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鳩に襲われたことのある人がヒッチコックの『鳥』を観る


アルフレッド・ヒッチコックの『鳥』(原題:The Birds)といえば、言わずと知れたパニック映画の名作である。映画自体は、皆様ご存知の通り、わけもなく、様々な鳥の大群に人間が襲われる話である。

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劇場用ポスター

先日アマプラで何とはなしに観たのだが、呼び起こされたのは、鳩に襲われた記憶だった。

私は小さい頃、親戚のおじさんに連れられてお不動さんに行った時、その境内で鳩に襲われたことがある。
私が襲われた理由は明快。エサの豆を手にしていたからだ。
確か、一袋100円で鳩用のえさが売られていた。
おじさんに「鳩に餌やりしたい」とねだって買ってもらうと、その豆をまかずに、片手にのせて頭上に高く掲げたのだった。
すると、あっという間に何十羽もの鳩が飛んで集まって来た。
といっても、エサはそんなにたくさんないので、瞬く間になくなってしまう。でも残念ながら鳩にはそれが分からない。
だから「豆をもっとよこせ」と言わんばかりに鳩は私をぐるりと取り囲み、私をつつきだし、頭に止まって爪を立ててきたり、爪で腕をひっかいてきたりした。
正直、すごく怖かった。「もう無いよ」と言いながら泣いた気がする。
鳩のバサバサいう羽の間から、おじさんがあんぐりと口を開けてこちらを見ていた顔が、今でも忘れられない。
「鳩怖い」という感情とともにその時、その3歳児は「大人は案外助けてくれない」ということも同時に学んだ。

どうやってその鳩に囲まれた中から出たのかはすっかり記憶が抜け落ちてしまっているが、まあ、どうにかこうにかなったんだと思う。
ちなみにしばらく私の腕には鳩の爪による赤く細く伸びたひっかき傷が残った。幸い、化膿もしなかったし病気になることもなかった。

実は鳩に襲われたのはこの1回に留まらなかった。
勇敢な(?)、あるいは無謀な少女だった小学生の頃、再び鳩に餌やりをする。今度は八幡様で、である。
餌やりチャレンジはまたしても同様の結果になった。
手のひらに豆をのせた。何も学習していない。
その時は初詣で家族で行ったので、おじさんはいなかったけれど、両親が私が鳩に襲われる様を見ていた。
しかし、今回は助けが入った。やはり母は強しというべきか、鳩に囲まれる娘の元に来て豆を放せ、まけと指示を出した。そして私の手を引いてその鳩の集団から連れ出してくれた。父は見ているだけで、汚いからこっちに来るなと言っていた。

こういったことを『鳥』を観ながら思い出していたのだった。
もちろん、私の場合は鳩が私を襲うだけの理由があるのだけれども。
『鳥』のほうは明確な理由もなく、人間を襲うのだからやっぱりこっちの方が経験としては怖い。私たちは物事に理由を求めがちで、分からないことには不安を抱いたりもする。『鳥』は鳥が襲ってくるのも怖いけれど、「わけもなく」襲ってくるから尚更怖いのだろう。

『鳥』に出てくる鳥たちには知能が一定程度以上ありそうで、それもまた怖いし不気味だ。
眼球をつつかれて死んだ人とか…絶対目を狙っただろ、と思いながら観ていた。あと、鳥のせいでガソリンが垂れ流しになって火柱が上がったり…あんなことがあってたまるか。

それから、余談だが、私にとって鳩は因縁の相手である。
学生時代、某北国に住んでいた時のこと。
大学の寮の窓を開けると、鳩が部屋に入ってこようとしたことがあった。窓を閉めようにも、レールのところに止まってしまったので閉められない。
狭い部屋を飛び回られては困るので、枕をぶんぶん振り回して闘った。教科書で風を起こしたりもしてみた。しばらくしてようやく飛んでいった。あろうことか窓辺にフンを残して。

またしても某北国時代、駅前のベンチに座ってホワイトチョコレートを食べていたら、鳩が寄って来た。あいつら、豆ならカカオ豆でもいいのか(ちなみに、ホワイトチョコレートにはカカオマスが入っていないそうだ)。

そしてはたまた某北国で、朝、大学に向かって歩いていると、鳩が私の眉間めがけて低空飛行してきた。さすがに直前で鳩の方がよけるだろうと思いきや、その鳩は丸々太っていて高く飛べないらしく、そのまま突っ込んできたので、慌ててしゃがんでよけた。

『鳥』の感想というよりもむしろ鳩の話になってしまったが、鳩に襲われたことのあるという我が同志の方は、ぜひコメントくださいな。





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