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【Jリーグの経営査定】2017年のJリーグ事業戦略を分析

Jリーグの平成30年度の事業計画が発表されました。

■この記事の4行まとめ
・リーグのPL分析。2017年度からの変化
・Jリーグの事業内容とは。クラブチームとの役割分担
・Jリーグの2017年経営成績を大胆に査定する。最低点は2点
・2018年のJリーグの事業戦略を解説/分析する

リーグのPL分析をしてみる

単年度のPLを見ても推移がわからないため収支を年度別に見てみましょう。

事業活動収入と事業活動支出に明らかな偏差が見受けられます。2016年度から2017年度に進むにつれて、2倍近くの収入と支出が見受けられます。図にするとこんな感じです。

明らかにある科目が伸びていることがわかります。あえて今更説明は不要ですが、パフォームグループからの放映権料収入の増加により、事業活動収益が今までの2倍近くになっています。詳しくは、こちらを参照。

続いて、支出面の図は以下のとおりです。

Jリーグに加盟するクラブへの分配金への支出が多くなっています。クラブへの定額分配金とともに、優勝クラブへの配分金を増加させ、強いクラブにはより多くの財務メリットを提示できるようになりました。ゆえに各クラブは自チームを強くするための育成費用や外国人選手などの獲得費用に投資するインセンティブが生まれ、リーグとしてより魅力的な試合を提供できるのが狙いです。

Jリーグの事業内容とは?

そもそもJリーグの事業内容とはどのようなものなのでしょうか。鹿島アントラーズやガンバ大阪などのクラブチームの事業内容はわかりやすいものですが、Jリーグというリーグはどのようなことに日々取り組んでいるのでしょうか。

Jリーグの運営主体は「公益社団法人日本プロサッカーリーグ」であり、常勤の職員は55名(2018年1月時点)で運営されています。その事業内容は主に、①公益目的事業と②収益等事業に分かれています。

公益目的事業→リーグ全体の発展

公益目的事業とは、要するにリーグ全体の発展に寄与するものをいい、各クラブチームが投資しきれないサッカービジネス自体に寄与する性質の事業をしています。具体的には、以下の事業です。

・プロサッカーの試合の主催
・公式記録の作成・管理及び運用、公式試合・公式行事の記録や映像・静
 止画像の作成・収録・保管・管理及び販売ならびに選手肖像権等の管
 理。
・プロサッカーに関する諸規約の制定
・プロサッカーの選手、監督および審判等の養成、資格認定および登録
・プロサッカーの試合の施設の検定及び用具の認定
・放送等を通じたプロサッカーの試合の広報普及
・サッカー及びサッカー技術の調査、研究及び指導
・プロサッカー選手、監督及び関係者の福利厚生事業の実施
・サッカーに関する国際的な交流及び事業の実施
・サッカーをはじめとするスポーツの振興及び援助
・機関誌の発行等を通じたプロサッカーに関する広報普及
・サッカーをはじめとするスポーツの経営人材の養成及び活用
・その他目的を達成するために必要な事業(プロサッカーに関するパート
 ナー・スポンサー及びサプライヤーとのリレーションシップ構築など)

長々と書きましたが、試合を主催したり、記録や権利を管理したり、ルールを制定したりする運営主体として統治する役割や、広報や福利厚生、経営人材の養成など、サッカービジネスに関わる人がより利便を感じられる役割を担っています。これはなかなか各クラブが投資できない領域で、統治機構であるリーグを司る協会でしかできない公益事業です。

収益等事業→サッカーの権利の商品化ビジネスと表彰

収益等事業には主に2つの事業に細分化されます。

1つは収益事業として、「プロサッカーに関する商標等の登録、管理及びそれらを使用した商品の制作販売」があります。要するに、ライセンス事業です。

もうひとつは、「シーズン終了後、J. LEAGUE AWARDS を開催し、リーグ戦成績及びリーグカップ戦成績に対する表彰を行う」という表彰事業です。

Jリーグの経営ロードマップを分析とその評価

村井チェアマンが就任に伴い、未来へのロードマップがはっきり示されました。リクルートでの人事経験から子会社の経営者となり、外部からの経営者としてチェアマンとなった経験もあり、サッカーリーグ経営に非常に成功しています。筆者からみても、村井チェアマンが就任したことで、Jリーグが明らかに成功への道を歩みだしたと評価できます。

