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『ダブドリ Vol.1』インタビュー01 ロバート・サクレ(サンロッカーズ渋谷)

2017年11月30日刊行の『ダブドリ Vol.1』(株式会社ダブドリ:旧旺史社)より、ロバート・サクレ選手のインタビューの冒頭部分を無料公開いたします。なお、所属等は刊行時のものです。

日本については良いことばかり聞いていた。とにかくプレイしたかったから、それを信じて移籍話に乗ったんだ。昨シーズンは最高の時間だったよ。

大西 シーズン直前の忙しい時期に、時間を設けていただきありがとうございます。
サクレ 問題ないよ。
大西 まずは、新しいお子さんの誕生おめでとうございます!
サクレ ありがとう、ありがとう!
大西 彼の名前は何ですか?
サクレ サンタナだよ、有名なギタリスト(カルロス・サンタナ)と同じだ。
大西 一度アメリカに戻ったんですよね?
サクレ ああ、昨日戻ってきたばかりなんだ。行って戻って、赤ちゃんが無事生まれるのを確認して、今はまたこうしてこいつら(チームメイト)と一緒だ。
大西 あなたのインスタグラムを見たら、バッシュの写真が上がっていて、そこに奥さんが「私は頑張って出産しようとしているのに、横で旦那が自分の足の写真なんか撮ってる」ってコメントしていたのを見て爆笑したんですよ。
サクレ そうそう(笑)。
大西 では今回は、ご家族は日本に来られていないのですね? 先日はご家族で来日されていましたが。
サクレ ああ、今回は来てないよ。今は3人も子供がいて手一杯だからね。向こうにいるほうが、周りからのサポートがあって楽なんだ。でも家族は日本のことが大好きだよ。前回来日したときはとっても楽しんでいた。息子は日本語を覚え始めていたし、練習にも遊びに来た。食事もとても気に入っていたね。
大西 日本での1人の生活は大変じゃないですか?
サクレ いやあ、大丈夫だよ。家族は理解してくれているしね。妻の最高なところは、僕の仕事に関して文句を言うことは絶対になくて、僕にストレスを与えないことなんだ。子供達の面倒もしっかり見てくれて、僕の仕事をとても楽にしてくれるんだよ。
大西 今はどちらにお住まいなのですか?
サクレ ワシントン州のスポケーン市だよ。
大西 ということはバンクーバーにも結構近いですね。
サクレ そうだね、とても近いよ。車で6時間位かな。飛行機だと45分位。バンクーバーは僕にとって特別な場所なんだ。
僕はルイジアナ州で生まれて、それから母とバンクーバーに引っ越した。バンクーバーは7歳から高校の終わりまでいたね。そこからゴンザガ大学に行った。高校でバンクーバーにいたのは、人生で最高な時のひとつだね。あの街は大好きだ、素晴らしい街なんだよ。僕のバスケットボールキャリア、人生を通してずっとサポートしてきてくれている。
大西 高校の時のチーム、ハンズワース・ロイヤルズでかなり熱い試合をやっていたという記事を読みました。
サクレ 面白いのは三遠ネオフェニックスでプレイしているスコット・モリソンとは高校時代に対戦していたんだ。僕が9年生の時に、彼は12年生だった。だからこっちで対戦する時もちょっとしたらライバル関係なんだよ。
大西 彼とは親しいのですか?
サクレ とても親しいよ。この夏もバンクーバーで会って話したよ。彼の今の状況がとても嬉しいし、彼のことは応援しているよ。
大西 トラッシュトークも多そうですね。
サクレ しょっちゅうだよ、しょっちゅう(笑)。
大西 そこからゴンザガ大へ進学し、5年間プレイしたんですよね?
サクレ そう、1年怪我でレッドシャツだったから5年間だね。今もキャンパスから20分位のところに住んでるんだ。ゴンザガのあるスポケーンが今のホームだ。夏にあそこに戻るのが大好きなんだよ。愛だね、愛。
大西 アイラ・ブラウン選手ともプレイしていたのですよね?
サクレ そう、最初の2年間だね。
大西 他にもこっちでプレイしている選手がいましたよね?
サクレ (ジョシュ)ハイトベルトとスパングラーだね、ライアン・スパングラー。
大西 B.LEAGUEはゴンザガ出身の選手が多いですね!
