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あのコートで見えた景色 ―秋田ノーザンハピネッツの未来予想図― (1)

チャンピオンシップのコートに辿り着く過程で、そしてそのコートの上で彼らには何が見え、何を感じたのか。そこにはきっと秋田だからこそ辿り着けた理由がある。今回、チャンピオンシップを目指した今シーズンの秋田ノーザンハピネッツを長谷川暢選手と中山拓哉選手とともに振り返る。初回は、長谷川暢選手にチャンピオンシップに辿り着くまでの話を聞いた。

それが自分の良さだと辿り着きました。

宮本 今シーズンは長谷川選手にとってどんなシーズンでしたか?
長谷川 昨シーズンは2番ポジションでプレータイムを勝ち取れた中で、顕蔵さん(前田顕蔵HC)などと相談しながら、今シーズンは「このサイズならポイントガードができた方がいいよね」とスタートしました。伊藤(駿)選手の怪我などもあり、天皇杯(21年10月30日からの3次ラウンド)の時に顕蔵さんが「どんなにミスしても出し続けるから、やってみないか?」と言ってくれたことが大きなきっかけになりました。
宮本 天皇杯でのスタメン起用の前にそんなやりとりがあったんですね。
長谷川 はい。結果的にシーズンを通してプレータイムを得て、チームの力になることができて、自分の良さを出せた感触もすごくありました。ポイントガードというポジションですごく充実したシーズンになりました。
宮本 ポイントガードをする上で、まずどんなことを意識しましたか?
長谷川 まずはゲームに出られればなんでもいいというスタンスから入りました。その中でポイントガードとして意識したのは、自分らしくゲームをコントロールすることですね。チーム内の他のポイントガードとは違う形で、このチームに貢献できることは何か。結局は「自分らしさを出す」というところに辿り着いたんですけど、それはすごく意識しました。
宮本 その自分らしさというのはやっぱりディフェンスですか?
長谷川 そうですね。まずはディフェンスで前線からプレッシャーをかけること、オフェンスでは思いっきりプレーをすることです。少し抽象的なのですが、スコアをするとかではなくて思いっきり縦にドライブをすることや、迷わずに3ポイントを打つことですね。シンプルですけど、それが自分の良さだとわかりました。
宮本 そこから「いけるな」みたいな感触を得た試合などはあったんですか?
長谷川 ゲームごとに自信を得られたんですけど、強いてあげるなら信州ブレイブウォリアーズ戦のGAME2(21年11月7日)ですかね? 熊谷航選手(同じ96年世代)とマッチアップをしたんですが、GAME1はボロ負けというか……。そこからGAME2では僕が17得点でキャリアハイだったと思うんですけど、(その後11月13日の北海道戦で19得点し、キャリアハイを更新)最後に僕がフリースローを何本か決めて勝ったんです。あの試合はチームを勝たせることができたという感触があって、すごく自信になりました。
宮本 「俺がチームを勝たせてやったぜ!」みたいな満面の笑みでベンチに帰ってきた試合ですよね(笑)?
長谷川 いや、そんな顔はしてないですよ(笑)。
長谷川・宮本 ハハハハ。
長谷川 その試合の前にチーム練習で、ケビン・(ブラスウェル)ACが持ってきた『ゲータレードドリル』というのをやったんです。2人組でミッドレンジを5本、3ポイントを3本、 NBAラインの3ポイントを2本、もう1回3ポイントを打って、最後にフリースローを2本決めたら勝ち、というシューティングドリルなんですけど、その時は僕がチャンピオンになったんです。だから信州戦でフリースローを打つときもすごく自信がありましたね。
宮本 「俺なら決められるな」みたいな感じで、フリースローのラインに立ったんだ。
長谷川 そうですね。緊張とかもなく、「ゲータレードリーダーだから俺は決められる」って。
宮本 なるほど。
長谷川 もちろんチームを勝たせたいという気持ちもあって、「落ち着け」って思ったタイミングでそれを思い出して決めることができたので、あのゲームは自分の中でも心に残っているゲームの1つです。

