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お爺ちゃんは知らなかっただけ、

小学生の時の話。

夏休みになり、その日は家族でプールに出かける日だった。

小学生の時のプールは本当に楽しみで仕方なかった。

家族で出かけるので、その間にバルサンを焚いてから出かけた。

これで帰ってきたら害虫駆除も出来て一石二鳥。

プールに到着して楽しく遊んでいると、母親の携帯に一本の電話が、

出るなり母親の顔が曇りだす。

えっ?何があったんだ?

そして母親が電話を切り


「今家の前に消防車来てるって」 


なんだって⁈大変な事になった


まさか家が火事になるなんて... 


しかし母がその後頭を傾げながら

「でも家は燃えてないって」

ん?どういう事?


....なぞなぞ?


消防車は来てるけど燃えてない。

なぜそんな摩訶不思議な状態になっているのか?

それまでの経緯を母が詳しい内容を話した。


まず我が家は二世帯住宅。


我々が2階に住んでおり、1階に父方のお爺ちゃんとお婆ちゃんが住んでいる。

なのでゲリラ的にお爺ちゃんが我々の顔を見に2階に上がってくることがある。

その日もお爺ちゃんは我々が出かけてることを知らずにいつも通り2階に向かおうとしてた。

2階に上がるための扉を開けたら

そこからは煙が入ってきた。

そう。それは出かける前に焚いたバルサンの煙。

そのバルサンの煙がお爺ちゃんを覆い被さるように流れてくる。



その時お爺ちゃんは知らなかった。



我々が出かけてること。


バルサンを焚いていること。



そのことを知らないお爺ちゃんがたどり着いた結論。


それは



「火事じゃ‼︎」


お爺ちゃんは大切な息子とその家族。この家を守るために一目散に119に電話した。


そしてすぐに消防車が到着。


息子よ。孫よ。


頼む。生きててくれ。


お爺ちゃんの願いはそれだけだったはず。


ただ


隊員が見つけたのは


バルサンと書かれた赤い筒だった。


その時お爺ちゃんは思考停止したはず、


「今どういう状況なんじゃ...」


お爺ちゃんごめんね。


お爺ちゃんに何も言わず出かけて


見たこともない煙を発する赤い筒の存在を教えなくて


お爺ちゃんは知らなかっただけ


その後、家族で出かける時やお爺ちゃんのしらない未知の道具の使用の時は必ずお爺ちゃんに教えるルールが出来たのは言うまででもなかった。

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