連絡が再開。この乏しいものがさらに奪われる構造に、割り切れない思いを抱いたこともある。

バッテリーを買えるならまだ良いのだろう。
悔しい思いを引きずっているのが、同じくスマホの充電が切れて、そこからどうやっても連絡ができず、支援不能になったある方のことだ。

SOSをこちらに送られ、継続的にやりとりをし、支援者が現地へ向かうための待ち合わせと時間を調整する最後のタイミングで、先方のスマホバッテリー切れで音信不通。
(直前のメールで「もう充電が切れそうです」と連絡が……)

心配していたところ、詳細は伏せるが、数ヶ月後にその方の「代理人」からその方の連絡が途切れた後のご状況をご連絡頂いた。
それは明らかに、その時スマホの電池が途切れなければそうはならなかった「未来」だった。
改めて「充電」のような地味なインフラが、私達の社会的な機能を担保していると感じた。

これら緊急支援の模様が、このたび『コロナ禍の東京を駆ける: 緊急事態宣言下の困窮者支援日記 』(稲葉 剛 ・小林 美穂子・和田 靜香編 岩波書店)として、上記の書籍としてまとまった。私も一節「『コロナ禍』における『通信禍』」という題で寄稿させていただいている。

今後の活動については、Wi-Fiと充電に関していえば池袋相談会への設置は継続していく予定だ。また、年末年始の支援体制も模索しており、そこでも相談の場を作れたら展開していく。
また、こういった私が直接設置に向かうこととは別の形での「Wi-Fiの提供」についてもご相談を受けており、対応してきたい。

以上のように「無料Wi-Fi・充電の提供のパッケージ」自体はだいぶ固まってきたので、もし関東近郊で支援活動をされている団体がおりましたら、ご提供できたらと思っているので、お気軽にご連絡いただければありがたい。

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