見出し画像

偏愛品⑤ 無印良品の炊飯器

私は今日はじめてこのシリーズにおいて、「今は持っていないもの」を紹介します。ただ話させて欲しいんです。彼と一緒に生きていた、その日々のことを。

(今回、画像は公式サイトよりお借りしております)


出会い

もう7年ほど前になるでしょうか。私は大学を出たのち、初めての会社勤めと一人暮らしをするにあたって家電を一式揃えなければならなくなったのですが、私ははじめから「無印良品の新生活応援の家電セットにしよう」と決め打っていました。値段がお手頃で、見た目も好きで、なにより無印良品への憧れが強かったからです。当時の私は新生活を無印良品で染めたくて、ベッドやら布団も一緒にまとめて購入しました。

そしてその「新生活応援家電セット」の中に、この炊飯器がいました。

画像1

彼は、持っていない人から見るとなかなかパンチがきいている炊飯器だと思います。(公式ページ)

・税込で7000円を切っている

・「美味しくない」というレビューも多い

・炊飯器のスペックの基本である「マイコン式かIH式か」の表記すらない

勘の良い人でなくとも「あ、これは地雷かもわからんね…」と思うのではないでしょうか。私も全然違うメーカーで炊飯器を選ぶなら、このスペックを見た時点でまず選ばないと思います。


でもこの炊飯器と7年以上、私は一緒に暮らしました。炊飯器としての彼にも満足していましたし、なにより心から愛しておりました。その理由とレビューを書くことで、私と彼との日々を記録をさせて頂き、そして彼との別れを選んだ自分への禊とさせて下さい。


どんな米が炊けるのか

購入を検討している方は、結局一番これが気になるのではないでしょうか。レビューで賛否両論あるだけに尚更ですよね。

結論から言うと、彼はとにかく素直な性格です。美味しいお米なら美味しく炊ける。品質の良くないお米ならあまり美味しくない。「美味しく炊けるか」と聞かれたら、「食べたい美味しさのグレードのお米を買えばいいと思うよ」がファイナルアンサーとなります。

給水を丁寧にしてあげるとふっくらする、などの炊飯の基本的なコツを大事にしてあげるともちろんそれにも応えてくれます。良くも悪くも本当に等身大のひとです。


彼のいいところ

画像2

1.見た目がよい

世の中の炊飯器の大半は、まあまあなお金を出してもちょっと見た目がダサいことが多いと思っています。炊飯器選びにおいて「見た目の時点でめちゃくちゃ愛せる」こと自体が奇跡のようなことではないでしょうか?

彼は三合炊き炊飯器の中でも、かなりコンパクトです。実物を見るとすぐにわかると思いますが、機能に対して必要なだけの大きさで自己主張が強くありません。

そして艶消しマットな質感の白のボディが大変美しいです。そのへんの炊飯器のテラテラとした安っぽいプラスチックの質感とは比べものにならない、その静謐な佇まいはまるでオブジェのようで惚れ惚れします。(※個人の感想です)


2.タフな耐久

私は基本的にご飯は保存するより炊きたて派なので、この7年で幾度となく炊飯をしました。また容赦なく内釜でじゃぶじゃぶお米を研いでおりました。

しかし、「そろそろ買い替え時だな」と思ったことはただの一度もありません。性能が落ちるとか釜に傷がついてこびりつくとか、そういった経年劣化とは無縁で生活していました。

最低限のお手入れはしていましたが、丁重に扱っていたというほどでもないので、価格に対するこの耐久性は充分すぎると思います。


3.色んな意味で軽やかであり、炊飯が苦にならない

三合炊きサイズということもありますが、こちらの内釜は大変軽いです。親指と人差し指でつまんでヒョイと持ち上げられるくらいなので、炊飯における初動がとっても楽です。

そして通常炊飯ボタンを押してきっちり1時間、早炊で45分の時点で「食べ時」が来ます。(ピーッと鳴ってから15分置いておくのが大事なポイントです)この「ボタンを押してからぴったり1時間」のキリのよさが自分には気持ち良く、料理や細々した家事、または作業をする目安などのリズムを作ってくれます。

画像3

そしてなにより「自分、炊飯器です!」というような存在としての圧がなく、必要なだけのスペースで生活に軽やかに溶け込むミニマルさがあります。これは自分にとって本当に大きいことなのです。

「ふう、米炊くかぁ…」というタスク感ではなく、「ま、米でも炊きますか」くらいの気軽さでスッと手に取って、必要な分を研いでボタンを押す。手と生活の中に「炊飯」が軽やかに入ってくれる。料理という家事ではなく、生活そのものに馴染んでくれるようなところが、私は一番気に入って使っていました。そして家電の中でも最も愛していました。



なぜ手放したのか

離婚を機に、家電を元夫に全部渡したからです。

(詳しくはこちら)

なるべく荷物を減らしたいという事情もありましたので、「大きい家電は全部あげるよ、新しくはないけど…」という感じでざっくりと決めまして、その中に炊飯器も含まれていたのでした。


そして最近しばらく新しい炊飯器を探していたのですが、どうしても以前のものよりも「愛せそう」なものを見つけることができず、なかなかしょぼくれておりました。でももう一度同じ炊飯器を買いたいかと問われると、複雑な気持ちになるのです。

だって私が愛していたのは、『彼』だから。

同じメーカーの同じ型でも、それは(もしかしたら改良されたりもした)似ているだけの個体で、私が愛した彼ではないのです。何度調整しても時計が合わなくて、内釜の接地面の跡がとれなくて、私がうっかりつけてしまった傷のある、あの彼とはもう会うことができないのです。無印良品で炊飯器を買ったとしても、それをまざまざと思い知るだけなのでしょう…。(偏愛が過ぎてこじらせてしまった個人の感想です)


次の炊飯器は…

私が間借りさせてもらっている友人は、今はお鍋でお米を炊いています。

彼女は偏愛品を失って路頭に迷った私に「炊飯器、手放すつもりだったから、よかったらあげるよ」と言ってくれました。少し大きい5合炊き。生まれたのは私が愛した炊飯器と同じくらいか、少し先輩くらいかしら。

「この子もおばあちゃんだからいつ壊れるかもわからないけど、それでもよければ…」と控えめに言っていましたが、私は大好きな友人から譲ってもらったものなら、いつか自分で選んで炊飯器を買う時まで慈しんで一緒に暮らせるんじゃないかと、素直にそう思えたのでした。



炊飯器、たかが炊飯器、されど炊飯器…。

お米が好きな人間なら、それは暮らしの相棒と言っても過言ではない家電でしょう。「これでいいか」というくらいの気持ちで選べる家電もありますが、私は炊飯器のことは、「できることなら愛して暮らしていたい」と、心からそう思っています。

もしそんな炊飯器に出会わずにこのままいるのだとしたら…次はお米を美味しく炊けるお鍋を探すのかもしれません。



ありがとう、無印良品の炊飯器。本当にありがとう。心から愛してた。

どんなに過去になっても、君と暮らした日々があったこと、私ずっと忘れないで生きていくよ。



(この世で一番美味しい米はつや姫だと思っている)だちこ

この記事が参加している募集

最後まで読んで頂きありがとうございます!頂いたサポートはだちこがnoteを書きながら食べるおやつなど、活動の励みにいたします(*´ω`*)