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仮面ライダークウガが名作である理由を考えてみた

昨日、「名作が名作と呼ばれる所以の言語化」みたいな話が知人から持ち掛けられ、あまりに観念的ですぐに言葉が出てこない、という事案がありました。
早い話が、「仮面ライダークウガのどこが良いのか」ってことだったんですけどね。

後天的?な孤高の作品

クウガについて書いたのはこれだけで、買ったモノの事しか言ってないので内容に言及するのは意外にもこれが初です。

上の記事にもありますように後半を一日で一気見してしまった程にはのめり込めた作品で、名作と呼ばれ語り継がれるのは尤もだと思っています。しかしそう呼ばれるようになったのもここまでシリーズが続き、その原点としてより際立った特異性を持っていたから…という後天的な要素も大きいんですね。ここまで仮面ライダーが作品数を重ねながら、「クウガっぽい」ものは一つも無いんです。ゆえに「孤高」であると言えるのですが…。

ではその理由、要因は何か?と考えてみました。
それはもう色々あるので簡単には言えませんが、2つほど私が思っている特異性として挙げてみます。

①…圧倒的な「闇」の強さ

まず、敵の怖さが圧倒的なんですね。

どうでしょう。
こんな風貌の連中が、ただただ悦楽のために殺人を繰り返している訳です。ついでに彼らは、人間の姿で行動もしています。身近に感じられるのがより恐ろしくもありました。またその際、唇が黒かったりして現実にはメイクでもあえてやることはほぼ無いであろう毒々しい装いをしているんですね。

よく初期の平成仮面ライダーは「暗い、重い」と表現されます。
その暗さは、つまりは日常と地続きの恐怖感にあるのではないでしょうか。作品を重ねるにしたがって、ヒーローと怪人がそれ用の場所で戦っている…みたいな番組になっていますが、クウガはまずグロンギの殺人があって倒す理由になります。人が殺される、という許せない事情が、戦いを好まない主人公・五代雄介を突き動かしている。

極々シンプルなヒーロー物の構図ですが、実は近年失われているものでもあります。

②…クウガしかいない

一番大きい「孤高」の理由はこれだと思っています。
仮面ライダーが主役の一人しかいない作品は、クウガが最後なんですね。前項で挙げた「敵の怖さ」が凄いからこそ、唯一倒せる存在のクウガの存在感がまた、圧倒的な訳です。
複数ライダーの作品も面白いですし悪い訳ではないのですが、やはり番組タイトルが「仮面ライダー〇〇」と付いているなら、それを観たくて皆テレビの前に座るのでしょう。

他のライダーが出るのは商品販促という、大人の事情なのは分かっていますしクウガはアルティメットフォーム周りの話でスポンサーと一悶着あったとも聞きます。スポンサーあっての番組作りですからどちらが正しいとは一概には言えません。…が、昔から「職人と商人は相容れない」と言われるように、より良い作品を目指した結果として生まれたのがクウガであるならばそれが正解だったと言い切っても良いと考えます。

そして、これまでに無いヒーロー像を目指した五代雄介という主人公は、

クウガファン=五代ファン

と呼んでもよいほどに視聴者を惹きつける存在だったと言えます。
私も最初は、「フワフワしていて締まりのない主人公だな」と思いました。こんな性格の青年が、命懸けの戦いなんてよくやってるな…という違和感もあったくらいです。しかし有名な2話の変身で内に秘める思いの熱さがあることはご周知の通りですし、これもまた有名な41話の奈々ちゃんとの会話で、

奈々「さっきから五代さんの言ってること、綺麗事ばっかりやんか!」
五代「そうだよ。でも、だからこそ現実にしたいじゃない!本当は綺麗事が、いいんだもん!これでしかやり取りできないなんて、悲しすぎるから!」

夢想家、とも取れる言葉ですが実際にその手を血で汚しても来ている五代だからこそ、「綺麗事」の重みがあります。一度は戦いで命を落としてもいる五代です、これもまた唯一の変身者である彼にしか言えない、いや「真実に出来ない」言葉だなと感じました。

決して望んではいない、過酷な戦いに信頼できる仲間…警察の人々と共に立ち向かい、最後は誰も見ていない吹雪の中で文字通りの殺し合いを演じます。最終3話では支えてくれた人に別れを告げ、憎むべき狂気の殺人者を葬り、異国に旅立つ五代雄介。
ここまで愚直に「主人公」を描き切った作品は、これ以降の仮面ライダーにはありません。
クウガは、「クウガしかいなかった」から伝説になったのだと思います。

雨は、五代の心の中を表しています
ヒーローには皆憧れを抱きますが、48話を観て何を感じたか。
それが各々の「クウガ観」になっていると思います
ここで一度、一条さんを振り返る仕草に
オダギリ氏は「富永さんは分かってくれてる」と思ったとか
この座組が生み出す呼吸が、番組全体に息づいていたんですね


そんな感じの、個人的クウガ評でした。
ちなみに何度か言ってますが、初めて大人用ベルトを買ったのもクウガなので思い入れは人一倍ありますね。

個人的には、一時間の尺なら新作映画よりクウガの1,2話(特別編でも可)を上映した方が集客できるんじゃないかと思ったりします(笑)。

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