ロードマップとして以下の5つが示されています。

①スタジアムを核とした地域創生
②デジタル技術の活用(露出アップ含む)
③国際戦略
④経営人材の育成
⑤魅力的なサッカー(育成を含む)

まず明確に戦略を描いたことは評価されるでしょう。トップマネジメントとして全てを実行することは難しいことは当然ですので、経営者としてまず大枠の方向性を示すことで3割の仕事は終了したといってもいいです。この5つの経営戦略について一つ一つ筆者から成績表をつけていきたいと思います。

①スタジアムを核とした地域創生への評価

まずリーグとしてのスタジアム統制は明確な基準を示しています。日本サッカー協会が「スタジアム標準 サッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドライン」を示しており、Jリーグクラブライセンス制度の一環としてJ1/J2/J3に昇格する基準の一つとしてホームスタジアムの基準を設けています。

いかに素晴らしい経営成績を有していても、それを支持するサポーターが満足いくスタジアム観戦ができなければリーグ全体の満足度は向上しないからです。例えば、雨の日でも観戦できる屋根の設置基準や、生理現象を担保できるようにトイレの設置基準、また震災/火事に対応できる安全性基準などがあげられます。

臨場感あふれる中継ができるようにカメラの設置基準なども細かく定められています。

(引用:「サッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドライン」)

中でも、スタジアムの問題は地方創生と大きな意味を有しています。スタジアムは多額の資金を要することになる一方(場合によりますが、数十億〜数百億円の建設投資が必要)、クラブと密接に連携することにより多くの入場者や観光者を呼び込むことができます。

スタジアム建設はどのクラブチームも改善を検討しているものの、地方公共団体や地域住民との長期にわたる交渉が必要であり、地方創生の一環として地域住民の意向を反映する必要があります。大きなインフラ投資であり、難航しているクラブチームも多くあります。

ガンバ大阪の吹田サッカースタジアムのように、民間団体で全ての資金を用意し運営主体も民間団体となるような新しいスキームも日本で行われ、優れた立地条件は大阪府が用意するようなモデルも誕生し、新しいスタジアムビジネスがJリーグでも誕生しつつあります。

一方で、未だ東京23区内を本拠地とするサッカーチームが存在しないなど、構造的な問題を抱えつつあります。世界有数の都市である東京(23区内)を本拠地とするクラブチームの創出を早期に測る必要があります。その意味でFC東京には大きな期待を有しています。

その意味で、現在は5点満点中3.5点程度と評価できます。

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有料版をご購入いただくと、以下のコンテンツをご覧いただけます。

・Jリーグの事業戦略への評価
 ②デジタル技術の活用(露出アップ含む)の採点
 ③国際戦略の採点
 ④経営人材の育成の採点
 ⑤魅力的なサッカー(育成を含む)の採点

・2018年の事業戦略を占う
・J リーグで素晴らしいサッカーがプレーされる」ための具体的検討項目
 ① 指導者、選手育成(ユース以下)
 ② 審判レベルの向上/ テクノロジー・追加副審)
 ③ U-23 世代の強化策
 ④ JPFA(選手会)への支援
 ⑤ 国内外でのプレシーズンマッチ
 ⑥ クラブへの配分金増額による経営基盤の強化

・「J リーグの素晴らしさが多くの人に伝わっている」ための検討項目
 ① 中継映像制作(契約により投資確定)
 ② スタジアム・環境整備(スマートスタジアム)
 ③ デジタルマーケティング投資
 ④ サッカーファン層拡大施策
 ⑤ 海外放映権拡販
 ⑥ ホームタウン活動、社会課題解決支援

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