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オトナプリキュア10話感想…遠ざかる「キボウ」に手を伸ばし、最後のメタモルフォーゼ

毎週恒例、昨日オトナプリキュア10話「サイゴノヤクソク」が放送されましたね。

今回含め残り3話、なのでこの10話はもう最後の戦いのプロローグ的な内容になっており、ここまで毎回のようにあった「驚きの新事実!」はない展開…に見えました。が、そこに捻りが加わっているのがこのオトナプリキュアの一筋縄ではいかないところです。

のぞみは頻繁に意識を失うようになり、それがタイムフラワー…即ちプリキュアへの変身が原因であると明言されました。このまま変身を続けると、命の危機であると。ですがそこに意を決したベルによる総攻撃が開始されます。シャドウに対抗できるのはプリキュアのみ。のぞみ達は自身への危機も省みず、変身して挑んでいきます。そして、街を守るため、という思いがベルもまた同じであることを聞かされて…。

最初に倒れた時、「飲み過ぎじゃね?」などと嘲笑う人もいましたが、
飲み過ぎならどんなに良かったか、という展開になってきました

「わかっていた」けど「知りたくなかった」

ハッキリ言ってしまえば、とてつもなく「ベタ」な展開だと思います。突然中学生の頃の姿に戻って変身、それが寿命を縮める行為であるという事実、愛する人に「もう止めろ」と言われるも使命感でそれを拒否。これが最後の一回だと言い残して戦地へ向かう主人公。「そうだと思ってた」と手を取り合う仲間達。
しかしそれを日曜朝の女児向けアニメであるプリキュアの派生作品で見せられると、少なからず驚き、動揺が広がっている様に見受けられます。ジャムおじさんが「これがもう最後の一個じゃ」といってパンを焼き始めたら誰もがざわつくでしょう。それに等しい展開な訳です。
皆、そうじゃないかと思いつつも認めたくなかった。約三ヶ月この作品を観てきて、夢原のぞみ、またメンバー達が命を落とすかもしれないなんてどこかで信じていなかったのではないでしょうか。もっとも、ここまで来て残り2話、どう着地するかを見届けるまで判断は出来ませんが、これこそ昨年のリコリス・リコイルの千束と同じような気持ちで見守る事になりました。…そういえばあちらの新作はいつになるんでしょうね。

黒い花なので、まず良いものではないと思ってましたが

草尾毅さんの真骨頂を見た

とにかく今回、ファンが悲しくも喜んだのは、のぞみとココのシーンではないでしょうか。

前半で「変身する、しない」で言い合った二人がこの場面では揉めることはなく、ココは素直にのぞみを送り出します。ただ、自分の無力感に苛まれ涙を流し、それを受け取ったのぞみと抱擁する訳ですが…。

少年漫画ならば、男が行く側、女が見送る側なのがパターンですがプリキュアなので逆です。物語上の役割としてココが女性のポジションになっているのですが、このシーンのココ役・草尾さんの演技が素晴らしかった。口調も「行くの?」と柔らかくなっていますし、病院で檄を飛ばしていた時とは全く違う弱弱しさがありました。代わりに戦うことの出来ない自分にはのぞみを止める事もできない。あからさまな「不吉なフラグ」になってしまう事も承知の上で、「サイゴノヤクソク」をせざるを得なかった。二人だけの時は声のトーンが変わる、格好悪くても「情けない男」をさらけ出してしまう…このココの気持ちを表現しきっていました。想い合う二人のシーンとして直球ですが、豪速球でした。俗に言うカップリング推しの人が見たかった場面なのではないでしょうか。
草尾さんが男性としては高めの声、三瓶さんがハスキーボイスなのが相まって、この男女逆転シーンがとてもしっくりくるものになっていましたね。高校でしょうか、大学でしょうか、合格発表を一緒に見に行った仲なんですね…そりゃ辛いでしょう、命のかかった場所に送り出すなんて。

ですが、なんだかんだいってもこれはプリキュア。そんなフラグの通りにはならないと信じています。

「キボウノチカラ」が示すものとは

人間の闇について語る時、昔の眼に戻る満薫、ここも良いカットです

今回、個人的に私が連想したものがウルトラマンマックス第24話「狙われない街」です。セブンに敗れた後、北川町でヒッソリと暮らしていたメトロン星人ですが地球人達のあまりの退化ぶりに呆れ果て、
「こんな星はもう、侵略するに値しない」
と吐き捨てて、地球を去っていくと言う皮肉の効いたストーリーでした。
その時「サルになってしまった人間」として出ていたのが、電車の中で化粧をしている女子高生などです…そう、今回のオトナプリキュアに出てきた、「SNSの為に食べ物の写真を撮り、食べる気のない女性」と同じ描写、つまり現実の中にいるモラルのない人間です。結局、ウルトラマンマックスではそういった人間達に対するアンサーが無いまま話が終わってしまっていました。これが実相寺昭雄監督の遺作になったことは語り草です。

では、このオトナプリキュアでは、「ベルの意思」、「街の現状」、来たるべき未来に対しどういう決着を描くのでしょう。

大方、「そんな人間ばかりじゃない」といった形でベルが説得されて終わるのでしょうか、そこに命を削って時間を過去に戻したのぞみ達の意志が絡んでくるのなら、熱いものにもなりそうですが…まだ、読めません。

戦力的には8人もいて負けそうにないので、焦点は
「街を見守ってきた時計塔の嘆き」とどう向き合うか、ですね

あと今回、終盤にチラッと初代の二人が出てきました。クレジットに名前はありませんでしたが、紛れもなく美墨なぎさ&雪城ほのかです。ネット上ではここに皆が一様に驚いていましたが、同時に二人の服装があまりにも当時のままだったので、ある仮説が立てられていました。
まず8話の時点で登場していた雪城おばあちゃんが「ふたプリ」時と全く変わっていない事、戦争体験を持っている世代であるなら現2023年ではかなりの高齢になってしまうことからも言われていたのですが、初代ふたりはプリキュア、またMax Heartの時系列は5&S☆Sの2作より後になるのではないか…という説です。つまりは時系列逆転説ですが、これがもし当たっていたらこの10話の、驚きの新事実になりますね。

この二人がここで出てくるだけに終わるのか、残り2話で出番があるのかはまだわかりません、ですが約20年前の(図らずもウルトラマンマックスは2005年、Max Heartの時期です)ウルトラマンが答えを出さなかった、

「退行していく人間達を守るべきなのか、真摯に生きる人間が犠牲になってまで」

という問題に切り込んでいるのがこの作品だと明確になりました。
申し訳ないのですが、個人的にはベルの考え方に共感してしまう部分があり、のぞみ達のような人間が自分を賭してまで戦う必要はないのではないかと思ってしまいます。

ですが、タイトルの「キボウノチカラ」、これをラストで回収してくれることを願いつつ、あと2回を見届けようと思います。
総括すると、やっぱりこの作品とっても面白いです♪


あと3回なので、頑張って過去回記事貼りもやりきります(笑)。

我ながらマメな性格だなって思います。



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