見出し画像

「PICK UP PLAYGROUND」 ピックアップゲームの魅力はここにある。

11月18日(土)、代々木公園バスケットコートには何やらいつも以上に人が集まっていた。快晴に恵まれたこの日、そこにいたのは老若男女を問わない約200人のバスケを愛する人々だった。

この日ストリートボールの聖地である代々木公園バスケットコートで行われていたのは「PICK UP PLAYGROUND」。

画像1

このイベントはピックアップゲームを行い、終わった後は参加者全員でゴミ拾いをする、バスケのピックアップとゴミ拾いのピックアップをかけたもの。ピックアップゲームは代々木公園バスケットコートにある二つのコートでソフト(誰でも&総当たり戦)とハード(上級者&トーナメント戦勝ち上がり形式)に分かれて行われた。

公園で行われるストリートボールは靴を履いて、ボールを持っていけば誰でもコートでバスケをすることが出来る。名前も年齢も仕事も知らない誰かとチームを組んで、大好きなバスケを共有して同じ時間を過ごし、その瞬間は誰もが仲間になれる。

なんて魅力的なんだろう。
なんて夢があるのだろう。

しかし一つ問題がある。

前編でも書いたように日本人はその仲間になるためのコミュニケーション
「まーぜて!」が苦手なのだ。

無論、私もその「まーぜて!」が苦手なひとりである。

そこで今回、この問題解決の糸口を見つけるべく、このイベントの参加者に今回のイベントの感想とピックアップの魅力、そしてここでバスケをするようになったきっかけを取材してきた。

Maoさん(YOYOGI PARK BALLERS)

画像2

――今日のイベント、どうでしたか?
僕らは日頃からここでピックアップをやっているんですけど最近はほぼメンツが変わらない中でやっていたので、こういう企画で色んな人とバスケが出来てめちゃくちゃ刺激的でした。
――ピックアップゲームの魅力とは?
部活だと良くも悪くも決められたことを遂行する事のプライオリティが高いと思いますが、ここは「いかに自分を表現できるか」「自分がやりたいバスケを皆に認めてもらえるか」自己主張をするきっかけになる場だと思います。大人になっていくに連れてコミュニケーション能力が大事になってくると思うんです。ここだと積極的にコミュニケーション図らないとなかなかゲームにも入れてもらえない。そういう部分でコミュニケーション能力をあげていけるところが魅力だと思います。
――ピックアップに参加するようになったきっかけは?
僕は今23歳で、初めての参加は10年前でした。ジョーダンコートという渋谷のコートがあったんですけどそこが夕方5時までしか使えなくて。プラスアルファでもう少しバスケしたいなと思ってた時にここを知り合いに紹介してもらって来たんです。13歳の時に初めて代々木公園に来た時、たまたまALLDAY(国内最大級の5on5ストリートボールトーナメント)をやっていてコートが使えなかったので試合を見ていました。その試合を見て僕はいつかここに立ちたい、この舞台で活躍したいと思ったんです。それが代々木に来るようになったきっかけです。
――初めて参加するときは緊張しましたか?
初めては中学生の時で今よりももっとインターナショナルだったんです。外国人の人がいっぱいいました。今よりも実力主義みたいなところもあって、最初「僕やりたいです」って言ったんですが飛ばされて。「キッズはもっとできるようになってから来い。あっち(ソフト)のコートでやってこい」と言われたんです。公共の場でみんなが平等に使えなきゃっていうのもわかるんですけど俺はそれを言われて「やべえ、もっとやれるようにならなきゃ、なりたいな」って思いました。

