見出し画像

【AKB総選挙】高順位でも仕事がない ‘‘恐怖のカラクリ‘‘ ー前編ー

AKB48をはじめとする48系グループの代名詞であり、毎年6月の風物詩といえば「AKB48選抜総選挙」である。

毎年、この時期になると、本当の選挙さながら、死ぬか生きるかという程、必死の形相をしたメンバーが懇願したり、煽ったり、媚びたりして自身への投票を募る様子や、必死に時間も金もつぎ込み、鬼気迫る様相で支援を行うファンの姿が報じられている。

また、選挙後は、メンバーが天下をとったように歓喜に湧いたり、涙を流したり、過呼吸になったり、崩れ落ちたりするシーンも印象深く、中には、敗戦の弁や謝罪を口にする例も見られる。

2018年度は海外グループをも巻き込んだ、「世界選抜総選挙」を行い、経過発表で昨年よりも大きく順位を落としそうな一部メンバーの大量投票をお願いする発言も話題となった。

AKBと言えば‘‘前田と大島‘‘程度の僕としては、特に興味も知識もなく、何の感慨もないのだが、本の執筆で必要となったため、調べることとなった。

とある古参ファンや、アイドルに詳しい方たちに話を伺ったころ、そこで見えてきたのは、

今の「総選挙」は‘‘本来のあり方‘‘ではないということ、
そして、
高順位を獲得しても、仕事に繋がらない【恐怖のカラクリ】であった。


■ そもそも「AKB選抜総選挙」とは何なのか?■


知っているようでそうで知らない人も多いだろう。

このイベントは、
「ファンが投票によってメンバーの人気順位を付ける」というイベントであり、上位の順位に入れれば「選抜メンバー」(後述)として、一定期間、活動できる権利が与えられる。

2009年からは毎年1回行われるビッグイベントのひとつとなっている。
2000年代後半、まだ一般的にはヒットしていなかったAKB48や他の48グループが世間に認知されるに至ったのは「同じアイドルグループのメンバーに公式的に順位を付ける」という斬新さが話題となったことが大きい。

高順位を獲得したり、開票会場のスピーチなどで、目立つことができれば、一夜にして、全国区の知名度を得ることも不可能ではないし、その後の活動にも大きな追い風となる。

一方で、投票権付きCDの廃棄問題や投票権目当てによる不公正なヒットチャートが生まれる問題、組織票疑惑など批判も多いことでも知られる。
多くのファンにとっても自分の‘推し‘の命運が決まるとあって非常に楽しみにし、かなり本気の姿勢で臨む行事でもあるということがよく知られている。

このように、「AKB選抜総選挙」は、メンバーの命運を分けるもの、敗北は許されないもの、ある種の非常な競争と殺伐とした雰囲気の中で行われるものという認識が世間一般に浸透している。


■ なぜ、「総選挙」が必要なのか?■


そもそも、このイベントが生まれたのは、AKB48が一般の多くの音楽グループと異なり、「選抜制」をとっていたこと
に起因している。

AKB48をはじめとする、48系グループは一般的なアイドルグループに比べ、非常に大所帯であるため、すべての仕事に全員が参加するのは現実的ではない。
そのため、仕事やイベントごとに選ばれたメンバーが参加するという「選抜制」というアイドルグループでは珍しいシステムを採用しているのだ。

特にシングルCD表題曲や、音楽番組、大手メディア出演の際などに選ばれる十数名は「選抜チーム」と呼ばれ、それは、精鋭が集うグループの代表チーム、花形であり、スポーツチームで言えばレギュラーメンバーにあたる存在と言える。

選別には人気や実力、将来性、話題性、楽曲のイメージ、グループのバランスなどを考慮して総合プロデューサーである秋元康が中心となって行うようで、さらにその中にもセンターや前列をはじめポジションよって序列が存在する。

これに選ばれなくても活動自体はできるが、活躍の場が大きく狭まり、特に世間一般に認知されるのは難しくなるため、自身の活躍や将来にまで大きく関わってくる。

「選抜入り」の有無はメンバーにとって非常に重要な問題なのである。

一般的にAKB48や、姉妹グループのSKE48、NMB48などと認知されるのは、この選抜メンバーであり、これに選ばれないということは‘控え‘のポジションに甘んじることであり、ファンからしても、``推し``のメンバーがプロデューサーなどに、どう扱われるかというのは非常に大切な部分である。

