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ダブドリVol.20 「あの日のあのね、」 ベルテックス静岡 岡田雄三選手特別インタビュー 前編

ダブドリVol.20の渡辺早織さんのコラム「あの日のあのね、」で、ダブドリ一行は静岡へ。今回は1月21日に行われたベルテックス静岡 vs バンビシャス奈良の試合を観戦させていただき、静岡出身の岡田雄三選手のお母様にお話を伺いました。今回はコラムと合わせて、岡田雄三選手にもインタビューを敢行。これまでの、そしてこれからのキャリアや地元である静岡への想いを伺いました。今回はその前編となります。(取材日:1月21日 文 = 宮本將廣、写真 = 菅野高文)

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「来年は絶対に結果を残して、プロクラブに行こう」

宮本 今、まさにお母さんがダブドリVol.20「あの日のあのね、」の取材を受けていただいているんですけど、今回は岡田選手にも単独でお話を伺っていきます。僕と岡田選手が会うのはやまもん(山本柊輔/熊本ヴォルターズ)が中心になって開催した静岡ドリームクリニック(2023年6月に開催)の取材以来ですね。今回、初めてベルテックス静岡のホームゲームを見させてもらったんですけど、想像以上に盛り上がっていて驚きました。地元に対する特別な思いがあると思うし、地元でプレーするというのはどういう気持ちなのかなってところを伺ってみたいと思っています。まずは地元のクラブを選んだ経緯を教えてもらえますか?
岡田 地元のベルテックスを選んだ経緯としては、高校まで静岡にいて、大学は大阪の近畿大学に行きました。そこからアイシンAWという企業に勤めながら、B3リーグでプレーしていたんですね。ありがたいことに当時からベルテックスには声をかけてもらっていたんです。アイシンAWは働きながらプレーをするという環境だったんですけど、だんだん「プロ選手としてやってみたい」と思うようになって、「せっかくチャレンジをするなら地元に戻ってやりたいな」っていう気持ちが強くなっていったことが1番ですね。同時に当時プレーしていたB3よりも上のカテゴリーでやりたいっていう気持ちもあって、その頃のベルテックスはB3で上位にはいるけど、なかなかB2には上がれないっていうシーズンが続いていたんです。そこに自分が加わってB2に上がる力になりたいなって考えたことも大きな要因でしたね。
宮本 いわゆるサラリーマン選手を辞めて、プロ選手になるという決断をした選手をダブドリでも何人か取材をしてきました。個人的にはすごくリスキーな選択だと思っていて、サラリーマン選手であれば、怪我をしてプレーができなくなっても、そのままその会社で働けるだろうし、ある種の安定があるというか。
岡田 そうですね。
宮本 それこそ親御さんから止められたとか、反対されたとかはなかったの?
岡田 親からはそんなになかったです。どちらかといえば会社の人に相談しました。そのときに多かった意見として、「やっぱり安定って大事じゃない?」って。でも1人でゆっくりと考えたときに、後悔したくないなって思ったんです。中学のときは一応県選抜に入ったんですけど、高校のときは県外にトライしてみたいと思いながらも、自分の実力じゃ厳しいと思って地元の沼津中央高校を選びました。大学も関東に行きたいとは思ったけど、自分の実力じゃ試合に出られないと思って、近畿大学を選びました。今思えば、近畿大学を選んだことは正解だったと思っていますけど、いつも2番目の選択肢を選んできたというか……。それこそアイシンAWを選んだのもバスケもできるし、安定も得られるっていうどちらかといえば一歩引いた感じの選択だったというか。
宮本 なるほどね。
岡田 はい。ただ、アイシンAWでリーグ優勝したこと、あとは天日さん(天日謙作/豊田合成スコーピオンズ)がヘッドコーチで来てくれたことが大きかったです。そこから自分は試合に出られなくなったんですよ。でも、プロフェッショナルというか……。「試合に勝つためにはこれが必要なんだ」っていう取り組み方を経験させてもらって、「プロでやってみたいな」と思いました。天日さんはアイシンAWで初めて外部から来たプロコーチだったみたいで、それまでは社員として選手をやっていた人がコーチになっていくというのがアイシンAWの流れだったんです。コーチが変わって環境も変わって、しかも試合に出られなかった。だからこそ、「来年は絶対に結果を残して、プロクラブに行こう」っていう気持ちが強くなりましたね。天日さんの次にヘッドコーチとして来てくれたのが、今はさいたまブロンコスでアシスタントコーチをしている廣瀬(慶介)さんだったんですけど、廣瀬さんは試合に使ってくれて結果を出すこともできた。本当はもう1年早くプロに挑戦したかったんですけど、コロナでリーグが中断したりしたことと会社員としても充実感は感じていたので、会社員を全うして選手としてもアイシンAWで結果を残してから挑戦しようっていう両方を達成できたあのタイミングでベルテックスに移籍を決めたって流れですね。