画像3

――バスケをやっている人で刺激をもらった人は?
単純にバスケットボールを上手くなりたいと思うきっかけをくれたのは僕のチームメイトだった、現宇都宮ブレックスのテーブス海選手。高校の同期で一緒にプレイしていました。僕中学校が全然強くなかったのでレベルの高いところでやりたいと思って京北高校に進学したんですけど、その時の同期にテーブスがいて。やっぱり一番インパクトが強かったです。
ストリートで一番刺激をもらったのはUNDERDOGっていうチームとP.S.Yっていうチーム。そのチームがジョーダンコートに撮影で来ていたんです。初めてストリートボールクルーって言われる人たちを目の当たりにした時、それが一番僕の中では衝撃的な出会いでした。
――ストリートボールやピックアップがもっと広まればいいなと思いますか?
こんなにハングリーに5対5ができる環境は日本ではやっぱりここが一番なのかなと僕は思います。僕たちは代々木パークボーラーズって呼ばれてるんですけどこういう場がどんどん出来て、他の公園でもボーラーたちが根付いて、日本のバスケット全体がもっと活性化していったらいいなと思います。
――全然バスケをした事がない人が来てもウェルカムですか?
はいもちろん!それこそ年齢も性別も関係ないのは事実なんですが、自分で「やりたいです」って言わないとできない場所なのでどんどん声をかけてほしいです。例えばバスケが下手でもやる気があって「俺はやる」って自己主張がある人だったら全然できると思うし、逆に上手くても自分を出せないって感じだとここでは苦労するのかなって思います。

磯さん(代々木バスケットコートに通う50代男性)

画像4

――ストリートボールをはじめたきっかけは?
52歳の時に、それまで大きな病気をしてなかったにもかかわらずGIST(ジスト)という10万人に1人か2人が発症するガンの病気に突然かかり、6年前(2015年)に手術をして腫瘍を摘出したんです。腫瘍って普通は5-10 cmくらいなんですが、僕の場合は30 cm×30 cmで4 kgくらいのものが胃と繋がってて、一緒に胃を半分くらい摘出しました。それのリハビリで代々木公園を歩いていた時にストリートボールに出会いました。次の日にはボールを買って、朝6時くらいから1人で始めたんです。だけど近くから打ってもシュートが全然入らなくて、届かなくて(笑)。それから毎日通うようになりました。
――知り合いは増えましたか?
そうですね。先ほど取材されていたMaoさんもここで知り合った一人です。
Maoさんは有名なので、ずっと名前だけは知っていました。僕は毎日来ていたので、どの人がMaoさんかな、と観察していたんですね。すると、いつもジョーダンの赤いリュックを背負って、自転車で毎日来ている人がいる。きっとこの人に間違いないと思って思い切きって「Maoさんですか?」と話しかけたのが彼と知り合ったきっかけです。「なんで僕のこと知っているんですか!?」と驚かれました(笑)。
他の人には「バスケ初心者なんでよかったら1対1でディフェンスだけさせてくれませんか」と声をかけてやらせてもらってました。そうすると大体の人が「いいですよ」って言ってくれるんです。毎日来てると「昨日はありがとうございます」って言ってくれたりとかして。そうしてるうちに「オフェンスもやってください」って言われるようになったんです。朝の8時くらいになるとどんどん人が集まってきてゲームが自然発生するんです!それに「一緒にやりましょうよ」って言って来てくれて。シュート入れると「おじさーん!!」とか言ってすごい盛り上がってくれるんです!それでどんどん嬉しくなっていって通うようになりました。
――ストリートボールの魅力ってなんだと思いますか?
普段仕事だと気を使ったり言いたいことを我慢したりがあると思うんですけど、ここはもうバスケットをやりたくないのかやりたいのか、やるんだったらゲームをやりたいのかやりたくないのか、やりたいと言えば誰でもウェルカムなんですよ。レベルはあるので自分のレベルに応じてやりたいと言えば、じゃあ次のゲームでやりましょうよって誰かが言ってくれる。終わったらナイスゲーム!ってグータッチをしてくれる。それでまた会うとこの前はありがとうって会話が出来る。名前も知らない、なんの仕事をしているかも知らない人ばかりだけど、例えばミッキーのTシャツを着ていたらその人はその日は「ミッキー!ほら!はい!パスパス!」ってそういう感じで呼び合える。そういうのがとても素敵だと思います。

