見出し画像

『ダブドリ Vol.11』インタビュー03 長谷川暢(秋田ノーザンハピネッツ)

2021年4月30日刊行の『ダブドリ Vol.11』(株式会社ダブドリ)より、長谷川暢選手のインタビューの冒頭部分を無料公開いたします。聞き手は宮本將廣さんです。

高校バスケの名門能代工業の4番を背負い、歴史の1ページを創った少年が、再び秋田の地で新しい歴史の1ぺージを創ろうとしている。様々な想いを背負い、秋田とともに成長する長谷川暢に迫った。(取材日:1月20日)

自分の居場所を見つけるのに必死だった時期もありました。

宮本 特別指定での加入から3年目、プロとしては2年目で、今シーズンはすごく表情が変わったと感じるんだけど、率直にどうですか?
長谷川 ここ2年はもがきながらというか、自分を探しながらという感じでした。でも、今年は自分のやるべきことがはっきりと見つかって、自分の中ではすっきりしたというか。それとともにプレータイムも延びて、すごくいい形でプレーできていると思います。
宮本 今シーズンは2番メインでプレーをしていることも、どこか吹っ切れたきっかけなのかなと感じています。
長谷川 積極的に点数を取りにいけるポジションなので、空いたら狙うことを意識しています。それを顕蔵さん(前田HC)も求めてくれて、評価してくれていると思いますし、自分でも思い切りプレーすることができていると感じています。
大柴 中高大はずっと1番だったんですか?
長谷川 1番をやりつつも、点数を取らなければいけないチームだったので、2番でのプレーが多かったですね。
大柴 1番というポジションにこだわりはそもそもない?
長谷川 ないですね。
一同 (笑)。
大柴 撮影中に「リムまではいけるんで」と言っていて、すごいなと思ったんです。B1でリムまではいけると言える選手はそんなにいないだろうなと思いながら聞いていました。
長谷川 今シーズン、2番で試合に出てみて、アタックして縦に抜くこと、そこが通用するんだと感じました。
宮本 大浦颯太選手とか多田武史選手が入ってきたときに、自分が押し出されるかもしれないと感じたりはしました?
長谷川 彼らが特別指定で入ってきたときは、まずいかもなと思いました。2人は特徴もあってすごく上手なので、自分の居場所を見つけるのに必死だった時期もありました。練習をしていても、交代から入るばかりで、なかなかチーム内のスクリメージにも入っていけなくて……それがシーズン初めはすごく苦しかったし、何かしなければという思いが強かったです。
宮本 その中で、プレシーズンから、若手のグループでスタメンで出場しました。それはプレシーズンだからと思っていたんですけど、開幕戦もそのメンバーでスタメンだった時はどんな感じでした?
長谷川 顕蔵さんからもその時は練習だからみたいな感じで言われていたので、プレシーズンは若手に経験させてあげたいという感じでのスタメンだと僕自身も思っていました。でも、シーズンが始まる前に怪我人も出て、逆に自分達にはチャンスが回ってきたところもありました。昨シーズン、途中でシーズンが終わってから、今シーズンは降格もないし、若手をどんどん使っていきたいという話を顕蔵さんもよく言っていて、常に準備はしていたので、いい形で入れたのかなと思っています。