サクレ 間違いないね(笑)。あとアブドゥーラ・クウソーもだ。彼は今香川でプレイしている。あとドリュー・バーラム(15年に大分でプレイ)、彼は僕が卒業した翌年にゴンザガに来たんだ。だからこっちでプレイしている、知っている選手はたくさんいるんだよ。
大西 日本に来るということで、そのコネクションはやはり大きかったですか?
サクレ 日本については良いことばかり聞いていたね。昨シーズンはペリカンズのトレーニングキャンプで怪我をしちゃったから、とにかくプレイしたかったんだ。日本については悪いことは何も聞かなかったから、それを信じて移籍話に乗ってみたんだよ。どこまで行けるかなってね。そして昨シーズンはすべてを楽しんだ。コーチや選手ととても楽しい時間を過ごし、これ以上ない状況だったよ。だからそこからはもう悩む必要もなかった。
大西 昨年B.LEAGUEでプレイした外国籍選手の多くは、ジョシュ・チルドレス選手のように1年だけプレイしていなくなってしまいましたが、あなたは最初から2年目もプレイするつもりでいたのですか?
サクレ 何チームかとワークアウトは行なったのだけど、心の片隅には常にサンロッカーズがあったよ。ここが素晴らしい状況なのはわかっていたし、昨年とっても楽しかったんだ。素晴らしいバスケットボールだったからね、戻ってくることに何も心配はなかったよ。食事も最高だし、人もとても親切で、最高な環境だ。
大西 今年はコーチが変わって、選手も少し入れ替わりましたが、どういった変化を感じていますか?
サクレ 当然新しいプレイはあって、意識も昨年から変わっているね。もっとディフェンシブなチームになりたいと思っている。同時に、今年加入した選手たちや、戻ってきた選手たちがみんなステップアップしてチームを強くしてくれている。彼らと一緒に新しいシーズンを迎えられることがとても楽しみだよ。みんなハードワーカーだ。そしてコーチのジェフも、僕たちの最高なレベルを引き出してくれる。毎日上手くなるために頑張っているよ。選手たちは全力で練習していて、とてもいい環境だ。
大西 プレイのスタイルはだいぶ変わっているのですか?
サクレ まだあまり試合をやってないから何とも言えないけど、そうでもないかな。新しいプレイはあるけど、そこまで変わってないよ。もっと積極的にいこうというのはあるけど、大幅な変化というのはないね。
大西 アーリーカップを何試合か見ました。昨年よりもボールがとても回っているように感じましたが。
サクレ そうだね、琉球と仙台からいいガードが加入したから。今シーズン彼らとプレイできるのがとても楽しみだよ。
大西 昨年はチームに入ってからしばらくシュート成功率があまり良くない時期を経てから、徐々に上がって行きました。やはり調整期間みたいなものだったのですか?
サクレ 調整期間はあったね。どうフィットできるかを見つける必要があった。僕が来る前のこのチームはスリーポイントシューティングチームだったから、自分がどうボールをもらうか、どこでボールをもらうかを考える必要があったんだ。もう彼らとは半シーズン一緒にプレイしたからね、今年はみんな僕がどこで欲しがっているかをわかっている。僕が何が好きかみんな理解していて、逆に僕もみんなが何が好きかを理解している。最初はやはり調整が必要だったけど、もうその心配はないね。
大西 そしてチャンピオンシップでは素晴らしい活躍でしたね。川崎を相手にシュート成功率は60~70%を記録していました。
サクレ とにかく勝とうとしていたんだよ。チャンピオンシップに出られることがまず嬉しかったんだ。長いことチャンピオンシップという環境には出ていなかったからね。とてもいい経験だったよ。とにかくチームが勝つために何でもいいから力になりたいと思っていたんだ。でも残念ながら僕たちは負けてしまった。相手の川崎はとてもいいシリーズをプレイしたからね、そこは相手を褒め称えるべきだ。でも今年も僕たちは、またチャンピオンシップに出られるポジションにいると思うよ。
大西 チャンピオンシップではスリーまで決めていました。
サクレ 何でもやるよ! チームが勝つためならね。何でもいい、とにかく本当に勝ちたかったんだ。チームメイトの応援からスリーを打つことまで、必要なことなら何でもやるさ。とにかく勝ちたい。