あの3年間がなかったらそういうことをやってなかったかもしれない。

宮本 会社員のときはどんな業務をしていたんですか?
岡田 僕は会社で保有している不動産関係の仕事をしていました。
宮本 1日の流れとしては朝から仕事をして、夜に練習?
岡田 そうですね。普通の会社員と一緒で、8時30分から17時30分まで働いていました。残業とかもあったので練習に5、6人しか来られないこともありましたね。遠征の次の日とかは6時過ぎに出社して、残った仕事をやったりとか。それを経験してからのプロ選手だったので、良かったなって感じることは多かったです。バスケットだけをやるって考えたら、もったいない3年間ととらえることもできるかもしれないけど、僕としてはあの3年間があったからこそ、時間の使い方を考えるようになったし、ベルテックスのフロントスタッフの皆さんがいろんな業務をしてくれるから、僕らはバスケットができているっていうことも理解しています。会社員をやったからこそ見え方が違うというか、大学からプロになった選手とはちょっと感じ方が違うんじゃないかなって思うときはありますね。だからこそ、オフコートでの活動も積極的にやらせてもらっているんですけど、あの3年間がなかったらそもそもそういうことをやってなかったかもしれないです。
宮本 地元を離れたり、仕事をしながらバスケットをしたことがいまに繋がっていることもあるっていうことですね。今日の試合はすごく盛り上がっていて、子供たちがたくさん来ていたことが印象的でした。前も話したかもしれないけど、静岡といえばサッカーっていうのが絶対的にあるけど、バスケットが盛り上がってきていることをすごく感じたし、高校バスケットも全国で好成績を残すようになってきました。ベルテックスもB2に上がって、静岡のバスケットボール熱が高まってきているというのはやっぱり感じている?
岡田 めちゃくちゃ感じてますね。このチームに来て3年目ですけど、単純にB2に上がったということもポジティブな要因としてあると思います。観客動員数も右肩上がりで、スポンサー収入もありがたいことに上がっている。静岡ってどちらかというと穏やかな人が多いイメージみたいなんですけど、いいプレーがあったら立ち上がって盛り上がったり、踊ったりする人もいて、年々会場を作ってくれるみなさんの熱量も上がっているなって感じています。B1だと地元出身で活躍している選手ってなかなかいないじゃないですか。レベルが上がればそういう選手が減ってしまうのかなって思ってたりしていたんですけど。
宮本 あー、確かにそうかもしれないね。個人的にはいろんな選手と話してきて、おそらく選手から初めて聞いた言葉だったんだけど、「スポンサー収入も上がってきた」という視点は、やっぱり自分が会社員として仕事をしてきたから、ちょっと興味があったりするの? 当たり前だけど、今のBリーグクラブの収入の柱としてはスポンサー収入、入場収入、グッズ収入とかがメインになる。そこの数字が気になったり、興味があったりする?
岡田 あー、どうだろう……。気になっているわけではないですけど、ぶっちゃけた話をすると、たとえばグッズの売り上げもクラブによって選手にインセンティブとして入ったり、入らなかったりっていう違いがあるじゃないですか。だからそんなに数字ばかりを追っているわけではないですけど、事実として僕らの収入に直結していることは間違ってないですよね。やらしい話かもしれないけど、その数字が伸びていくことが僕らの待遇だったり、クラブの環境整備にも繋がっていくわけじゃないですか。ベルテックスは5年目のクラブなので、まだまだ足りないところがあることは事実だと思います。その中で、僕は割とフロントスタッフとも密にコミュニケーションを取らせてもらって、今自分に何ができるかを考えたりはしますね。せっかく地元に戻ってきたから子供達に還元したいっていう気持ちは強いので、今シーズンはミニバスを回らせてもらったり。僕が行くことによってベルテックス静岡のことも知ってもらえるし、僕のことも知ってもらえる。今シーズンはそうやって会いにいった学校やミニバスの子供たちが会場まで見にきてくれることが増えたので、そうなれば自然と入場者数も増えるし、比例してグッズの売り上げも増えるだろうし。その子たちが楽しかったっていう気持ちで帰ってくれれば、学校の友達に声をかけて連れてきてくれるかもしれない。そういう繰り返しが静岡のバスケット人気に繋がっていくと思うので、選手という立場だからこそコート外でできることがあるとは考えています。特に地元出身の僕が率先してやっていけば、他の選手もいろんなチャレンジができると思います。クラブとしてまだまだ規模は小さいですけど、だからこそフロントスタッフとも密に連携が取れるし、選手の意見も汲み取ってくれるっていうのは強みだと思いますね。
宮本 なるほど。あとはサッカーが盛んだからこそ、応援する人にとってもスポーツが身近なのかなって感じました。
岡田 それはあると思いますね。静岡ってサッカー王国だけど、バスケ熱も高いと思ってるんですよ。ミニバスも盛んで決勝とかはテレビ中継もあるし、高校の決勝はいつも県の武道館がいっぱいになるんです。サッカーがあるからこそ、そこから来てくれるファン・ブースターもたくさんいるんですよね。スポーツを応援する文化が根付いているので、そのスピード感も速い気がしています。
宮本 サッカーからファンを奪うのではなくて、どう両立するというか。
岡田 そうそう。僕らも清水エスパルスの選手と一緒に何かをやったり、藤枝MYFCの選手が試合を見にきてくれたりすることがあるので、そういうところもうまく活用しながらベルテックス静岡を根付かせていきたいなって思いますね。

インタビューは後編に続きます。

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