ディフェンスはちっちゃくて足の動く選手につかれるのが嫌だなと思われたい。

宮本 今シーズンについて聞いていきたいと思います。プレシーズンで秋田の仕上がりがすごく良かった。リーグ戦は開幕4連勝して、いっとき首位にも立って、迎えたホーム開幕の第3節琉球戦で、想像もしないような負け方をしてしまった。あの試合はどうでした? 自分たちにも期待があったと思うんですけど。
長谷川 そうですね。昨シーズンからメンバーがほぼ変わらない状況で、自分たちのやるべきこと、顕蔵さんが意図していることを理解している選手が多かったので、よりコミュニケーションを取って、理解を深めていくことができました。琉球戦は自分の中でも、チャレンジな部分があったんですけど、本当に勝ちたいという気持ちでした。その中で、彼らのような力のあるチームとやるとどうしても勝てないのかなというか、何て言うんですかね……「あ、強いな」と純粋に感じました。
大柴 琉球が秋田のディフェンスをすごくスカウティングしていた印象があったんですけど。
長谷川 (ジャック)クーリー選手をなかなか止められなくて、外国籍選手も変わってすぐのゲームだったのかな……。
宮本 (ドウェイン)エバンス選手にやられましたよね。
長谷川 そう。彼が本当にうまかったですね。自分たちがスカウティングできなかったのもあるかもしれないですけど、やられたという感じでした。
大柴 ボールプレッシャーを1回突破されると後手後手に回ってしまうようなシーンがあったと思うんですけど、その辺は秋田としてはどう考えているんですか?
長谷川 秋田は、自分たちのスタイルを貫こうというのがあって、相手がこうしてくるから、ここを変えるというのはないですね。だったら、一歩でも速い寄りだったり、フェイクだったりをしようと、そこの話をすごくされます。
宮本 なるほど。その敗戦は、メンタルが落ちるとかはなかった?
長谷川 その2ゲームに負けたことによって、チームとして士気が下がったとは感じなかったです。
宮本 その次が第4節北海道戦で、結果は大敗。僕は現地で観戦したんですけど、うまくチームがかみ合っていないように見えました。でも、そんな中で、スタートダッシュで長谷川選手が連続得点をして、何とかチームを前に持っていこうという気持ちを感じたんです。交代してから、あまりプレータイムがなかったんですけど、ベンチからどんなことを思っていましたか?
長谷川 北海道戦は、チームの中でもすごく印象に残っているゲームで、何をやってもうまくいかない試合でした。オフェンスもなかなか自分たちで組み立てられないし、ヘルプサイドが寄ればキックアウトでスリーポイントを打たれて、インサイドも上手にやられてしまう。本当に手の付けられないような状況で、「後半切り替えよう」と言ってもなかなか自分たちが思っていることは出せませんでした。
宮本 あと個人的に印象的だったのが第12節A東京戦。その試合からスタメンは外れちゃったんですが。
長谷川 A東京戦はすごくイレギュラーな形で中山(拓哉)さんがいなかったり、アレックス(デイビス)も当日、体調が悪くてコートに立てなかった。その試合で初めてスタメンから外れたんですけど、自分の中で気持ちの変化は全くなかったです。保岡(龍斗)さんのシュートが入っていたし、自分に求められているのはディフェンスだと。多田とか大浦と一緒に出る機会が多いので、絶対に僕がぶれちゃ駄目だと思っていました。前半の1本のテイクチャージとか、ディフェンスで我慢してチームを支える。そこですごく貢献できたなと感じて、素直にうれしかったですね。
宮本 あとは第9節千葉戦も印象的でしたね。最後にタップショットを外して……その時の表情も印象的だったし。あと3秒ぐらいあって……。
長谷川 伊藤さんがその前の第7節大阪戦でシュートを決めていたので、自信を持って打ったんだなと思いました。それが「エアボールだ、やばい」と思って、取りに行きました。そしたら、ボールが僕の手元にやってきて……正直、時間は全く分かっていなかったです。シュートを打たなければということしか頭にありませんでした。でも、そのシュートは全くいいシュートではなかった。色んな気持ちはあるんですけど、正直、富樫勇樹選手に勝ちたかったという気持ちが、後からじわじわ湧いてきました。
大柴 「富樫勇樹選手に勝ちたかった」の真意が聞きたいですね(笑)。
長谷川 彼が秋田から移籍した選手というのが強いのかなと思います。田口成浩選手もそうなんですけど、秋田に勝った時にすごくホッとした顔に見えたんです(笑)。僕が入った1年目にホームで千葉に2点差で負けたゲームがあったんですけど、その時も、すごく嬉しそうに見えました。
一同 (笑)。
長谷川 田口さんと喜びあうというか、「あぶない、あぶない」みたいな(笑)。
大柴 「セーフ!」みたいな(笑)。
長谷川 はい。それが頭の中によぎったと言うか……「勝ちてー」って思いました(笑)。
一同 (笑)。
大柴 なるほど。そういう意味だったんですね。
長谷川 トップを走る選手ですし、きっと2人からしても秋田は古巣なので、外へ出たものとしても負けたくないのかなと思いました。
大柴 彼らにとっても特別な想いがあるからこそ。
長谷川 そうですね。やっぱりチームとしても勝ちたかったです。そこに対してみんなが、すごく前向きな気持ちで戦っていましたね。伊藤さんも「あのシュートが入ってたらなー、決めてくれって祈ってたよー」って(笑)。
大柴・宮本 (笑)。
長谷川 だから僕もすごく責任が重かったわけではない。でも、それを決められないといけない。「いやー、回ってくるよね」と思いました(笑)。
宮本 今シーズンはマッチアップも興味深くて、広島のアイザイア・マーフィー選手とか身体能力もサイズもある選手をうまくディフェンスしていたのが印象的でした。
長谷川 ディフェンスに関して言えば、止めてやるという気持ちしかなくて。おそらくアイザイア・マーフィー選手にはほぼやられていないですよ(笑)!
宮本 うん。そう思う。
長谷川 だから、ディフェンスはすごく自信がつきましたね。
宮本 広島に全部勝っているのは長谷川暢のおかげだよって書いてもいいと思う(笑)。
長谷川 うれしいですね(笑)。ディフェンスはちっちゃくて足の動く選手につかれるのが嫌だなと思われたい。
宮本 見上げられる感じ?
長谷川 そうです。小さくて足の動く選手は絶対嫌だと思うので、そこを自分の中では大切にしています。
宮本 それこそ第11節広島戦は能代開催だったんだけど、やっぱり能代は特別な場所ですか?
長谷川 ずっとプレーした場所で、雰囲気も懐かしいし、すごくやりやすさはありました。僕にとっては本当に特別な場所ですね。

画像1

★ ★ ★ ★ ★

この後も、プロを目指す決断をした大学時代や秋田で戦うことを選んだ理由など、たっぷり語ってくださっています。長谷川選手自ら「面白い世代」だと語る同世代の選手、挙がる名前に納得です。続きは本書をご覧ください。

#バスケットボール #バスケ #Bリーグ #秋田ノーザンハピネッツ #長谷川暢 #能代工業 #必勝不敗 #早稲田大学 #宮本將廣 #ダブドリ  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?