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(ネタバレあり)映画感想「君たちはどう生きるか」(Filmarksより)

「風立ちぬ」以来の宮崎駿監督作品。
事前に情報がほとんど無いままの公開だったが、そのためか席の埋まり具合は上々だった。

宮崎御大は82歳、かの黒澤明が遺作を撮ったのが83歳だった事を思えばもう引退撤回の余地もなくなってきているかもしれない。
それゆえにこれまでの作品のテイストが多分に盛り込まれた冒険ものになっており、集大成的な一本と呼んでいい仕上がりだった。
太平洋戦争を体験した世代も残り少なくなり、この昭和の空気を描ける映画監督はこの人だけかもしれないと思いつつ、途中からファンタジー世界に移ってしまうのが惜しいと感じた。
ファンタジーこそはアニメならではの物で、それがジブリ作品の魅力である事は解るが、時代が昭和初期である意義が薄れてしまう気がした。世代的に「死」が身近であった事が異世界との繋がりを示唆しているのかも、と思ったがそこに違和感を覚えたからだ。
現在爆弾が降ってくることは無くとも、「死」がすぐ側にある事は変わりない。もしこの映画が戦時中こそ生命の価値を訴えるに相応しい時代設定だと断じて作られたのであれば、それは現代を見る目が曇っているとしか言えない。

主人公の目的も動機付けが弱いままとりあえず女性を助ける、という感じで物語全体の熱量不足を感じた。あと今作に限ったことではないがやはりアニメの演技ではない声優陣はキッパリ「下手」にしか聞こえない。今現在、俳優でも声優として上手い人が沢山いるのでわざと下手な人を使っているように聴こえてしまい観ているのが辛かった。

この事も含めて、やはりもう宮崎アニメは「古い」のだなと思わされる作品だった。
初めてリアルタイムで宮崎駿作品を観られた、という人にとっては感慨深くあったようだが、残念ながらそれ以上のものではなかったと感じる。

しかし、凄いなと思ったのは不気味な世界観に紛れ込むユーモアの上手さ。新海誠、細田守作品にはここが足りない、というのも実感した。

それにしても、監督はサギやインコに恨みでもあるのだろうか(笑)。

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