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すこやか短編集

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裸正門

 ある日の暮れ方の事、一人の男子学生が大学正門の下で雨が止むのを待っていた。
 門の下に人は少ない。彼の他には誰かと待ち合わせをしていると思しき男子学生が一人と、先刻から彼同様に何をするでもなく雨を眺めている女子学生が一人いるのみである。人通りが少ないわけではないが、その多くは傘を差しており、門の下の彼らには目もくれずその前を横切って行く。もう何人の学生を見送ったかわからない。
 作者は初め「男子

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新釈・藤原広嗣の乱

 西暦七四〇年十一月一日、肥前国唐津某所にて、藤原広嗣とその弟綱手は目の前に置かれた扇風機の残骸をじっと睨み付けていた。

 寒風が吹きすさぶ中、手足は縄で縛られ、立ち上がることもままならない。あと小一時間もすれば二人はこの目の前の扇風機と同じ姿となる。もはや避けられない死を目の前にして、広嗣は妙に落ち着いていた。空を仰ぐと、あの忌々しき機械に似た直方体の雲が浮かんでいるのが見えた。

 その雲を

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布団

 寒い寒い冬の夜。あの頃は自分の部屋に暖房器具など無かったので、私はよく小さく丸まって布団の中に潜り込んだ。それだけで十分だった。始めこそ冷たいが、数分潜り続ければ布団の中はすぐに温まった。誰にも邪魔されない、誰もいない自分だけの空間。それはまるで秘密基地のようでもあり、また母親の胎内のようでもあり、なんとも不思議な心地好さと安心感があった。

 幼き頃の私は布団の中の心地好さを求め、昼夜を問わず

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