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日記の練習

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#塚本邦雄

鹹湖(日記の練習)

鹹湖(日記の練習)

2023年7月18日(火)の練習

 夜、九州に住む友人から「鹹湖」の読み方を訊ねられる。「鹹水」という言葉もあるし「かんこ」ではないかと返すと、塚本邦雄の歌集『水葬物語』を読んでいたらでてきたという。

 遠い鹹湖の水のにほひを吸ひよせて裏側のしめりゐる銅版畫

 辞書を引くと鹹湖すなわち塩湖とある。第一回高村光太郎賞を受賞した詩人の会田綱雄にも『鹹湖』という詩集があるらしい。
 どういう評釈が

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見知らぬ乗客(日記の練習)

見知らぬ乗客(日記の練習)

2023年7月13日(木)の練習

 夜、職場のひとに電車が遅延していると教えられる。それなら遅延が解消される頃まで仕事をして帰ろうと思ったら、あっという間に終電の時間に。遅延のこともすっかり忘れていつものように会社を出て駅まで歩くと、電光掲示板の次発電車に発車予定時刻が表示されていないところでようやく思い出す。見立ては甘く、遅延は解消されないまま通常の倍の時間をかけてようやく乗り換えの駅に着いた

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夏の一冊が決まる(日記の練習)

夏の一冊が決まる(日記の練習)

2023年7月12日(水)の練習

 塚本邦雄『夏至遺文 トレドの葵』(河出文庫)を読み始める。
 毎年その夏を一緒に過ごす、読み終えてからも夏が終わるまでいつも携えて繰り返し頁をめくる「夏の一冊」をえらんでいて、その一冊を『夏至遺文 トレドの葵』に決めた。電車のなかで読み始めて、夏にうってつけの物語でも涼やかな読み心地でもないことを改めて確認して(そんなものを塚本邦雄の小説に求めはしないのだが)

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ふたりぼっちの歌集読書会(日記の練習)

ふたりぼっちの歌集読書会(日記の練習)

2023年7月10日(月)の練習

 新刊書店に行く。一週間以上も空くと、実にひさしぶりに感じられて胸が高鳴る。大濱普美子『猫の木のある庭』(河出文庫)、塚本邦雄『夏至遺文 トレドの葵』(河出文庫)、フィリップ・フォレスト『さりながら』(白水社)を購う。

 本来の目当ては『猫の木のある庭』と『さりながら』。今月刊行された『猫の木のある庭』は著者の第一作品集『たけこのぞう』(国書刊行会)の改題文庫

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