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バスケ小僧、ベルテックス静岡 鍋田隆征 地元での挑戦

誰よりも努力し続けた男の選手契約は、何よりも嬉しいものであると同時に何よりも悔しいものになった。掴み取った選手契約、しかしコートに立つことはできなかった鍋田隆征。今回は地元での挑戦を選んだ彼のストーリーを辿る。(取材日:5月7日 インタビュー :宮本將廣 写真提供:ベルテックス静岡)

自分の武器はシュート

宮本 シーズンお疲れ様でした。
鍋田 ありがとうございます。
宮本 今シーズンは大学でのプレーを終えて、地元のベルテックス静岡でプレーをしました。契約までいろんなことがあったとちょこちょこ聞いています。僕としては国士舘大学の頃から取材させてもらっていて、鍋田選手が誰よりも努力できる選手だということは知っているし、それは今も変わっていない。今日は大学の頃の話もしながら、今シーズンを一緒に振り返っていきたいと思っています。まずはベルテックス静岡という地元のクラブに行くきっかけはなんだったんですか?
鍋田 きっかけは国士舘大学の小倉前監督(2023年3月から総監督に就任)が静岡出身でベルテックス静岡に話をしてくれました。そこから練習参加という形でスタートさせてもらいました。
宮本 小倉さんって静岡出身なんだ。聞いた話だと他にも練習に参加していた選手がいて、その中から誰か1人を取るかもしれないっていう感じだったとか。
鍋田 そうですね。僕は年明けぐらいに初めて練習に参加させてもらったんですけど、そのときすでに他の選手もいて、「この中から契約するかもしれない」って感じでした。
宮本 ある種の争いの中で、「自分のここをアピールしていこう」って考えると思うんだけど、シュートなのか、ハンドリングなのか、ゲームコントロールなのか。鍋田選手が強調していったところはどこだったんですか?
鍋田 シュートですね。やっぱり自分の武器はシュートだと思っています。もちろんハンドリングやゲームコントロールにも自信は持っていますけど、短期間の勝負だし、試合に出場できるわけではないのでそこを見せてもなって思ったんです。結果的に練習ではシュートをそこそこ決めることができたので、そこを評価してもらえたのかなって思っています。
宮本 いやー、さすがだね(笑)!
鍋田 いやいや、本当に入って良かったです(笑)。

宮本 そこから3月に選手契約を獲得しました。それはどんな感じで伝えられたんですか?
鍋田 2月ごろから本格的に練習に参加させてもらって、2、3週間ぐらいして「契約しましょう」と言ってもらいました。契約できると思ってなかったので、びっくりしましたね。
宮本 自分のマインド的には練習に参加するという立ち位置でシーズン終わりまで頑張っていこうっていう感じだった?
鍋田 正直に言うとそうでした。もちろん3月の契約期間までに契約を目指して頑張ろうとは思っていたし、チームからも「頑張ってね」と言ってもらっていました。ただ特別指定選手の枠は埋まっていたし、大学を卒業してすぐに選手契約っていうのはあんまりピンときてなかったので、本当にびっくりしました。
宮本 頑張っていたら、ちゃんと見てくれている人がいるんだよ(笑)!
鍋田・宮本 ハハハハハ。
宮本 そこからはロスター入りを目指す戦いになるわけで、4月に初めてロスター入りをしました。残念ながらコートに立つことはなかったけど、練習参加のように正式契約をしていない場合は、試合もベンチの後ろだったり、横から見ている。ロスター入りをして、ベンチやコートに立ったときの景色の違いとか、感覚の違いとかはありましたか?
鍋田 すごくありました。当たり前ですけど、ベンチに入っていなければ絶対に試合には出ないじゃないですか。だから試合のときは悔しさもありつつ、全力で応援するっていう感じでしたけど、ベンチに入ったら試合に出る可能性がある。ワクワクする感じだったり、緊張だったり、色んな気持ちがありました。試合に出ることはできなかったですけど、そこの感覚は全然違いましたね。
宮本 ワクワクと緊張はどっちが大きかった? 
鍋田 ワクワクですかね。もう恐れるものはないというか、何も成し遂げてないので試合に出たらとにかくシュートを打ってやろうって気持ちでいました。