そのため、人選を行う総合プロデュ―サーの秋元康や幹部に対し、ファンから不満が噴出したり反感を買うことも往々にしてある。

例えば、
「なんで、あのメンバーを使わないんだ」「このポジションにはこの子の方が適任だ」などとファンは様々な立場から批判や不平を言うのである。

また、運営側としては人気や実力が同じくらいなら長く活躍する年齢の若いメンバーを起用したいのが本音であるし、グループの方向性やバランス、個々のキャラクター、事務所やスポンサーの事情や力関係など様々な思惑が交差し、選抜メンバーが選ばれるため、必ずしも実力や人気通りではないことも多い

そのため、本人たちやファンにとっては納得のいかない場合も多くあるのが実情だ。

さらに、スポーツチームや企業にも監督や経営者によって方針や好みがあるように、プロデューサーにも考え方や起用したいメンバーのタイプがあり、「○○は秋元康に気に入られている」「○○は干されている」というようなクレームもたくさん来るのだという。

実際、運や縁がなかったり、あの秋元康であっても見逃してしまった才能はあることだろう。

それらの不満や、問題点を解消するために生まれたものこそが、
「AKB48選抜総選挙」
なのだ。

総合プロデューサーの秋元康さんは、「自分が決めても、誰が決めてもこの種の不満は絶対に出てくるだろう」、それならば、いっそ様々な意見のある【ファン自身に、「選抜メンバー」を選んでもらおう】と考えたのだ。

人気投票という数字に現れれば誰も文句は言えないし、不本意でも認めざるを得ない
また、グループに緊張感をもたせ、個々の自覚と成長を促したり、意外なメンバーの活躍や別の観点から新たな才能を発掘できるという狙いもあったようだ。

いずれにせよ、芸能に限らず、企業や団体、グループや組織というのは、必ずしも個々の人間の現在の実力がそのまま評価されて、然るべきポジションやポストに着けるとは限らない。

そういった不満を解消するのが総選挙イベントであり、グループの戦略や事情を‘‘土返し‘‘したファン感謝イベント、いわば、【お祭り】なのだ。

プロ野球で言えば、ファンが参加選手を選ぶ「オールスターゲーム」のようなものだと言え、あくまで、それは普段の活動から切り離したイベントであったのだ。

事実、「AKB選抜総選挙」も、順位がポジションに反映されるのは1曲のみであり、期間限定の権利なのである。
これは、黎明期からビッググループとなった現在に至るまで一貫している。

総選挙で選ばれ、それに関連する2ヶ月程度の活動期間が終われば、それで終わりなのだ。
仮に、その期間の中で、結果を残したとしても、次のシングルや、今後の大きな仕事の選抜に選ばれるか、仮に選ばれても目立つ良いポジションを貰えるかどうか、ということとは別の話
なのだ。

先に述べたように、グループには中長期的な戦略や方向性、バランス、イメージがあり、様々な裏事情も絡んでくる。
本人の素養やタイプ、性格、素行なども大きく関わってくるだろう。

まして、ファンの言う通りに単に人気順にメンバーを並べれば良いというものではない。
だからこそ、「総選挙」の順位が反映されるのは、1曲とそのプロモーション時期に限定されているのだ。


■ 総選挙はあくまで‘‘祭‘‘  悲劇の『佐藤亜美菜』■


このことが、良くわかる実例がある.

2009年に行われた第1回総選挙の結果を見て欲しい。

上位にランクインしているメンバーの多くは、前田敦子、大島優子、小嶋陽菜、高橋みなみ、渡辺麻友、篠田麻里子など、当時の主力メンバーであり、AKB48の大ブレイク後も選抜メンバーとして長きに渡って活躍し、後に、全国区のビッグネームとなった人たちであることが分かるだろう。

注目して欲しいのは8位にランクインしている『佐藤亜美菜』である。
後の大物たちと肩を並べた彼女はこの年から3年連続で総選挙ランキングによる選抜チームに選ばれながら、秋元康など運営側がメンバー選抜を行う通常のシングルCD選抜メンバーには、グループを卒業した2014年まで一度も選ばれることなく終わった。

古参のファンには知られた存在のようだが、失礼ながら、一般的には無名に近い。

調べてみたところ、メンタルや、素行にやや不安定なところがあったメンバーでもあったようだが、ルックスも良く、順位通りに扱えば、今頃は、ビッグネームになっていた可能性もあっただろう。
彼女の場合は、非常に極端な例だが、このようなことは決して珍しくはないのだ。