ユッケさん(ボーラー)

画像5

――今日のイベント、どうでしたか?
バスケに2時間集中して、そのあとみんなでゴミ拾いっていう企画を理解して来ているので団結してバスケに集中して、そのあとゴミ拾いに流れる感じがすごく素敵な企画だなと思いました。
――ストリートボールを始めたきっかけは?
元々はチームにも入っていないし、どことか決めずに家の近くの公園に行ったり、友達とどこかの公園に行ったりでした。日本では代々木コートが一番盛んでバチバチなストリートコートだと聞いていたのでいつか行きたいなと思っていて、三年くらい前に代々木に来始めました。一度来てからめちゃくちゃ面白いと思って!オールコートでやるコートが日本にはあまりないので、そこからハマっちゃいました。
――ピックアップに初めて入る時緊張しました?
あんまりしませんでした。YouTubeをやっていて有難い事に知ってくれている人が多かったので僕は入りやすかったかなと思います。普通は結構こわいというか入りづらい部分は正直あると思います。

画像6

――YouTubeはどんな事をやっていましたか?
YouTubeでは1on1をやったりしていました。たまにBリーガーも来てましたよ!テーブス海選手とか。よく来ていたので一緒にバスケしていました。
――ストリートボールの魅力とは?
体育館と違って外は風が吹いたり、土や落ち葉で足元が滑ったりするんです。だけどこのコートでやっているボーラーはバイブスがすごくて、そんなこと気にしないです。プロの選手がオフシーズンに遊びに来たりすると、超カモられるし、プロに勝つ事もあって!そういう面ですごくタフだと思っています。みんなが強い気持ちを持っているのがストリートボールの魅力かなと思います。
――私もさっきソフトの方で参加したんですけど体育館と全然感覚違って!地面がめちゃくちゃ滑って全然できなかったです(笑)。
そうなんですよね!全然入らないとか滑るとか、そういうのが多いと思います(笑)。

画像7

――ここでの出会いや繋がりは多いですか?
多いですね。みんな結局バスケが好きなのでそれで結局解決しちゃうし、盛り上がっていくし、好きだからなんでもしゃべれちゃうし、結局バスケの話してるし!みたいな感じです。
――私からしたらコートに入るまでに勇気がいるなと思います。気になるけど入っていいのかわからない。そういう入りたいけど迷ってる、みたいな人たちの背中を押すメッセージを是非。
シンプルに代々木のコートにいる人の誰かに声かけたら教えてくれます!どうやったらゲームに入れるかとか。基本的にネクストって言って自分でコールして順番を待つんです。それで5人集めて勝ち残りで次勝ったチームとやらせてもらえるっていうのがあるから、それを誰かに声かけたらちゃんと教えてくれる。
声かけて「君若いからダメだよ」はないので安心して下さい。みんな大人だし、たまにすげえガチでバスケやったり喧嘩しちゃったりもあるけど喋ったらいい人たちばかりです。最初はすごく勇気が必要だと思うんですけど一度声をかけてもらったらちゃんとみんな教えてくれると思います。僕らもみんな最初はそんな感じで声をかけて始まったので。是非いつでも来てください!

一見、踏み入れるのが難しそうなストリートボールだが、最初の一言「まーぜて!」の壁を乗り越えると性別も年齢も国籍をも超えて、広がる景色と世界がここ、代々木バスケットコートにはあった。

そしてここにいる人たちは心からバスケが好きで熱くて、温かい人たちばかりだった。

画像8

文=中﨑絵梨奈

#ストリートボール #バスケ #バスケットボール #ピックアップ #ピックアップゲーム #ボーラー #代々木公園 #コミュニケーション #はじめの一歩 #ダブドリ #中崎絵梨奈 #インタビュー





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?