ポケットサイズの応援団③

高校2年生のとき、全国高校サッカー選手権に出場した。といっても、僕はベンチにも入れずスタンドで応援をしていた。川口能活が率いる清水商業に敗れたものの、初出場でベスト8というのは快挙だったと思う。監督がインタビューで、無欲の勝利と言っていたことをなぜかすごく覚えている。

とはいえ自由行動も楽しかった。古着好きが多かった僕らは、ジャージ姿でアメ横へ行き、デッドストックのスニーカーやらビンテージの服を眺めては「ぶちええ!」と連呼していた。

チーマーに「お前ら何の集団?」と絡まれたこともすごく覚えている。

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その翌年。3年になってもベンチ入りはできなかった。僕らの代は県予選決勝で敗れた。万年Bチームだった僕も、帰りのバスでは泣いていた。下手くそなりにサッカーが好きだったのだ。

部活が終わる。もう朝練に行かなくてもよくなる。明日から何をしたらええんじゃろう?そんな気持ちになったことを今でも覚えている。

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高校を卒業してからもよく集まった。いつもどおり、しょうもない奴らだった。結婚式でも、同窓会でも、葬式でも。会うたびに、自分たちのつまらなさを誇示し合った。

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どうやらサッカー中止を嘆くレベルより、事態は深刻だ。そこで用意していたテキスト(ズルしてごめーんね)をリライトしながら、ちょっと空気を入れ替えようと思う。

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外出できない春に、僕の心を部室に逃がした。コースターを眺めながら、青くさい思い出を、少し酒くさくしてやろう。そしたらカミさんが窓を開けて換気してくれると思うし。〈完〉







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部活の思い出

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