バスケットボールのレベルは車の運転に似ている。初めて運転する時は家の周りを走り、プロ入りするのは高速道路を走るような感覚なんだ。

大西 少しNBAの話をしましょう。あなたは全体60位で指名されています。これは考えてみればとてつもないことですよね。
何故なら60位のような下位で指名された選手は、ほとんどリーグに残ることはできない。最近ではおそらく、アイザイア・トーマス選手とあなた位じゃないですかね。でもあなたはルーキーイヤーでしっかりプレイし、数試合先発出場までして、レイカーズとの3年契約を勝ち取りました。それは凄いことだと思います。大学からNBAへの転換というのは難しいものでしたか? レイカーズのような伝統のあるチームだと、勝たなければならないというプレッシャーがとても強いですよね?
サクレ 僕がいつも言っていることがあるんだけど、バスケットボールのレベルは「車の運転」に似ているんだ。車を初めて運転するときは、家の周りの道をぐるぐる走るよね。次のレベルでは大きな街に行ってみる。次は高速道路だ。初めて高速で運転したときを思い出してみると、周りはみんなもの凄いスピードだよね。まさにそれがバスケットでいえばプロの世界と似ているんだ。慣れてくると居心地も良くなって問題なくなるんだけど、最初は「うわあ、凄い速さだな!」って感じなんだよ。
レイカーズではそこまでクレイジーだとは思わなかったけど、特にあの年は、ドワイト(ハワード)、パウ(ガソル)、(スティーブ)ナッシュ、そしてコービー(ブライアント)がいたこともあって、勝利へのプレッシャーはとても強かった。でも、素晴らしいコーチ陣がシーズンを通して僕の成長を手助けしてくれた。キャリアを通してもね。残念ながら最後まで勝つことができず、期待していた結果にはつながらなかったけど、LAでの4年間は本当に素晴らしくてかけがえのないものだったよ。
大西 リーグに溶け込む手助けをしてくれたベテラン選手はいましたか?
サクレ いたよ、ルーキーイヤーは特にね。ベテランのアントワン・ジェイミソン。あとは同じカナダ出身のスティーブ・ナッシュもいろいろと助けてくれたね。あと従兄弟のクリス・デュホン。
大西 従兄弟?!
サクレ そうなんだよ、だから完璧だったね。彼と同じチームに居れることは本当に嬉しかったよ。なんせ従兄弟だからね、いつでもフランクに話をすることができた。
大西 それは知りませんでした。リーグ入りする前から親しかったのですか?
サクレ いや、チームで一緒になるまではそこまで親密という感じでもなかった。大学の時に彼がデューク大のサイン入りグッズなんかを送ってくれていたのは覚えているけどね。でもやっぱりレイカーズで一緒になってからかな、とても親しくなったのは。
大西 レイカーズではドワイト・ハワード選手やパウ・ガソル選手などの素晴らしいビッグマンと一緒にプレイしたわけですが、彼らからは何を学びましたか?
サクレ まず準備をするということだね。そして一緒にプレイすることで、自分が上手くなるために必要な細かい要素を得ることができた。説明するのが難しいのだけど、一緒にプレイしていると色々な癖やテクニックを学ぶことができるんだ。彼らからは本当にたくさん学んだね。一緒にプレイできてとても幸運だったよ。クリス・ケイマンなんかも素晴らしいスコアラーだった。とてもクールだったね。
大西 4年間で一番好きだったチームメイトは誰ですか?
サクレ デュホンかな。本当に楽しかったんだよ、特に1年目だったこともあって、従兄弟と一緒にプレイできるのはプライスレスだった。
大西 NBAで一番の思い出は何ですか?
サクレ おそらくドラフトされたことかな。それか、1試合目だね。プレシーズン戦で、ドワイトが怪我したから僕が先発になったんだ。コートに立って周りを見渡すと、片側にはナッシュとメッタ(ワールドピース)がいて、もう片側にはコービーとパウがいて、僕がジャンプボールをしようとしていたんだ。信じられないような瞬間だったことを覚えているよ。あの感覚は説明できないな。周りにスーパースターがいて、自分が先発出場しようとしていたんだ。あれはキャリアにおいて最も大きな瞬間のひとつだったね。
大西 バンクーバーで育ったということは、グリズリーズファンだったわけですよね?
サクレ 間違いないね!
大西 憧れの選手は誰だったのですか?
サクレ マイク・ビビー、マイケル・ディッカーソン、ストロマイル・スウィフト、シャリーフ・アブドゥル・ラヒーム、彼らだよ。
大西 偉大なるグリズリーズチームですね(笑)。
サクレ 間違いない、間違いない。
大柴 僕も大のグリズリーズファンなんですよ。