「どうやったらチャンピオンシップにいけるのか」

宮本 今シーズンはチャンピオンシップ(以下、CS)に出場できる可能性が高い中で、僕は4月16日、17日のシーホース三河戦を秋田で取材させてもらいました。その試合は連敗でしたが、思い返すとそこを勝っていればもっと楽にCSに行けたし、終盤もなかなか勝てずにチームがどんどん苦しい状況になっていったときはどんな気持ちでしたか?
長谷川 4月の三河戦は「この試合は絶対に勝とう」という空気がありました。コルトン(・アイバーソン)選手がいない状況は正直厳しかったんですけど、みんながやれることをやりきったゲームではありました。ただ、その前後も含めて勝てないということにチームとしてすごく苦しみましたね。ポイントガードとして「自分が勝たせたい」という気持ちが強くなっていたし、プレーに対する自信も技術的にも自分が良くなっていく感じがありました。自分の調子はいいけど、勝てないという状況でしたね。
宮本 僕も試合を見ていて、「長谷川暢は調子がいいし、チームを勝たせる選手になりたい、でも勝てない」みたいな感じがあって、どんな気持ちだったのか気になっていました。
長谷川 似たような状況が中学とか高校、大学の時もあったんです。高校1、2年生の時とかは自分がよければそれでいいみたいな気持ちの時があって、プロになってからも最初の方はそういう気持ちがゼロではなかったのが正直なところです。でも、時間とともに「自分がよければそれでいい、じゃだめだよね」と各カテゴリーで感じていたし、僕もプロ3年目でもう若手ではないので、「調子がいいならチームを勝たせろよ」って自分の中でもがいていました。
宮本 なるほど。気持ちの部分でチームメイトとズレを感じることはありましたか?
長谷川 そうですね。チームとしてCSは行ったことのない場所で、僕はチームの雰囲気の中に「どうやったらCSにいけるのか」という感じはあった気がしています。結構チグハグというか、みんながCSだけをしっかりと見据えて進んでいたかというとそうではない雰囲気も感じたというか……。僕自身もその1人だったかもしれないと今は思うし、だからこそ今回CSへの行き方もわかって、そこに繋げるレギュラーシーズンの戦い方もチームとして見つかったんじゃないかなと思います。
宮本 これは個人的に聞きたくて、茨城ロボッツに負けた時点(22年4月27日)で「秋田は脱落したな」みたいな感じになったじゃないですか。その時のチームの雰囲気はどんな感じだったの?
長谷川 いやー、茨城戦のあとは…… 最悪でしたね、正直(笑)。
長谷川・宮本 ハハハハ。
長谷川 試合後、田口さんとか中山さんはロッカールームに残ってて、僕とか川嶋さんあたりはいい意味で次に切り替えるタイプなので、ストレッチをしながら「次でしょ!」って盛り上げようとしていました。古川さんとかも「やべー……」みたいな感じはあったように見えたし…… そういう感じでしたね。
 実はその試合の前に、顕蔵さんが「チームで話そう」とミーティングを開いたんです。普段はそういうことはあまりなくて、その後に選手だけでも「ここから先、自分にはどういうことができて、チームにどう貢献できるか」みたいな思いを各々が伝えたんです。そこで古川さんが「自信がない。プレーも調子が上がってきてないし、みんなに迷惑をかけているのもわかっている。だけど引っ張らないといけないと思っていて悩んでいる」みたいなことを言ったときに、「やばいな」と思って僕が手をあげて「古川さんのこの状況はほっといちゃダメだと思います。みんなでヘルプするべきだと思うし、みんなで古川さんを勝たせましょう」と伝えて、練習に入ったんです。でも結局茨城に負けてしまって、チームとしては「やってしまったな」という感じでしたね。
宮本 そこからどうやってカムバックしたんですか?
長谷川 目の前のゲームに集中しましたね。京都ハンナリーズ戦(22年4月30日、5月1日)はホームだったので、「まずは2つ勝とう」というような感じでした。
宮本 結果的に京都戦、三遠戦と4連勝してCSの出場権を勝ち取りました。三遠戦GAME2と同日の1時間後に始まった千葉ジェッツふなばし vs サンロッカーズ渋谷で千葉が勝利したことで、秋田のCS出場が確定しました。CS出場が決まった瞬間で印象的なことはありますか?
長谷川 僕としては最後の試合に勝った時点で、ここまできたらCSに行きたいなという気持ちでした。行くと行かないとでは、チームや自分はもちろん、クラブにとってもそして秋田という地域にとっても全然違うと思うんです。せっかくのチャンスだったので、千葉ジェッツを本気で応援しましたね。

長谷川・宮本 ハハハハ。
長谷川 行けると決まった時は本当に嬉しかったです。すんなり決められない力不足な部分もあったけど、やっててよかった、今シーズンはすごく頑張ったなという気持ちでした。

(2)以降につづく

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