やった分だけ自分が成長するのが楽しかった

宮本 今シーズン、静岡は最後の枠を獲得してプレーオフに出場しました。B2昇格初年度にプレーオフ出場というのはものすごいことだと思っているんだけど、それを選手として経験することができた。さっき言っていたみたいに、試合に出ることのない立ち位置でそれを経験するのと、選手という立場で経験するのは全然違うと思うんだけど、プレーオフ出場を決めたときやプレーオフを戦ったときはどうでしたか?
鍋田 プレーオフを決めたときはすごく嬉しかったですね。契約させてもらう前は遠征に帯同できなかったので、先輩たちと一緒に遠征に帯同させてもらって準備をしたり、コミュニケーションを取ったり。普段一緒にワークアウトしてくれた先輩が活躍したり、頑張っている人が活躍している姿を見て、同じ場所で戦えていることに対して単純に感動しました(笑)。
宮本 ハハハ。特にお世話になった先輩とかはいたの?
鍋田 いや、全員ですね。本当に全員なんですけど、誰かって言われたら大友隆太郎さんは毎日一緒にワークアウトしてくれて、色んなことを教えてくれました。練習前も、「一緒にシューティングしよう」って言ってくれたりとか。あとはアシスタントコーチの大石(慎之介)さんからはガードのイロハを教わりましたね。
宮本 それこそ大石さんもそうだし、岡田選手、市川選手。そこに鍋田選手も入るとより静岡味が増すというか。地元だからこその繋がりとか、静岡でプレーすることの楽しさとか責任みたいなものは感じたりしましたか?
鍋田 地元っていうのは本当にでかくて……そうですね。色々感じましたね。
宮本 それこそ市川選手が同じ高校で……あれ、同級生?
鍋田 そうです!
宮本 あ、タメか! プロで高校の同級生とプレーすることはなかなかないことだけど、彼とは何か話したりしたの?
鍋田 一番印象に残っているのは、自分が練習に参加してたときに、「一緒にやりたいからマジで頑張れよ」って言ってくれたことですね。
宮本 「お前もプレータイムを勝ち取るために頑張れよ」とか言い返したの(笑)?
鍋田 ハハハ。言ってないっすね! あいつ日本代表なんで(笑)!
宮本 確かに(笑)。
鍋田・宮本 ハハハハハ。
鍋田 でも、本当に感慨深いなって感じでした。

宮本 少し話が戻るけど、地元だと選手契約をしたときに反響があったり、連絡をもらったりとかはやっぱりすごかった?
鍋田 結構ありましたね。小学校の頃から遊んでた子のおばあちゃんから連絡来たりとか(笑)。
宮本 それはすごいな(笑)。
鍋田 めっちゃ久しぶりでした(笑)。あとは高校の先生もそうですし、中学のクラブチームのコーチからも連絡をもらいました。
宮本 地元ゆえのプレッシャーとか、それこそ選手契約するまではアウェイの試合には帯同しないって話していたけど、1人で練習したり試合を見たりしていた中で孤独を感じたりとかなかった?
鍋田 そういうことは感じなかったですね。それよりも本当に練習が楽しかったです。当たり前ですけど、毎日が大学よりもレベルは高いですし、トレーナーさんに教わったトレーニングをやると、自分が成長していることを感じました。「これをやろう。あれもやろう」って感じで、もっと練習しようって感じでしたね。
宮本 ただでさえ国士舘大学の体育館の鍵が閉まるまで練習していた男が、もっと練習しようと(笑)。
鍋田 ハハハ、そうっすね。あのときはノリみたいところもあったんで(笑)。でも静岡に来て、目的だったりゴールがはっきり見えるようなアドバイスをたくさんもらえて、「これをやったら、こういう動きができるな」とか。それをやったらやった分だけ自分の成長を感じることができたので、本当に毎日が楽しかったです。
宮本 そういう環境に身を置いて、「ここが伸びたな」って感じるところはどこですか? 大学時代からプルアップのショットとか、ハンドオフからのショットは確実に決められる選手で、リーグの中でも抜群に良かった。僕はそう感じていますけど、自分としてはどうですか?
鍋田 僕は右ドリブルからのプルアップが苦手だったんですよね。でも足の運び方とか、お尻、もも前の筋肉の使い方とかを学んだことで、しっかりとストップしてバランスよく打てるようになりました。大学のときは左のドリブルからっていうパターンが多かったんですけど。
宮本 あー、そうだね。右サイドは流れながら打つというか。
鍋田 そうですね。それがなくなってブレずに打てるようになりました。あとはステップバックとかステップサイドのシュートも安定感が上がったと思います。
宮本 いやー、楽しみだね! 個人的には成長した鍋田隆征をBリーグのコートで早く見たい! 今シーズンは残念ながらコートに立つことはできなかったけど、選手契約を勝ち取ることができて、ここからは来季の契約、そしてプロのコートに立つことが次のステップだと思います。どんなオフを過ごして、来シーズンに繋げていきたいですか?
鍋田 静岡の練習に合流させてもらって一番感じたのが、身体の強さでした。プロの舞台で戦うには今の身体では戦っていけないと感じたし、今シーズンの静岡はスイッチして外国籍選手にディフェンスすることもありました。そういうシチュエーションは今後もあると思うので、当たり負けしない身体と怪我をしない身体を作って、選手として成長できるベースを作っていきたいと思います。
宮本 ありがとうございました。俺はマジで通用すると思ってるから、頑張ってね!
鍋田 ありがとうございます!

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