サクレ 最高だな!
大西 今は好きなチームってあるのですか? やはりレイカーズ?
サクレ いや、やっぱり一度リーグに入ると、ひとつチームを選ぶのは難しくなるね。好きな選手ってのはいるけど、好きなチームってのは選ぶのが難しいな。自分が戦ってきた敵だったわけだからね、そういう感覚だよ。
大西 まだNBAを追ってはいますか?
サクレ ああ、追ってはいるよ。特に今はたくさんのスーパーチームが結成されていてクレイジーだね。追ってはいるけど、時間の都合もあって昔ほど観ることはできていないかな。
大西 オフの日は何を?
サクレ 渋谷に行ったり、できるだけ東京を観光しようとしているね。世界でも指折りの都市だから。日本にいる間はできるだけ日本を楽しもうと思っているんだ。できるだけ吸収したい。なるべくしょっちゅう東京には行かないようにしているんだけど、家で1日中じっとしているっていうのができないし、つまらないからね。でも1日中出歩かないようにもしているから、バランスを取ろうとしている。東京に行ったり、たまに近所をぶらぶらしたり。
大西 あなたのあの強烈な自転車の写真を見ましたけど、あれは実際、乗っているんですか?
サクレ 乗ってるよ! ブレーキを特注する必要があったんだ。最初ペダルブレーキが違法だってこと知らなくてね、ハンドルブレーキをあとから注文しないといけなかった。
大西 すごく周りから見られるんじゃないですか?
サクレ しょっちゅうだよ! 車に乗っている人まで徐行したり停まって見てきたりするね。
大西 あなたのインスタグラムは面白いから大好きなんですよ。
サクレ ありがとう(笑)。楽しんでやってるよ。人生は短いから、どんな状況でも最大限楽しもうと思っているよ。自分の経験をできるだけファンと分かち合おうと思っている。
大西 どうも食べるのが大好きなようですね。
サクレ うん、大好きだね。
大西 どこか行きつけのお店は見つけましたか?
サクレ 実はね、日本にこんなにインドカレー屋さんがあるとは思っていなかったんだ。美味しい店がたくさんあるね! 日本って国を想像するときに、最後に考えるようなことだったよ。家の近くにインド料理屋があってね、そこでよくカレーとチーズナンを食べてるよ。そこが行きつけかな。
大西 日本食はどうですか?
サクレ 最高だよ! ココカレーハウス(CoCo壱番屋)!
一同 (爆笑)。
大西 カレーが好きなことはわかりました。
サクレ カレーが大好きなんだよ。こっち来るまではそうでもなかったんだけどね。あとはラーメン。昨日の夜もラーメンを食べたよ。とにかく前に出してくれれば何でもトライするのが僕さ。唯一苦手なのが納豆。
大西 ああ、納豆(笑)。
サクレ 辛子があれば少しは、少しはね。
大柴 アメリカ人はみんな納豆が嫌いです。
サクレ あの食感なんだよね。でもだいぶ良くはなってきたよ。試合前に食べるようにしてるんだ。
大西 え、食べてるんですか?
サクレ 食べようとしているよ。
大西 健康には良いんですよ。
サクレ そう聞いてるよ。そして今は緑茶にはまってるんだ。いつも緑茶を飲んでいる。日本人のチームメイトの1人には、いつも緑茶を飲んでるからお前は老人だって言われたよ。
一同 (笑)。
大西 チームメイトとは良く出かけたりするのですか?
サクレ なるべくそうするようにしているよ。チームの人間とはできるだけ一緒にいようとしている。そうすることがコート上でもコート外でも関係性を良くしてくれると思うんだ。仲間意識だね。コート外でも一緒にいることで、コート上のケミストリーがより良くなるんだ。だからチームの人間とは全員話すようにしている。夜一緒に食事できたりするなら、いつでも大歓迎だ。
大西 確かにとても仲の良いチームに見えます。89年生まれの選手も多いですしね。
サクレ とても良いよ、とても仲が良い。全員お互いと話し合って、一緒に付き合っている。素晴らしいチームメイトに囲まれた僕はとても幸運だよ。
大西 何か秘密にしているネタとか教えてもらえませんか?
サクレ いや、それは秘密だからダメだよ(笑)。でもとにかくこのチームの一員であることがとても嬉しい。誰と一緒にやっていても、上から下までみんなとてもポジティブなんだ。

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このあとも、チャンピオンシップへの考え方や、同じゴンザガ大学出身の八村塁選手との交流エピソードなどたっぷり語っていただきました。続きは本書をご覧ください。

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