総選挙の上位メンバーの多くは、通常の選抜常連メンバーが占めている。 しかし、その多くは、すでに一般的に著名になっており、コアなファン以外の一般層からも支持を得ている。
また、大手事務所やスポンサーなどのバックアップがあったり、普段から秋元康や運営側に推されているメンバーなのだ。

そのため、こういった人々を抜いて考えると、普段は推されず、総選挙で頭角を現したメンバーはファンの支持率という面では事実上のトップ層と言える。                                単に、ファンからの人気順に並べるのでれば、「総選挙イベント」以降も、しばらくは選抜に残れるはずであるということになる。

しかし、実際にはこのようにファンの支持を受け、高順位を獲得し、さらには、その活動の中で結果を残したとしても、この期間が終わればまるで何もなかったかのように、そこで終わる例は少なくない

次回のシングルや、以降の大きな仕事の選抜メンバーに選ばれないことなどはよくある話なのだ

大所帯を抱え、メンバーの卒業と加入を繰り返し、中長期的なビジョンを描かなければならない48系のグループというのは、メンバーを人気順に並べれば良いというような、そんな単純なものではないのだ。

このように、本来、
「AKB選抜総選挙」というイベントは一種の【遊び・お祭り】であり、【仲間内のイベント大会】のようなものに過ぎなかった
あくまで、【通常の戦略的な活動とは切り離されたもの】であったのだ。

あくまで、コアなファンによる、‘‘身内の大会‘‘に過ぎなかったのである


■ ブレイクによって‘‘変わってしまった‘‘「総選挙」■


しかし、グループが大ブレイクし、注目度が増していく中で、この総選挙イベントの、表面的なインパクトのみが取り上げられることが、爆発的に増加してしまった。

その結果、「総選挙」のあり方が、間違って世間に広まってしまった

メディアでのメンバー紹介などにおいても、総選挙の順位に言及されることが多くなり、総選挙順位はあたかも個々のメンバーの価値や、絶対的な評価のように誤って認識されてしまった

さらに、「AKB選抜総選挙」は、純粋なファンイベントを超え、各プロダクションや広告代理店、メディア、企業やスポンサーなどを巻き込み次第に巨大化、事業化し、複雑化していったのだ。

総選挙イベントの順位というのは、あくまで、身内の遊びとしての、ファンによる日常の活動での評価の結果であり、アイドルタレントとしての人気や、実力を図るものではない

むしろ、普段、日の目を見ないメンバーを目立たせてやろうという趣すらある。

しかし、それが、年に一度の【査定】という認識が広がり、なりふり構わず順位をとることそのものが、目的と化してしまった

その結果、
本来は【身内のお祭り】であり、〈能力や人気、商品価値を計るものでは、なかったイベント〉にも関わらず、
アイドルタレントとしての1年間の【総決算・公開成績発表会】のような意味合いが非常に強くなってしまった。

そのため、
メンバーがアイドルとは思えないような鬼気迫る姿勢でこのイベントに臨んだり、壇上で、メンバーが涙を流したり、悔しそうな顔したり、時に過呼吸気味になることや、崩れ落ちるようなシーンがイメージされるものとなり、時には罪を犯したかのような敗戦の弁を述べるメンバーすらも見られるようになったのだ。

近年は立候補制が導入されたものの、本当の選挙さながら命運を懸けた勝負、緊張感と歓喜と失望が交錯するという純粋に活動を楽しめないもの、鬼気迫るものとしての面が強くなってしまった。

さらに、巨額の金と様々な利権や思惑が交差する巨大ビジネスとなってしまったため、グループ内の評価に終わらず、この順位によって、芸能人としての世間的な評価やイメージ、自身の行く末にまで大きく影響するようになってしまったのだ。


しかし、問題はこれでは終わらない。

さらに、この後にも、

AKB48をはじめとする、48グループの存続や、メンバーの行く末に関わる、

【恐怖のカラクリ】がそこにはあるのだ。


ー 後編に続くー

____________________________

▼Amazonキンドルにて、電子書籍を出版しています。▼
無料試し読み、読み放題もあり、スマートフォンでも読めますので、
この記事で興味をもって頂いた方は、ぜひ、お手に取って下さい。







「俺は、誰にも媚びません。」 が いつも、お腹を空かせています。 【俺が「世界大統領」になったら、サポートをくれた方・購入してくれた方は、絶対に幹部に登用】します。 まず、ここまで読んでくれてありがとうございます。 よろしくお願いします。