根抵当権の登記 事例シリーズ①
▷根抵当権とは
根抵当権は、「一定の範囲」に属する「不特定の債権」を「極度額の限度で」担保する抵当権です。
根抵当権によって担保される被担保債権は、極度額・債権の範囲・債務者の三つの構成要素で特定され、このうち債権の範囲と債務者は、根抵当権の元本確定前にのみ変更することができます。
この時点で、餃子銀行の根抵当権によって担保されている債権は、
です。
これを登記記録に表すためには、次の3つの根抵当権の登記を行なうことになります。
3-1)相続による債務者の変更登記
3-2)指定債務者の合意の登記
3-3)債権の範囲と債務者の変更登記
3-1)相続による債務者の変更登記
元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務(……略……)を担保します。(民法第398条の8第2項前段)
そして、被相続人の金銭債務は法律上当然に分割され、可分債務として、各共同相続人がその相続分に応じて承継するものとされています。
太郎さんの債務が、相続人3名に承継されたことを表す変更登記です。
この時点で、餃子銀行の根抵当権によって担保されている債権は、
です。
3-2)指定債務者の合意の登記
また、上記の3-1)の相続債務のほか、(……略……)根抵当権は、(……略……)根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務をも、担保します。(民法第398条の8第2項後段)
これを、「指定債務者」といいます。
根抵当権者と根抵当権設定者との間の合意によって「指定債務者」が定められると、今後は「指定債務者」が、根抵当権者との取引をする地位を承継することになります。
なお、債務者の相続開始後6ヶ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと、根抵当権の元本が確定してしまいます。
指定債務者を花子さんとする合意の登記です。
この時点で、餃子銀行の根抵当権によって担保されている債権は、
です。
3-3)債権の範囲と債務者の変更登記
一郎さんと二郎さんが相続した債務は、花子さんが引き受ける約束ですので、そのように根抵当権の債権の範囲と債務者について変更を加えます。
以下の債権すべてが餃子銀行の根抵当権によって担保されているのが、目指すべき完成形です
債務者を花子さんに変更しました。
この変更により、債権a・債権b・債権cが担保範囲から抜け落ちます。債権d・債権eは担保されています。
債権の範囲に、「令和4年12月5日債務引受(旧債務者 第一一郎、第一二郎)にかかる債権」を追加しました。
これで、債権b・債権cが担保範囲に加わります。
債権の範囲に、「令和4年9月1日相続による第一花子の相続債務のうち変更前根抵当権の被担保債権の範囲に属するものにかかる債権」を追加しました。
これで、債権aが担保範囲に加わります。
「~の相続債務のうち変更前根抵当権の被担保債権の範囲に属するものにかかる債権」がまわりくどい表現ですが、これをうっかり「令和4年9月1日相続による第一花子の相続債務」としてしまうと、「餃子銀行主催のチャリティーパーティの席で、第一太郎が買ったあやしげな壺の未払い代金60万円」なども加わってしまうので、注意が必要です。
これによって、餃子銀行の根抵当権によって担保されている債権は、
となりました。
実際には、上記の債務者の変更と債権の範囲の変更を一括して登記申請します。
抵当権・根抵当権の登記のお手続きをご希望の際は、当事務所へご相談下さい。
【おわりに】
最後までご覧いただきありがとうございます。
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